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わたしは黄泉の光に魅せられる  作者: 雪鳴月彦
動画越しの執念
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動画越しの執念 39

 陸橋のちょうど中央付近へ視線を定めれば、欄干から顔を乗り出した裕子が笑いながらこちらへ手を振っている姿が映り込む。


 わたしも軽く手を上げて応じると、裕子はすぐに顔を引っ込めパタパタと階段を下りて近づいてきた。


 こんな所で何してるの?


 そんな言葉でもかけようかと考えながら親友を待っていた私の視界に、裕子の後を遅れてついてくる見知らぬ男子の姿が映り込んだ。


 違う学校の制服を着ているし、一瞬ただの通行人かと思いかけたが、その男子はわたしの前で立ち止まった裕子に(なら)うようにして足を止め、遠慮がちにこちらを観察するような眼差しを向けてくる。


「や。こんなとこで出会うなんて奇遇だねぇ。てか、珍しくない? ヒナが学校帰りに出歩いてるなんて」


「ん、まぁちょっと、今日からバイトを始めたから。今はその帰りだよ。それより、そっちの人は?」


 雰囲気からして、確実に裕子の知り合いだ。


 これでもし「え? 知らない人」とでも言われたら、普通に恐い展開になってしまう。


「ん? ああ、えへへぇ……。そっか、ヒナには言ってなかったもんねぇ」


 横に並ぶようにして立った男子――イケメンと呼べるタイプではないけれど、一見しただけで優しそうなイメージが伝わってくる――へ、普段わたしに向けるのとは明らかに違う笑みを見せてから、裕子はにっこり笑いともったいぶるような口調でその男子を紹介してきた。


「こちら、大石(おおいし)(しょう)くん。木ノ頭(きのがしら)高校二年、野球部の補欠にして、何と! 私の彼氏くんです!」


「……え?」


 嬉々とした表情で男子の方へ両手を広げながら紹介をしてくる親友へ、わたしはポカンとなりながら間の抜けた声を漏らしてしまった。


「裕子、補欠のくだりは余計だろ。恥ずかしいから言わないでよ」


 紹介された男子――大石くんは、ばつが悪そうに苦笑しながら改めてわたしへ顔を向けると、小さく頭を下げてきた。


「はじめまして。陽奈乃さん、で良いんだよね? 裕子からはよく話を聞かされてるよ」


「わたしのことを? え、ごめんなさい、ちょっと待って。わたしは何も聞かされてない。そもそも裕子、彼氏なんていたの? 寝耳に水だよ」


 困惑する思考を落ち着かせようと鼻で大きく呼吸をしながら、嬉しさを丸出しにしている親友の顔を凝視する。

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