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わたしは黄泉の光に魅せられる  作者: 雪鳴月彦
動画越しの執念
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動画越しの執念 38

 逡巡もなくわたしが頷くと、水沢さんは沙彩さんとアイコンタクトを交わしてから、渋々といった風に了承の意を示してきた。


「わかった。それじゃあ、お願いしようか。ただし、無理はしないでくれよ。徹夜で作業したり、学校にまで仕事を持ち込むのだけは絶対に禁止だ。仕事として扱っている情報を他人に見られるリスクは、優先的に避けなくちゃいけないし、依頼の内容とかを第三者へ漏らす行為も禁止だからね」


「もちろんです」


 契約書へサインをする際に読まされた様々な約束事を、頭の中で再読しながら、わたしは真面目な顔でしっかりと頷いてみせた。


「よし、それじゃ、一応ここまでで今日の作業は終了だ。またおかしな空間へ迷い込まないよう、気をつけて帰るように」


「……割と本気で不安になるような言葉をかけないでくださいよ。大体、今はよしふみが一緒にいるんですよね? もうあそこへ入り込む理由がないじゃないですか」


荷物をまとめて鞄へしまい、わたしは立ち上がりつつ冗談とわかる口調で言葉を返す。


「わからないぞ。無関係な存在であっても、霊と波長が合ってしまったばかりに引き付けられてしまうケースは、国内だけでも年に数件は観測されてる。特に、今ぐらいの時間帯と深夜帯――黄昏時と丑三つ時には注意しないと」


「えぇ……」


 事務所の入口へ数歩だけ進んだところで不吉ことを告げられ、わたしは露骨に眉を顰めて水沢さんを振り返る。


「こら、煌輝。帰り際に、そういう嫌な気分にさせるようなこと言わないの。小学生じゃないんだから」


「そんなつもりはない。事実を教えているだけだ。こういう業界に関わる以上、知っておいて損はないし、少しくらいは興味を持つ必要だってあるわけだからな」


 沙彩さんに咎められても悪びれた気配すら窺わせず、気楽に肩を竦める水沢さんを眺めてから、


「……じゃあ、今日はこれで帰ります。お疲れ様でした」


 わたしはため息と共にそれだけを告げ、「また明日ねー」と笑顔で手を振ってくる沙彩さんに見送られながら静寂堂を後にした。




         ‡‡‡


 路地裏から大通りへ出て、そのまま暫く歩いていると、すぐ側にあった陸橋の上から、聞き慣れた声がわたしの名前を呼ぶのを聞いて、反射的に顔を上げつつ立ち止まった。

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