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わたしは黄泉の光に魅せられる  作者: 雪鳴月彦
動画越しの執念
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動画越しの執念 34

 低い、女の声。年齢は若いと思う。少なくとも、老齢の女性や声変わり前の男の子といったタイプの声質ではないと断言できる。


「……お前だけは許さない、か」


 スマホの画面にちょんと触れ、動画を停止させた水沢さんは、顎を擦る仕草をしながらソファへともたれかかった。


「ここまで色々なことが頻発していると、さすがに気持ちが悪いわね。私が当事者だったら、とっくにノイローゼになってそうだわ」


眉宇を寄せ、口元を歪めながら沙彩さんは言うと、悪寒でも走ったかのように両腕を擦る。


「ノイローゼ、か。そうだな。この件の犯人は、美山さんに対して正にそういうのを狙っているのかもしれない」


「え?」


 スマホを見つめたままポツリとこぼされた水沢さんの呟きに、わたしと沙彩さんは同時に反応した。


「そういうのを狙ってるって、誰かが美山さんを精神的に追い詰めようと企んでいるってこと?」


「これだけ執拗に嫌がらせをしているんだ。それ以外の理由なんて思いつかない。ただ困らせてやろうとかこの活動から身を引かせたい、という話なら救いもあるかもしれないが、こいつは美山さんが自殺してくれることを望んでいる可能性すら感じ取れるくらい、悪意が強い」


 問いかける沙彩さんへ頷いて、水沢さんはわたしのスマホを指差す。


「どういった理由かはまだわからないし、正体も不明だけど。美山アカリさんに恨みや敵意を抱いている何者かがいることは、間違いなさそうだ。動画に入り込んでいる霊的な声は全て、同じ人物の声。恐らくだけど、コメントで誹謗中傷をしている奴の中に、動画内で聞こえてる声の主が紛れてるんじゃないかなと俺は思う」


「同一人物? ……え? ちょっと待ってくださいよ。それじゃあ、幽霊がネットにコメントを打ち込んでいるってことですか? 幽霊って、ネットやるんです?」


 サイトの運営会社とか関係者の場合はどうかわからないけれど、何かしらコメントをするには絶対にその操作をするデバイスが必要だ。


 パソコンやスマホを使用することが一般的で大前提だし、使用すればその履歴はサーバーに残る。

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