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わたしは黄泉の光に魅せられる  作者: 雪鳴月彦
動画越しの執念
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動画越しの執念 29

 もしもわたしが九十歳くらいまで生きちゃったら、よしふみはこの先七十年は霊体のまま。


「……いや、それで良いの?」


 ほんの刹那、そこまでわたしに寄り添ってくれるのかとほっこりしかけたが、さすがによしふみ頑張り過ぎでしょと我に返り、つい小声で自分の胸元へ話しかけてしまった。


「守護霊は基本、憑いてる本人と一蓮托生と言うか、一心同体の魂で繋がるパートナーだ。あまり深く考えず、気長に付き合っていくといい。ああ、そうそう。余談だけど、よしふみくんがいたあの空地が、何年も手つかずになっていたのはね、彼がずっときみとの思い出の土地を守っていたからなんだよ。それくらい、きみを大切に想っているんだ。さて……長話はこれくらいにして、そろそろ仕事の方を始めようか。瓜時くんも、ここの従業員になったからには、払う給料分の働きをしてもらうからね」


「は、はい! それはもちろんです! よろしくお願いします!」


 よしふみについてまだ考え込むわたしの気持ちを切り替えさせようとするかのように、水沢さんは話題をここに来た本来の目的である仕事の方へとシフトさせてきた。


 不思議なことに、仕事を始めようと言われた途端、頭の中がクリアになり胸の奥からモチベーションが上がりだし、心身ともに高揚感がみなぎってくる。


「お仕事ってことは、昨日のアカリさんの件に関することですか?」


 バーチャル・フェイヴ・アイドルの蒼雷メリルこと、美山アカリさん。


 ネット上における誹謗中傷と、投稿動画やライヴ配信中に頻発する心霊現象と思われる不可思議な出来事。


 これらを解決する流れとなったが、果たしてどんな風にしてこの依頼を完遂させるのか。


「そう。今はその一件しか仕事がないからね。瓜時くんが仕事に慣れてもらうには、最適なタイミングだったかもしれない」


「最善を尽くします」


 期待を込められた水沢さんの言葉に、わたしは力強く頷きそう答える。そして――。


「実はですね、わたし昨夜のうちに色々調べてみたんですよ」


 そう話を続け、自分のスマホを取り出すと、それをテーブルの上へ置いた。


「うん? 調べたというのは、何を?」


「アカリさんが受けている被害についてです。わたし、それっぽい動画を可能な限りチェックしてみたんですけど……ちょっと待ってくださいね。怪しいのは全部マイリストに保存しておいたので」


「へぇ、それはありがたいな。なるほど、こういうのは若い子の方が詳しいものだな」


 嬉しい反応を返してくれた水沢さんへ気を良くしながら、わたしはスマホを操作し、アカリさんが利用している動画サイトを開く。

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