動画越しの執念 28
「面白い例えをするなぁ」
カップを口元へ近づけた姿勢のまま、水沢さんは微笑を浮かべてそう言うと、そっとカップを木製のコースターへ置き自分の太ももへ肘を載せる格好で両手を組んだ。
「でも確かに、瓜時くんの言い方は的を得ている。生物は死んで霊体になると、そのまま特に何もなく成仏できるタイプと、何かしらの未練を残してこの世に留まろうとするタイプに分かれるものだ。成仏した霊は天国と呼ばれている場所へ行き、いずれはまた生を手にしてこの世に戻ることもあるだろう。まぁ、それが人として生まれ変われるかどうかは別としてだけどね。ただね、中にはそうじゃない霊も存在するんだ。よしふみくんのように、誰かの守護霊としてこの世へ戻ってきたり、何かしらの要因が絡んで神格化する霊もいるし、生まれ変わることを自ら拒む霊だっている。生きた我々と同じ、多種多様だ」
「皆が、同じ道を辿るわけではないんですね。そっか、よしふみは本当に自分の意志でわたしの守護霊になる選択肢を選んだんだ……。そんなことしないで、ちゃんと生まれ変わって今度は幸せな生活を手に入れれば良かったのに」
自分のみぞおちの辺りへ手を当てて、わたしは中にいるであろうよしふみへと言葉をかけてみる。
当然返答があるわけもなく、身体に何か変調が起きるような兆しすら感じられない。
「あ、別に守護霊になったからといって、輪廻転生ができなくなってしまうわけではないから、そこは心配しなくても大丈夫」
「え?」
「守護霊だって、役目を果たし終えればその立場から解放されて、新しい命に生まれ変わることは珍しくもない。だから今は、よしふみくんの好きにさせてあげるのが自然な流れだ。守護霊は無理に引き剥がすものでもないしな」
役目を果たすとはどういうことかと、水沢さんを見つめたまま数秒間だけ思考を巡らせる。
そもそも、よしふみは何を目的にわたしの守護霊になったのだろうか。
守護霊という言葉から、わたしを守るためと考えるのが普通のイメージではあるけれど、もしそれが目的であるのなら、よしふみが解放されるのはわたしが天寿を全うするときになってしまう。
まさか、わたしがお婆ちゃんになるまで、ずっと霊体のままでいるつもりなのだろうか。




