動画越しの執念 25
「……すみません」
後半、ちょっと責められているような気分になってしまい、肩を狭めながら頭を下げてしまうわたしへ、笑いながら「だから気にしなくて良いって」とフォローの言葉をかけ、水沢さんは自分にコーヒーを淹れてほしいと沙彩さんへ声をかけた。
「ひとまず、そういうわけだからきみが俺に感謝なんてする必要はなかったってことなんだけど……これも巡り合わせというものだろうからね」
ジッと観察するようにわたしを見つめて、水沢さんは唐突に右手を差し出してくる。
「瓜時陽奈乃くん、それとよしふみくんもだな。今日から、よろしく頼むよ」
握手を求められているのだと気づき、わたしは慌ててスカートで手を拭い差し出された右手に自分の手を重ねた。
「こちらこそ、よろしくお願いします。どんなお役に立てるか……って言うか、ぶっちゃけここでの仕事ってどんなことをするのかもまだよくわかってないですけど、頑張りますので」
「うん、まぁそんなに硬くなる必要はないよ。きみは霊が視えるから、いずれはその能力を使って、簡単なサポートをお願いするくらいは考えているけど。まずはどれくらいきみの霊感が強いのか、それを見定めるまでは無理はさせないし、危険な依頼にも関わらせないから、その辺は安心してくれ」
「は、はい」
そうか、危険な仕事もあるのかと胸中で思いつつ頷き、わたしは改めて契約書に向き直ると、一緒に渡されていたペンで記入すべき項目を埋めていく。
「……これで良いでしょうか?」
「んー。うん、オーケーだ」
わたしが書いた内容を確かめ頷いた水沢さんは、契約書から視線を上げると心なしか表情を緩めてこちらを見つめてくる。
「さて、これで今この瞬間から瓜時くんは正式に俺たちの仲間になったわけだけど、現時点で何か質問はあるかい? と言っても、わからないことだらけだとは思うけど。あ、ありがとう」
一息ついたということだろう。ゆっくりとソファーへ背中を預けた水沢さんは、リラックスした様子でそう言って、コーヒーを運んできた沙彩さんへお礼を告げカップを受け取った。
「質問、ですか。そうですねぇ……あ! 今日気になったことが一つあるんですけど」
仕事内容についてはこれから一つずつ覚えていくとして、それ以外で何か訊くべきことがあったかなとあれこれと思い返して、わたしは学校で気になっていた謎があったことに思い至った。




