動画越しの執念 24
「なるほど。それじゃあ、依頼を受けて関わる幽霊以外は、完全に無視しなくちゃいけないんですね?」
「そういうこと。可哀想だと思おうが、恐くて逃げたいと思おうが、心を無にして相手にしない。要は、生きてる側と死んでる側で、シビアに区別をつける感覚だな」
わたしの理解に気を良くしたか、水沢さんはにこりと口元に笑みを浮かべてそう言葉を締めくくる。
「わかりました。と言っても、自分から望んで幽霊にちょっかいをだす勇気なんて、わたしにはありませんから。そこは全然問題ないですね。あ、でも……それならどうして水沢さんは、わたしとよしふみの問題に干渉を? 仕事以外は駄目って言うなら、あのときわたしを助けたこともご法度にならなきゃ、おかしくないですか?」
一瞬だけ納得しかけてから、わたしはすぐに浮かんだ疑問を問いかける。
「それは、そこに書いてある緊急の場合に該当したからさ」
水沢さんはのそりと立ち上がると、こちらへ歩み寄りながらわたしの前に置かれた契約事項の紙を指差す。
「緊急事態と言われるほど、あの場所は危なかったんですか?」
硬い声を漏らすわたしを一瞥してから、沙彩さんの隣に座った水沢さんは、
「そう。ある意味で危険な場所だった」
と神妙に頷いてから、更に詳しい説明をしてくれた。
「あのとき、俺は確かにきみからは当然、よしふみくんからも仕事の依頼なんて受けてはいなかった。それにも関わらず、あくまで不本意なかたちで、俺はきみたちの問題に巻き込まれてしまったわけだ。まぁ、単によしふみくんの波長と俺の波長で合う部分があったせいというのが事実だけど。とにかく、それでたまたま近くを通りかかったら、あの黄泉比良坂へ干渉させられる羽目になったわけ」
「あ、それは……本当にすみませんでした」
「いやいや、謝る必要はないよ。きみたちからしたら、ただの不可抗力だろう。ただ、俺の間が悪かったってだけの話さ。ま、何にせよ、巻き込まれてしまった以上、俺は黄泉比良坂から脱出する必要があったわけで、そのためにはよしふみくんが絡む問題を解決する以外に方法はなかった。つまり、依頼は受けていないけど、目の前の問題を解決しないと現世に戻れないから、仕方なしにきみたちを助けるかたちになった。それだけのことだったんだよ」




