動画越しの執念 22
さすが大人と言うべきか、ちゃんと真面目な人だったんだなと感心しつつ、わたしは改めて水沢さんをまじまじと見つめる。
「あー、園部。暇だったら今のうちに、瓜時くんに雇用契約書の確認をしてもらって。問題なければ、サインか判子をしてもらって良いから」
わたしの視線など気にもせず、水沢さんはパソコンを見つめたままデスクの引き出しを開けると、用紙を取り出しパソコンの横へ置いた。
「はーい」
軽い返事で応じた沙彩さんは、その用紙を取りに行くとすぐにこちらへと戻ってきて、わたしと向かい合うようにソファへ座る。
「ただ座ってても時間がもったいないもんね。今のうちに、契約済ませちゃおうか」
「あ、はい」
こういうやり取りは雇用主である水沢さん本人がやるものだと勝手に思っていたため、ちょっとだけ意表を突かれた気分になりつつ、わたしは姿勢を正して沙彩さんと向き合う。
「そんなかしこまらなくても平気よ。ここに生年月日、それと電話番号。こっちには名前と住所を書いて。最後に、ここに判子かサインをしたら完了。ただ、その前に契約をするにあたっての決め事とか色々細かくあるから、面倒だと思うけどこっちの用紙もちゃんと読んで納得してから記入をしてね」
「わかりました」
「時間はたっぷりあるから、焦らなくて大丈夫だからね」
「はい」
渡された用紙は二枚で、契約書と何だか難しい言い回しの表現がたくさん書かれた紙。
まずはこっちの難しい紙の内容を理解しなくては駄目らしいので、頑張って内容を頭に入れていく。
無知なりに、仕事をしていく上で知っておかなくてはいけないことが集約されているのは理解できたため、これはとても大切なことだと思いながら必死に読み進めてると、途中に一か所だけ引っかかる文面を見つけ、わたしははてと首を傾げてしまった。
「あのぉ……一つ、質問なんですけど」
「どうしたの? もっと時給上げてほしいとか? いくらでも煌輝に発破かけてあげるわよ」
「あ、いえ。お金はそれほど気にしていないので、全然大丈夫なんですけど……あの、ここに書かれているのって、どういう意味なんでしょうか?」
「ん?」
契約事項に書かれたある一か所を指差すと、沙彩さんは身を乗り出すようにして書面を覗き込み、数秒の間を空けてから合点がいったという風な頷きを返してきた。




