表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
わたしは黄泉の光に魅せられる  作者: 雪鳴月彦
動画越しの執念
25/135

動画越しの執念 21

          3


 学校が終わると同時に教室を出て、浮足立つ気分で静寂堂へと直行した。


 いつも通りに大通りから脇道へと入り、相変わらず古ぼけた外観の建物を見上げる。


 ずっとこの町で暮らしてきたけれど、水沢さんと出会うまではこんな所に静寂堂なんて名前の会社が――個人事務所と言うんだろうか?――あるなんて知らなかった。


「……こういうのが、人の縁ってやつなのかな」


 静寂堂。


 怪異専門の何でも屋みたいな所だよと、初めてここを訪れた際に水沢さんが言っていた。


 仕事内容について、ざっくりとした説明を聞いた感想としては、幽霊退治をしているのかという解釈が頭に浮かび、そんなわたしの理解に対し水沢さんは、大雑把に言えばそういうことだと軽い笑みを浮かべながら首肯していた。


 幽霊と関わる仕事の、アルバイト。


 どんな仕事が待っているのかと、不安と期待に気を引き締めながら、わたしは意を決して入口のドアを開けた。


「あ、陽奈乃ちゃんいらっしゃい。待ってたわよ」


 一歩中へ入ると同時、沙彩さんの明るい声がわたしを包み込んでくる。


「こんにちは。今日からよろしくお願いします」


 笑顔を向けてくれている沙彩さんへ頭を下げ、それから奥のデスクでパソコンを睨みつけている水沢さんへと向き直る。


「すぐにそっちへ行くから、ちょっとだけ座って待ってて。園部、コーヒーかジュースでも用意してあげてくれ」


「はーい」


 私の視線に気づいたのだろう水沢さんの言葉に従い、わたしは大人しくソファへ移動し昨日と同じ位置に腰を落ち着ける。


 仕事中、ということなのだろう。真剣な眼差しでパソコン画面を見つめ続けている水沢さんを観察するように眺めていると、沙彩さんがオレンジジュースの入ったコップを目の前へ置いてくれた。


「すぐに終わると思うから、もう少しだけ待っててあげてね」


「はい。いくらでも待てますから、大丈夫です。ひょっとして、アカリさんの件ですか?」


 水沢さんを指差して訊ねてみると、沙彩さんはそうだよと頷く。


「調査しなくちゃいけないことがいくつかあるって、昨日陽奈乃ちゃんが帰ってからすぐにあんな状態になっちゃった。まぁ、依頼が入ったときはいつもああいう雰囲気になるから」


「へぇ……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ