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わたしは黄泉の光に魅せられる  作者: 雪鳴月彦
動画越しの執念
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動画越しの執念 16

「それでも、わたしが水沢さんへ感謝していることに変わりはありません。よしふみだって、絶対にそうです。一緒に見てましたよね? よもつ何とかでよしふみが空へ消えていくとき、すごく穏やかって言うか、優しいって言うか……安心したような顔をしていたのを。あのとき絶対に、よしふみは水沢さんへありがとうって言っていたはずです。だからわたしは、よしふみの分まで水沢さんに尽くします」


 鼻息荒く、断言する。


 呆れられようが鬱陶しがられようが、わたしの想いを理解してほしい。


 そんな強い気持ちで終始吐き出し続けたわたしの言葉を聞いた水沢さんは、


「はぁ……本当にきみは頑固――ん?」


 ふと何かに気がついた様子で目を細めると、感情の読み取れない表情で真っ直ぐにわたしの顔を凝視し始めた。


「……な、何ですか? 急に黙らないで、何か喋ってくださいよ。わたしのこと、雇ってあげても良いよとか、そんな感じのことを」


 少しばかり気圧された気分で、乗り出していた身を引くわたしから視線を逸らすことはせず、水沢さんは


「……なるほど、そういうことか」


 そう、意味深な呟きをポツリとこぼした。


 そういうこととはどういうことか。言葉の意味することがさっぱりわからないわたしは、黙したまま僅かに首を傾げる仕草だけを返す。


「先週、きみと初めて会ったとき、そこまで積極性があるタイプの女子高生にはとても見えなかった。大人しいとまでは言わないけど、もっと落ち着いていたし、まぁちょっと言い方は悪いかもしれないが、平凡なイメージの女の子だったんだけどね。それが、突然うちに押しかけてきて肉食女子並みの勢いで自分を売り込んでくるんだから、本音を暴露するとどうにも違和感はあったんだ。でも、その違和感の正体が今わかった」


「あの……突然何を言い出してるんですか?」


 ここで働かせてほしいという話をしているのに、頓珍漢(とんちんかん)な返答を口にされて、わたしは不満を露わにした顔をしてしまう。


「きみを黄泉比良坂へ迷い込ませていたよしふみくん。その彼が、きみの中にいるみたいだ」


「え?」


 本当に、この人は何を言い始めたんだろう。


 更に訳が分からなくなりつつ、わたしは反射的に自分の身体を見つめるように顔を下へと向ける。


「わたしの中に、よしふみが? 水沢さん、からかってるんですか?」

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