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わたしは黄泉の光に魅せられる  作者: 雪鳴月彦
動画越しの執念
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動画越しの執念 15

 今日までずっと、何度も足を運ぶ度に帰らせられてきたけれど、今日ばかりはわたしも引くつもりはない。


「ボランティアって……あのねぇ、女子高生をただ働きで使ってましたなんて世間に知れたら、余計な疑いとかかけられることとかあるんだよ。その心に満ちた謎の情熱はありがたいけど、やっぱりきみはちゃんとした他の仕事を探しなさい」


「嫌です。わたしは、ここで働きたいんです。水沢さんへきっちり恩を返したと思えるまで、わたしは納得なんかできません」


「恩を返すってねぇ……。そこまで積極的なアプローチを受けるほどの恩なんて、俺にはないと思うよ? あくまで俺は、自分があの黄泉比良坂(よもつひらさか)から出るために、きみを助けたに過ぎないんだから。既に説明したよね?」


「何を言いますか!」


 素の表情で首を傾げて見せる水沢さんへ、わたしは心外な言葉をかけられた心地で、若干荒ぶった声を上げながらお互いの顔の距離を縮める。


「水沢さんがいなかったら、わたしは今でもあの黄泉比良坂、ですか? あそこに迷い込み続けていたんです。それに、よしふみのことだって水沢さんが救ってくれたから、成仏することができたわけですし。わたし自身も子供の頃のけじめみたいなものをつけることができたし、これで何もお礼をしないなんて薄情になっちゃうじゃないですか」


 一週間前、あの時間が止まったような空間――水沢さんの説明によると、あそこは現世(うつしよ)幽世(かくりよ)の中間地点であり、黄泉比良坂と言われているそうだ――で、わたしは水沢さんと出会い、そして助けられた。


 わたしが黄泉比良坂に迷い込んでしまう原因をあっさりと見破り、あまつさえその原因を解決してくれたにも関わらず、お礼なんていらないよと、頭を下げるわたしへ告げて立ち去ってしまったのだ。


 その際、せめてお名前だけでも教えてくださいとお願いをしたら、名刺を渡してもらえたため、こうして静寂堂の存在を知ることができたのだが。


「あれは成り行きだってば。たまたま近くを通りかかったら、俺も黄泉比良坂へ引っ張られたっていうだけで。用事もあって急いでいたし、早めにあそこから出ようと思ったら、引っ張り込んだ原因を解決するのが最善だろう?」


 つまり、自分が助かるためのついでであって、きみは俺のおこぼれを得ただけみたいなものさ。


 そう言って、水沢さんは冷めかけているであろうコーヒーを、澄ました顔で啜った。

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