動画越しの執念 10
「ファンの方から、あたしとは別の人の声が動画に入ってるって指摘を、毎回受けるようになりました。動画を撮っている最中はわからないんですけど、指摘された箇所をアーカイブで見返すと確かにあたしとは明らかに違う女性の声が入ってるんですよ。しかも、投稿する動画だけじゃなくて、生放送の配信にも。急にコメント欄で他に誰かいるのとか訊かれたりして、今じゃもうそれがストレスになっちゃってるくらい、精神的にキツくなってしまって」
はぁ……と、こちらにまで聞こえるくらいのため息をついて、アカリさんは息を整えるように言葉を切る。
有名税、なんて言葉があるけれど、まさかブイフェイのメリルさんが誹謗中傷の対象となっていたなんて。
驚きと共にスマホを取り出し、わたしは慣れた手つきで動画アプリを起動させると、すぐに蒼雷メリルのチャンネルを表示させる。
そのまま一番最近の動画――昨夜にアップされている――を選び、そこに書き込まれた二千を越えるコメントへ画面をスクロールさせた。
「……あ」
そこに見たのは、想像以上の悪意だった。
“こんなキモい声でブイフェイやってて恥ずかしくないの?”
“どーせ、登録者のほとんどはサクラだろ”
“まだ動画配信続けてんの? つまらないくせに、さっさと引退しろよババァ”
“金欲しさに媚び売ってんじゃねーよ、構ってちゃんの三流ブイフェイが。あ、真面目に働けるスキルがないかwww”
“声聞くだけでホントにムカつく。死ねばいいのに”
できるだけマシな誹謗中傷のコメントでも、こんな内容のものがいくつも並んでいる。
良識のあるまともなコメントの方が少なく感じてしまうほどに、心無いコメントが大量に書き込まれていた。
「――嫌がらせを受けることに、心当たりは?」
わたしがこっそりとスマホを弄っている間にも、二人の会話は続いている。
「ありません。同業者といざこざを起こした覚えも、配信で炎上するような失言をしたこともないですし。本当に、全く見当がつかなくて。それで今日、こちらへ伺わせてもらったんです」
勝気な表情を崩し、アカリさんは眉宇を寄せて小さく首を横へと振る。
そんなアカリさんの姿と自分が手にしたスマホを交互に見つめてから、わたしは遠慮がちに手を上げ、二人の会話の隙間に自分の声を滑り込ませた。
「あのぅ……、ちょっと質問なんですけど」
「何ですか?」
まさかわたしから声がかかるとは思ってなかったのか、ちょっとだけキョトンとした表情になって、アカリさんが返事をする。




