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わたしは黄泉の光に魅せられる  作者: 雪鳴月彦
動画越しの執念
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動画越しの執念 7

「ゴホン。それじゃあ、早速ですが話を聞かせてもらいましょう」


 いつまでも立っているわたしを邪魔だと思ってか、水沢さんはわざとらしい咳ばらいをすると、ちらりとこちらを一瞥してから女の子へと意識を向けた。


「はい、よろしくお願いします」


 さすがに仕事中に足を引っ張るような真似はできないと、わたしは慌てて沙彩さんの側へと引っ込んでいく。


「えっと……あたしは、美山(みやま)アカリと言います。北峰(きたみね)高校の二年で、ブイフェイとしても活動をしています」


 沙彩さんが用意してくれた椅子に座り、大人しく話を聞き始めたわたしの耳に、聞き慣れた単語が滑り込んできた。


 Vfei(ブイフェイ)


 Virtual(バーチャル)fave(フェイヴ)idol(アイドル)の略で、今若い世代――と言うか、一部の界隈でだけれど――で人気のネットアイドルを表す言葉。


 動画サイトで可愛らしいアバターを用いて活動するVfeiは、有名な人から無名な人まで合わせれば、世界中で数千人はいるだろう。


 わたしも、何人か応援している人がいて、最新の動画が更新される度にチェックをしているくらいにはハマっている。


 まさか、そんなブイフェイの活動をしてる人が、同じ市内に住んでいたとは、想像していなかった。


「あ……ブイフェイって、わかりますか?」


「ええ、一応は。それほど詳しいわけではないですけど、何度かネットで取り上げられているのを見かけたことはあります。若い世代に人気ということで、テレビで特集を組まれたこともありましたよね」


 女の子――アカリさんの問いかけにあっさりと頷き、水沢さんは落ち着いた声音で言葉を返す。


 ――へぇ、水沢さんがブイフェイを知ってるんだ。


 意外だななどと胸中で思いながら自分のコーヒーを啜り、静かに二人のやり取りを見つめていると、アカリさんは思い出したというように自分のショルダーバッグを開き、一枚の名刺を取り出して水沢さんへと差し出した。


「これ、名刺です。事務所に所属して活動しているわけではないので、あくまで個人活動でしかないんですけど」


「ああ、これはどうも。……なるほど。蒼雷(そうらい)メリル、という名前で活動をされているんですね。あ、よろしければ私の名刺もお渡ししておきましょう」

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