救うべき想い 24
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落ち着かない気持ちを抱え込んだまま、四日が経過した。
裕子の葬儀は滞りなく終わり、火葬後は一度だけ裕子の家へ手を合わせにお邪魔させてもらった。
悲しみに暮れる裕子の両親と、祭壇に置かれた遺骨の納められた小さな白い箱が、強く印象に残った。
けれど、本来であればこちらもしんみりとして涙を流す場面であったはずなのに、同じ部屋に幽霊になった裕子がいたおかげで、どうにも悲しいという感情に身を委ねることができなかったのが本音だった。
裕子自身は、基本的に両親の側に寄り添っている様子ではあったけれど、移動しようと思えばいつでもどこへでも行けるらしく、病院にいる大石くんの所へ様子を見に行ったりもしているらしい。
そして、自殺を図った大石くんは、結果として一命を取り留めることはできた。
手首を切ったものの、出血の割に傷が浅かったようで、発見が早かったことも重なり、それが最悪の事態を回避できた要因だったみたいだと、医者の話を盗み聞きしていた裕子が教えてくれた。
大石くんのお母さんからは感謝と謝罪を同時にされ、家にまで来てお礼を言われてしまい、わたしより両親の方が恐縮していたのがちょっと恥ずかしく感じてしまった。
「まぁ、何にせよ、彼氏くんが助かったのは良かったよね」
日曜日である今日、特に予定のないわたしは午前中から静寂堂へと出勤していた。
ここ数日の間にあった出来事を打ち明けたわたしに、水沢さんはキーボードを叩いていた手を止めながら、優しく笑みを浮かべてくる。
「はい。でもまだ、状態が良くないらしくて、面会は控えてほしいって言われているんですよね。様子を見に行ってる裕子の話だと、意識は戻ってるし会話もできるみたいなんですけど、どうもまだ精神面が不安定みたいで……」
現在時刻は午後の一時。
自分が久しぶりに食べたいからという理由で、水沢さんが注文したラーメンをご馳走になり、今は食後の一休みをしている最中。
「それは仕方がないわよ。自殺をするくらいまで心が追い詰められていたのなら、回復には相応の時間がかかるものでしょうし」