1限目 こんにちは高校生活
大人は誰しも学生というものを経験している。
毎朝パンと牛乳を胃に流し込み、いってきますの合図と共に春の陽気に照らされた通学路を歩くのには理由がある。
我々学生に課せられた、義務教育と名の付く業を果たすために地獄の中学生活を耐え切ったのだ。
そしてこれからの高校生活に想いを馳せるにはこの桜の並木道はいい舞台装置に思えた。
高校生活始めが肝心だ、正直自分の頭はあまり褒められたものではない。テストの結果がクラス順位最下層なんてのはザラにあった。
最初のミッションは勉強のできる友達を作る事だ。勉強に追いつけない俺を引っ張ってくれるのは頭のいい友達という存在だ。そのための作戦もある、ずばり類は友を呼ぶ作戦だ!
きっと頭のいいやつは同じように頭のいいやつでつるむであろう。それなら外面だけでも頭のいいアピールをしておけば天才どもは向こうから寄ってくる算段だ。頼むぜメガネ1号、俺が頭良さそうに見えるためにはお前の力が必要だ。わざわざ中学卒業と同時に買ったメガネにそんな期待も込める。
自分の番号に書かれたクラスに入り、一通りの説明が終わった後、自己紹介の時間がやってきた。
「出席番号1番、新井友重です。趣味はサッカーです」
自分の番までまだ少しある。…そうだ!頭がいいといえばお決まりのポーズがあるじゃないか!手をメガネの縁にあててクイってやる、通称メガネクイッこのポーズによって上がるIQは10%を超えるという
…試す価値はあるな
「出席番号10番、唐沢城っす。趣味は映画っす」
ちょうど次が自分の番だ。よーし唸れ俺の右手!!
「出席番号11番、岸祐作だ。趣味は読書」
ここですかさず渾身のメガネクイッを披露する
おぉ!!みんなの俺に対する見方が変わった気がする!これは効果ありまくりではないか!
渾身のキメ顔で自分の席に戻る。通り過ぎる席からは完全に普通とは違うという目つきで見られる。あとは鴨がネギ背負ってくるのを待つだけだ。
ふっふっふ、完璧だな
自己紹介が終わり俺は自分の席にて声がかかるまで待っていた。もちろんメガネクイッは外せない、効果があるとわかった以上試さない手はない!
「おい!ちょっといいか?」
…えっマジで来た
今日の星座占い2位だったし運も味方してくれている!ありがとう佐原アナ…
「お前の自己紹介痺れたぜ!なんだよあのメガネのポーズ!」
よせやい笑
褒めても何もでねーぞ笑
「俺、斎藤武彦ってんだ…ってさっき自己紹介したか!よかったら友達になろうぜ」
そう言って差し伸べてきた手を俺は握り返す
よっしゃー!これで高校で馬鹿は卒業だ!!
「いやー俺中学の時勉強苦手でよ!教えてもらえると助かるぜ!」
…ん?聞き間違いか?俺は教えてもらう側であってお前に教えることは何もないぞ?
「入学後テストなんて0点取っちまってよ。ホント参ったぜ!」
嘘だろ?さっきの握手返せよ
0点とか俺でもギリ見たことねえよ
「ちなみに祐作は何点だったんだ?」
ちなみに入学後テストとは、受験に受かった者が学校に集まり、もう一度テストを行うといったものだ
必要性はともかくうちの学校では行事の中の1つであり、30点は下回らない方がいいと噂を聞いた。
しかし、そんな噂で点数が上がるわけもなく俺の点数はきっかり30点だ。
「おいおい嘘だろ…」
いや流石に0点にそんな反応されるとは、こいつ自分の立場分かってんのか?
「30点ってこのクラスの最高得点じゃねーか!!!入学早々そんな奴と友達になれるなんて、星座占い1位の俺はラッキーだぜ!」
…ん?最高得点?だれの話だ?もし俺の話だとすると、このクラス相当あれなクラスってことになるが
(ヒソヒソ、30点ですって、ヒソヒソ)
(ヒソヒソ、メガネなだけあるわね、ヒソヒソ)
嘘やん…
俺の描いた高校生活が…
「とにかく俺は勉強置いてかれちまうからさ、引っ張ってくれよ!」
そう言われた俺は天井を仰いだ
あぁ人を頼りにした結果がこれか
マジかよぉぉぉぉぉぉ
そんな声が響く春の陽気の空の下
俺のミッションは大失敗で終わるのだった
作品を作るときに作者より頭のいいキャラは生み出せないです。なら開き直って作者ぐらいの頭の悪さにしたらいいじゃんってことです。
感想貰えたらモチベーションに繋がるのでほんとどうかお願いします。(土下座)