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第85話 援軍拒否と三度目の正直

ここまでのあら寿司

 京の都周辺を制圧した信長&義昭ら幕府軍による朝倉攻めを防ぐため援軍に向かう寿四郎たち駿河勢。途中で甲斐武田家と合流する手筈になっていたのだが甲府では信玄が危篤だと言われ合流を断られてしまった。釈然としないまま今度は美濃・稲葉山城へ向かう寿四郎たち。今度こそ援軍と合流できるのか!?

 甲斐・甲府から山中を通って美濃・稲葉山まで70里強(約290km)

 

 標高の高い地域ではすでに積雪もある為、それらを避けて馬も休ませながら5日かけて稲葉山城下に着いた頃には、幕府軍は義昭が将軍に就いたことに納得しない若狭わかさの武田家を攻め落とし、越前との国境まで間もなくという所まで攻め寄せているとの情報を受け取る。

 

 大軍同士が激突したとして朝倉軍4万がそんな簡単に敗北・退却するとは思えないが、出来る限り早い段階でこちらの援軍も間に合わせたい! と焦る俺の思惑をあざ笑うかのように、稲葉山城も援軍が出せないよう敵方の手が打たれていた。


「飛騨の姉小路あねこうじが義昭方に付いたとの情報があり、警戒の為に今は兵を動かせん状況だ」


 わざわざ城主自らが出てきてそう言われてしまえばどうしようもない。飛騨の姉小路家は美濃が窮地に立たされて次は飛騨に被害が及ぶか、となった時に真っ先に武田傘下へ降るのを決めていたものの、元々は斎藤道三の娘を嫁に貰っていて尾張の織田とは合い婿(義兄弟)の関係になっている。


 周辺国の力関係が変わればそりゃあ少しでも親戚血縁とか、自分にとって良い条件のある方に傾くのは何処の家もそうだろう。今になって氏康ダディが『いざという時の為に子は沢山居なければ駄目だ』的な事を言っていたのがよく分かる。俺もだけど、旧・美濃斎藤家と繋がりのある奴は武田には居ないものな。

 

「そうですな、武田を頼れないとなれば……稲葉山の西、北近江(おうみ)小谷こたに城の浅井長政あさいながまさ殿を頼るのが最善でしょう。かの者は武田に降るより前は朝倉に大きな恩があります。今回の危機に力を貸さぬはずは無いでしょう」


 半兵衛の話では浅井家は元々、近江の六角ろっかく家に臣従していたのだが長政の代になってそこから独立する時、朝倉家に後ろ盾となってもらったのだという。それがどの程度の借りなのか分からないが、少なくともこの状況下での美濃よりは兵を出してくれる可能性は高いのだろう。


「私は急ぎ妻の実家である北方きたかた城の安藤殿に援軍の助力を頼んでまいりますゆえ、小谷城へ向かってくだされ。そちらで合流しましょう」


 半兵衛はそう言うと自分の手勢を連れて北方城の方向へと馬を走らせていった。俺は二度も馬を走らせた挙句、援軍を断られた事のショックで気分を落としていたが、そんな様子を見たマグロから


「そんな顔をされますな。いざとなったら我らの軍だけでも織田信長めに一泡吹かせてやろうではありませんか」


 と励まされる。


「そうじゃそうじゃ! 我らが【はま騎馬隊】の野戦での恐ろしさ、とくと見せつけてやりましょう! 」

「尾張も京も兵は皆、甲斐武田や越後上杉に比べれば弱いものしか居らぬと聞く。そんな奴らが束になっても我らに勝てるものか」

「そうですそうです、敵兵は10倍でも我らが一騎で10人20人と薙ぎ倒せば問題はありませぬ」


 そんな風に頼もしい事を言ってくれる田中さんをはじめとする、はま騎馬隊の面々。

 

 そうだった、敵の数が数万と聞いて最初から援軍なんてアテにして勝てるわけがないと思っていたのが大将として間違いだったな。こちらにはマグロをはじめ、まさしく一騎当千と呼んでも良いような頼もしい仲間が沢山居る。織田信長の軍勢には当たった事が無いけれど、麻呂だの雅だの言ってるような軟弱な奴らに、ウチの軍団が負けるわけがない。


「皆ありがとうな! よし、行こう。ダメで元々、浅井家の小谷城だ」


 そうして俺達は翌日、北西へ15里(約60km)ほどを移動し、琵琶湖を西の眼下に望む山城・小谷城へと足を踏み入れた。

 

 

「よくぞ参られた。浅井家当主・浅井長政と申す。寿四郎殿の数々の働き、聞き及んでおりまする」


 そう言って頭を下げるのは初対面になる浅井長政。俺の活躍、って一体どんな風に伝わってるんだろ?食べ物で相手を懐柔するイメージ?それとも戦場で変な鎧着てるとか?いや、だったらこんなに歓迎されてないか。


河野島こうのじまで信長めを水攻めにして追い返した件、是非目の前で見たいと思いましたぞ」


 ああ、あれか。確かにざまぁ展開としては見物だったけど、あながち俺の功績だけでもないんだよな。あれは半兵衛の助言あっての成功だし、部下に恵まれてるおかげでここまでやって来れてるようなもんだ。


「またまたそのようなご謙遜を!しかし自分の力を過信する愚か者よりも、この長政は寿四郎殿のようなお方が信用できる」


 何処がどうツボだったのか、近寄ってガシっと俺の両腕を握る長政。どうした、急に?


「あの男、信長めは『ワシの弟になって六角退治に協力すれば琵琶湖の東半分はくれてやる。だからオレの妹を娶れ』と来たのです。領地もご自分の妹もまるでモノか自分の駒のようにしか見ていない物言いに腹が立って婚姻を蹴ってやったのですよ。それをずっとネチネチと根に持って……」


 あ、そうだ。確かこの人、史実では信長の妹・お市の方と結婚するんだったよな。でもそれをそんな理由でちゃんと蹴ったのか。

 

 お市の方は会ってないけど相当な美人だって聞いてるし、そんな広大な領地と織田信長の弟って後ろ盾を得られるなら俺だったらホイホイと結婚に傾いちゃいそうだけど……そうならないような人物だから信長に気に入られたのかもしれない。

 多分俺とほぼ同年代の20代半ばだけどこの男、デキる! おまけにイケメンだし、勝ち組オーラを感じるわ。


「この小谷と佐和山さわやまで合わせて6千は兵を出せるハズ。寿四郎殿の兵と合わせて1万。それだけあれば横槍として朝倉軍と対峙した織田勢の背後を突けるハズ! あのうつけの信長の鼻を明かしてやりましょう!! 」


 そう言って俺の腕をがっしりと握るイケメン。ヤバいヤバい、俺がソッチもイケる人だったらこんなん恋に落ちちゃうよ!?


 じゃなくて、この態度を見る限りじゃよほど信長が嫌いなんだな、この人。そういう所も含めて、信用できると思えた。二度も援軍断られてちょっと凹んでたけど、三度目の正直とはよく言ったもんだ。

 


 とその時、こちらの動きには気付かれていないと思っていた俺達に、驚きの報告がもたらされたのだった。

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