表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/190

第84話 話が違う!責任者呼んで来~い!

「そんなワケはないだろう! ちゃんと説明できる誰かに通してくれ! 」

「ですから、何人も通すな! との指示ゆえ! 」


 甲斐武田の本城である躑躅が崎(つつじがさき)館の正門前。


 俺は半分キレながらこの時代に来て多分初の、現代で言う「責任者呼んで来~い」的な事を叫んでいた。何故かって?それは援軍として頼みの綱だった武田軍がここにきて援軍は出せないとか言ってきやがったからだ。


 俺の所へ義輝よしてる将軍からの早馬が届いた頃には同じように、武田にも朝倉救援のための援軍要請が到着していて『駿河軍が到着次第、甲斐より武田騎馬軍団5千が合流し、美濃勢は稲葉山より1万の兵を出して総勢2万で南側から織田徳川勢を挟み撃ちにする』という力強い返答を貰っていた。

 俺達・駿河はま家の軍勢はそれを聞いてとりあえず機動力重視で騎馬4千をかき集め、とにかく急ぎで甲斐へとやって来たのだ。


 それが武田の本拠地・甲府へ着くなり『信玄公は重篤な病気の為、誰にも合わせるなと命令されている。一大事なので兵は出せない』と来たもんだ。

 

 確かに信玄が危篤だというならソレは一大事だし、面会謝絶と言われれば実の息子でも何でもない俺なんかは会わせてもらえないかもしれない。でもだからって……「兵は出せん。かえれ」と言わんばかりの門前払いは無いだろう?

 それも責任者クラスの説明も無く、ただの門番に追い返されるとか。あんまり偉そうな態度取るのも微妙だけど、こちとら一国の国主だぞこの野郎。

 

「うーん、多羅尾はこの件、どう思う?」

「不自然な点は幾つもありますな。拙者に少し時間を戴ければ調べて参りますが」

「そうだな、頼む。どうせ今日中は動けないし」


 馬の速度だから徒歩や荷駄よりも格段に早いとはいえ、東駿河から甲斐に着くまでに夜になってしまっている。今日は躑躅が崎の城内に馬と軍勢を泊めてもらうつもりだったが、それも頼めそうにないので甲府の外れに陣屋を作って野宿しかない。

 大まかに陣屋を敷く予定の場所だけを多羅尾に伝え、俺達は陣屋の準備へと移動した。あーあ、今日は久しぶりに甲斐の本場のほうとうを食べられると思ったのにな。


 その後、日も暮れて暗い中で篝火を焚きながら手分けして、何とか兵と馬各4000分の陣屋を用意し終えるとようやく遅い夕食となる。現代と違って時計が無いからおおよその体感だけど、夕暮れが5時くらいでそれから多分4時間は経過してるから午後9時ごろか。灯りが貴重なこの時代、冬の時期は夕方5時には夕飯食って8時くらいには就寝だから今は夜半過ぎという感覚だ。


「もごもご……城の中を探ってまひりまひたぞ」


 何処から手に入れてきたのか、すでに握り飯を頬張りながら多羅尾が報告にやって来る。遅い時間に重大任務をこなしてきてくれたんだからモゴモゴしてよく聞き取れないのくらいは見逃してやろう。さすがに城でやったら額にチョップだが。


「信玄殿が重い病で起き上がれないのは本当のようです。しかし、今日明日にどうにかなるという状況かまではいささか疑問でした」

「ほう、それはどうしてだ?」

「そんな状況となれば家臣一同が城に集まるは必至。なれども城には勝頼様・甥の信豊殿・父である先代・信虎殿しか主だった者は居りませんでした」


 確かに妙なメンツだと思う。親族一同だけが集まっているとなれば、まだ生存している弟で影武者役の信廉のぶかど・まだ元服前か元服間もないとはいえ3人ほど他の息子も居るはずだし、穴山家も親族衆に入っていたハズだ。それに家臣団、特に自分の近習衆を()()()()()()可愛がってた信玄が死ぬかもしれないタイミングで彼らを自分の元に呼ばないとは考えにくい。


「それじゃあ兵を出すと書いた書状は何だったんだ?」

「そちらは筆跡からしても信玄殿の直筆で間違いないようです。その書状を出した後から体調が悪くなったかと」

「タイミングが良過ぎますな。毒を盛られた形跡などは?」

「枕元の粥を少し食べてみましたがそのような者は入ってなかったかと」


 いやお前すげーな! 看病の人が枕元に居る目をかいくぐって病人の出された粥を食べてくるとかとんでもない能力だぞ! って今回の本題はソコじゃないのか、すまん。


「そうなると今回、援軍について話が急に食い違った意図が読めないな」

「殿、確かに気になりますが、今はそれよりも先を急ぐべきではありませんか?この地にて交渉を繰り広げている間にも義昭方は越前へと迫っておりましょう。稲葉山ならば状況は違いますゆえ、そこで援軍と合流すればよろしいかと」


 ここまで横で静かに聞いていた半兵衛が言葉を挟む。確かに、騎馬軍団とは合流できなかったが稲葉山で美濃所属の兵1万と合流する手筈にはなっていた。騎馬軍団が抜けるのは痛いが、それでも総勢1万4千という大軍で横槍を突ける形にはなる。


「そうだな。じゃあ俺達は朝になったら美濃に向けて兵を進める。多羅尾は甲府に残って武田の様子を探ってみてくれ」

「わかりました、何かありましたらすぐに伝令を飛ばします」


 そうして、期待していた援軍は得られないまま俺達は朝になると陣を畳み、そのまま美濃・稲葉山城へと向かう事になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ