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第79話 それを放屁と言い張るのはちょっと苦しいかな?

 上総里見編、いよいよ決着!!

そして第二幕もこの話を含めてあと二話!

よろしくお願いします。

 俺達が駆け上がった佐貫城の上層には海を見渡す大広間が広がっており、倒された里見兵があちこちに転がっていた。その真ん中には幾人もの槍を構えた鎧武者に囲まれて、覚悟を決めた様な表情で正座している一人の男が居る。

 

 里見義頼さとみよしより。先代の安房上総あわかずさ国主・里見義堯(よしたか)の次男にして、海戦で倒した現国主・里見義弘の年の離れた弟。普通ならば里見家の次期当主となるべき人物なのだろう。もちろん、無事に生き延びればの話だが。


「もう良いだろう。さっさと俺を捕縛して切腹でも何でもさせたらいい」


 年は俺と大して変わらない20台半ばと聞いているが、それにしてはこんな状況にも動じず堂々としている。ここまで追い詰められたら俺はちょっと、冷静さを保てないかもしれない。


「言われずとも貴様は後で処分する。それよりも……藤氏ふじうじは何処だ?」

「なっ!? ここには俺しか居らん。絶対だ! 」


 氏政がその名を口にすると今までの態度に若干の変化が起こる。今回の里見攻めのもう1つの目的である古河公方こがくぼう・足利藤氏。

 ソイツを見つけ出して今度こそ首を撥ねる事が、北条家による関東完全制覇の必須条件なのだ。そしてその足利藤氏は恐らく、この佐貫城に潜んでいる可能性が高い、らしい。


 絶対っていう奴ほど怪しいんだよなぁ?と思っていると大広間の城主の席の後ろ、里見家の家紋が掲げられている大きな布が不自然にヒラリと動く。うん?何だ今の??


「こ、これは俺の屁だ!! 俺の屁は風圧が凄いのだ!! 」


 俺の視線が自分の後ろの壁に向けられたのを見て、かなり無理のある言い訳をする義頼。いや、それはちょっと苦しいんじゃないかなぁ?それに匂いとか全然しないし、と思っていると……



 ぷぅ~~~ぽぺぇ~~~



 蚊の鳴くような、子供が笛を悪戯で下手くそに吹くような甲高い異音がして、直後にものすごい悪臭が広間に広がる。あまりの匂いに義頼も含め、その場にいる全員が顔をしかめて鼻をつまんだ。


 そして臭いと音の発生元である里見家の家紋の旗を槍先でつついてみると……


 奇声と共に旗を巻き込みながら何かが床に落下する。旗が掲げられていた所には人ひとりが体育座りなら隠れられそうな隠し間があり、床にはそこから転げ落ちたと思われる白塗りに烏帽子の小太りな中年男が旗を身体に巻き付け、情けない表情を浮かべていた。


「藤氏様、あれほど何があっても動じず動かないで下さいと申したでは無いですか!? 」

「ええい、そなたが悪いのじゃ! 屁の話などするから出そうになったに決まっておじゃろう! 」


 こいつが話に聞いていた古河公方・足利藤氏か。まあ今までの話からしてもロクな奴じゃないんだろうなぁとは思ってたけど、想像以上の奴が出てきたな。


「大人しくお縄についてもらおう! 」


 片手で鼻をつまみながらも槍先を突き出した氏政が言い放ち、一斉に藤氏にも槍が向けられる。こうして、俺達は里見義頼と古河公方・足利藤氏を捕縛して佐貫城を落城させることに成功した。




「高貴なる麻呂をこのように扱ってどうなるかわかっておるか!? そなたらはいずれ関東どころか天下全ても敵に回し、麻呂に泣いて詫びる事になるのでおじゃるっ!!

 くっ高貴な麻呂がこのような姿を晒すとは。屈辱でおじゃる! 」

 

 佐貫城の堀の外にあるなだらかな丘の外れ。そこでは数日ぶりに地下牢から運び出され、酷い姿を晒した藤氏が後ろ手に縛られたまま、むせび泣くように吠えていた。うーん、泣いて詫びてるのはどう考えてもそっちですよね?

 

 臭いし口を開けばやかましいしで誰もが近付くのを嫌がったので、猿轡をかまして地下牢に放り込んでいたため白塗りは所々剥がれて青ひげがうっすら生えて場末のオカマみたいになっている。

 そして鼻を突く悪臭は数日の間にパワーアップし、屋外にも関わらず誰も3メートル以内に近付けない生物兵器と化していた。誰かコイツにファブリーズ持ってこい!


 そんな藤氏の横で同じように後ろ手に縛られながらも毅然とした表情で正面を睨みつけているのが里見義頼。その視線の先には我らが世紀末覇王・氏康が腕を組んで義頼と藤氏を睨みつけている。


「そ、そうじゃ! 常陸ひたちの佐竹殿がおった! 麻呂が捕まってこのような辱めを受けていると聞きつけ、今頃鬼のような勢いでこちらに迫ってきている事でおじゃろう! 鬼義重おによししげと恐れられた佐竹殿の到着を震えながら待つが良いでおじゃる。デュフデュフデュフ」


 いきなり思いついたように()味方の名前を上げ気味悪い笑い声をあげる汚物。だがそれに動じる者はここには誰一人いない。何故ならば……


「佐竹殿なら此処には向かっておらぬよ。私が出向いて和解を取り付けてきたのでな」

「何奴でおじゃるっ!! あっ貴方様は!? 」

「久しいの、藤氏。そなたの元服以来じゃから、二十数年ぶりか」


 そこに現れたのがこれまで生存を秘密裏にしていた足利将軍・義輝よしてる。藤氏からしたら歳は下だろうが本家筋の当主にあたる格上の存在だ。今回の里見征伐の裏で氏康が動き、常陸・佐竹家へ秘密裏に出向いてもらっていたのだ。


「私が力及ばず、関東は長らく手出しできないままだったがゆえ、そなたには迷惑を掛けた」

「いえいえ。麻呂が将軍様の為、諸将と力合わせて関東に静謐を……」

「なぁんて言うと思ったか!? このような書状を撒いておいて!! 」


 言うが早いか、何枚もの書状を投げつける。

 北条家の軍師・松田憲秀が読み上げた内容は『将軍の座が空位になった今、次に将軍になるのは自分であるから味方しろ。そしたら副将軍に任命してやる』と書いてあった。それが同じ内容で佐竹宛・里見宛・上杉宛・朝倉宛と4通。さすがに4通目の里見宛を書状を読み上げている時は、横に並ぶ義頼も呆れ果てた様な顔をしていた。


「貴様のような恥知らず、同じ足利の家である事も恥ずかしい。散り際ぐらい武士らしく腹を斬れ! 」

「ま、麻呂は高貴な身の上でおじゃるゆえ、刃など持ったことがないでおじゃ……」

「ならば誰かこの者の首を撥ねよ。このように醜く腐り果てた古河公方家など、取り潰しだ! 」


 その一言に世紀末覇王・氏康が立ち上がり、『その役目なら自分こそが』と刀を抜き放って大上段に構える。マンガだったら背後に落雷のエフェクトでも付きそうな威圧感だ。


「ひいいいいいっ! 麻呂はっ! この麻呂を殺すなどっ」

「往生際が悪い!!! 」


 氏康が叫んで振り下ろされた刀はまさしく文字通り、藤氏を一刀両断した。


 

「さて、里見の小倅よ。貴様はどうする?」


 振り下ろした刀の先を向けて氏康が里見義頼に尋ねる。とはいえ選択肢はそんなにあるとは思えないが?


「もはや里見家は終わりだ。意地汚く生き残りたいとは思わない。ここで俺も首を撥ねろ」


 全く動じず、毅然とした態度で氏康を睨みつけながらそう言い放つ。


「……潔いな。それでこそ我が人生最後に立ち塞がった敵に相応しい」

「親父と兄貴なら意地汚くどこまででも戦ったけどな」


 その言葉には答えずに氏康は刀を一振りし、義頼も一刀の下に斬り捨てた。



 こうして、氏康が関東最後の戦いにすると宣言した【安房上総里見征伐】はようやく、戦いの幕を閉じたのだった。


お読みいただきありがとうございます。

読んで面白いと思っていただけましたら

是非とも応援お願いいたします。

次話で第二幕最終話になりますので

そちらもお付き合いいただけましたら!!

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