表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

82/190

第73話 俺の事より孫の事かよ!ってどっかであったなコレ。

昨日がなろうメンテナンスで投稿できなかったため、

本日は二話投稿となります。

次話は夕方投降の予定です。

 東駿河の港、田子の浦湊を出て伊豆半島をぐるりと一周し5日間。


 魚兵衛兄自慢の大型安宅(あたけ)船【魚兵衛丸】(仮)を中心とした約50隻からなる俺達『駿河はま水軍』は小田原の早川湊に到着した。

 

 小型の船から続々と降りてきたウチの連中の様子に湊を守っていた北条兵には海賊と間違われ、一番後ろから魚兵衛丸(仮)が現れると一大事とばかりに小田原城まで伝令の早馬が飛んで、危うく本当に一大事になりかけた。やはりヒャッハー集団にしか見えないのかな、俺達って。


 なんとか誤解が解けて兵達と共に小田原城入りを許されると、俺は早速に天守閣へと案内される。そこには北条家の重臣と思われる面々が居並び、その中心には勝手知ったる義父・北条氏康が数年前に会った時とは違う、威厳に満ちた佇まいで待ち構えていた。


「よくぞ来た! 寿四郎よ! 」


 大広間の端と端でも腹に響くぐらいの大声で言われると閻魔大王の目の前にでも突き出されたような気分になる。書状でも戦の為に呼ばれたハズだし、さすがに何か怒られるとかそういうのではないと思うが……いきなり何だ?この詰問されそうな空気は?


「それで、我が孫・寿康は息災か!? 」



 って開口一番、俺の事じゃなくて孫の事を聞くのかよ!? 一瞬何を言われるのかと思ってびっくりしたよ!


 あ、孫は元気です。てか俺も1年に渡る美濃から北陸三国平定と頑張ってきたわけなんだけど、その話は全くスルーなのね。


「そうかそうか! ならば良い! いやいや、わざわざ呼びつけた本題はそれでは無いのじゃ」


 そりゃそうだ。戦支度までしてヒャッハー集団を雇い入れて、もしそれが本題だったら壮大なドッキリ大成功だよ。

 氏康は居住まいを正して一つ咳ばらいをし、また元の威厳に満ちた雰囲気で全員に宣言した。


 

「我らはついに長年の宿敵、古河公方を未だ自称し続ける足利藤氏と、それを担ぎ上げ我らの相模・武蔵の海を荒らしまわって抵抗する安房・上総の里見らを今度こそ殲滅する! 此度の戦がこの北条氏康、最後の大戦とする覚悟である! 」


 その一言に場が騒然となる。無理もない。

 

 次期当主の氏政が育ってきているとはいえ、やはり北条の大看板はこの北条氏康が居てこそと考える者が少なくないはずだ。一応は独立大名だから他家よそものである俺でさえ「氏政で大丈夫なのか?」と思ってしまうぐらいだもん。家中の人々はもっとそう思っているに違いない。


「此度の戦にて関東で我が北条に仇為す者をことごとく滅ぼし、関東を我が北条家の者たちで手を取り合って守り抜いていける盤石な地盤を作り上げる! 皆の者、その為にワシに力を貸してくれ!! 」


 そう言って家臣たちに深々と頭を下げる氏康。

 


 そうか。氏康は氏政が自分ほどの才覚でない事も折り込み済みで、彼の力でも守り抜いていける盤石な体制を自分の代のうちに作っておこうと考えているのだ。今回はその為の戦いって事なんだな。

 

「大殿様……勿論です! 我らの力で氏政様の代も、更にその先の代までもこの小田原を中心に戦無き世を作り上げてみせましょう! そうだろお前ら!? 」

「「「応!!! 」」」


 重臣代表みたいな人の煽りでその場に居並ぶ一同が力一杯に応える。それによって場は異様な熱気に包まれた。


 

「よし! では布陣を再確認する!

 既に陸路より氏政率いる主力は綱成つななり率いる黄備えと共に江戸城を出て小弓城より南下、三船山みふねやま砦を目指して進んでおる。我らは海にて里見義弘率いる房州海賊衆を打ち破り、海陸共に里見勢の要である佐貫さぬき城を落とすが此度の最も重要な役目である」

 

笠原綱信かさはらつなのぶは伊豆千代丸にて積船20小早20を率い左翼、清水康英しみずやすひでは松千代丸にて積船15小早30を率い右翼と斥候じゃ!ワシは駿河より来た大安宅にて後方より指揮を飛ばす! 頼むぞ寿四郎! 」

「はいっ? 」


 え、まさかの大将がウチの船に乗るのかよ!? 良いのそれで?


「なるほど。あれほどの船であれば沈む心配もありますまい。大殿には申し訳ないですが後方でゆるりと我らに任せていただければ」

「たわけ! 昨年の三船山砦を奪われた戦いを忘れたか? 我らは大軍なればこそ、慢心が一番の敵であると心得よ! 」

「はっ、ははぁっ」

 

 笠原綱信と呼ばれた男はバツが悪そうに顔を伏せる。確かに昨年【三船山の戦い】と言われる戦で、北条家は里見家の本拠地である佐貫城を攻め落とす事に失敗し、せっかく築き上げた三船山砦を里見に奪われて全軍撤退という屈辱を味わっていると聞いた覚えがある。今回はそのリベンジでもあるわけか。


「今回は我らだけではなく、海賊衆としても名を轟かすこの駿河はま水軍が我らの味方となる! 元より海から名を上げた者たちの戦ぶり、しかと目に焼き付けよ! 」

「「「はっ!! 」」」


 一同が頭を下げ、一斉に俺へと注目が集まる。


 ああやっぱり、ウチはヒャッハー集団っていう認識で固まっちゃってるのね。


 ここで魚兵衛兄みたいに「おう! この海賊王、浜寿四郎にまかセロリ! 」とかドヤ顔で言える性格だったら良かったんだけどなぁ。いや、俺はそういうキャラじゃないか。


 こうして俺達は、北条氏康が最後の戦と定める『房州里見攻め』に参加する事となった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ