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第71話 半兵衛それさぁ5歳児でも分かるように説明できる??

※ 今回は内政フェイズですが項目別に書いておりますので時系列は若干差があります。酒造りは冬の間、越後に滞在して監修しました(訳:新潟の酒美味い)

北陸遠征から駿河に戻り、約1年近く。


 その間、駿河では特に何も起こることなく平和な時間を俺達は過ごせていた。


 そしてその時間で軍監は天婦羅を完成させ、城で何回かの試食会を経て一般試作にこぎつけた。

 『はま寿四本店』では添え物として山で獲れたキノコの天婦羅を、田子の浦・小田原・駿府で展開しているそば・うどんの店『はま屋ことぶき』では新鮮なイカとエビの天婦羅を限定追加メニューとして少しずつ出しているがおおむね好評だという。

 

 まだ揚げ油が高級品になるのでどうしても高価になってしまうが、流行らせていきたいところだな。


 それから……


 

「寿四郎、本当にこのようなやり方で美味い酒が出来るのであろうな?」

「はい、確か、天女様のお告げの通りであれば」


 目の前に吊るされた大量の木綿の袋と滴り落ちる雫を見ながら、若干の不安を覚えつつも輝虎にそう答える。


 長きに渡る国外への出兵が終わり、内政に力を注げるようになった越後では川の氾濫を減らすための堤防工事や低湿地の干拓が進み最近になってようやく、だいぶ現在の越後平野に近い米どころとなっていた。越後120万石、って歴史モノで言っていた数字には届かないけど40万石が80万石だから大した発展だ。

 

 『寒さが厳しく良い水と米のある所こそ良い酒が生まれる環境にある』って詳しいわけでは無いけど現代人である俺のイメージから酒造りを打診してみたところ、無類の酒好きの上杉輝虎は二つ返事で了承し酒造りが始まる。

 

 だがこの時代の酒と言えば『どぶろく』である。ドロドロの甘酒みたいな口当たりとカーっとくる強いアルコールの感じがどうしても馴染めない元現代人の俺は、なんとか現代のイメージのスッキリした『日本酒』が作れないかと思っていたのだ。宴会になる度どうせ毎回無理やり飲まされるし。

 

 そんなワケで色々な知識に詳しい軍監に相談してみた所、数日の回答期間を経て「出来上がったどぶろくを木綿の袋で絞ると澄んだ酒と酒粕になる」と教えてもらい、酒造りの工程の最後にこの『袋絞り』を試しに加えて見てもらったのだ。


 上手く成功すればどぶろくよりは少量生産でコストは上がるけど美味しい「澄み酒」を作れる。ハズなのだが……大丈夫かな?これ?


「おおおっ寿四郎!! これは美味い! 美味いぞ!! 」


 物思いにふけっている間にいつの間にか、輝虎は垂れた雫を集めた桶から勝手に盃に次いで味見していた。先に勝手になんてズルい! と俺も味見させてもらうがまさしく、前世で飲んだ日本酒の味だ!


「これはまさしく『天女の雫酒』と呼ぶに相応しい! 礼を言うぞ寿四郎! 」


 そう言って嬉しそうに両手を取る輝虎。近い! 近すぎて眩しい! あの、その美しさで実は男装女性のアラフォーとか反則なんですけど……惚れてまうがな。鬼嫁いるけど。

 前世では社内の高嶺の花で密かに憧れだった総務の長岡さんとか思い出しちゃうわ。あ、あの人もそう言えば新潟がご実家だったっけ。


 そんなワケで寿司・天婦羅に引き続き、ついに日本酒も開発に成功した。これで室町ライフの食文化が大幅に豊かになるはずだ♪……まあ海賊さんとか野武士集団さんとの戦勝飲み会はまだ『どぶろく』散々飲まされるのは変わらんだろうけど。


 

 半兵衛は軍の全体指導やら領内の法整備やらと色々大変そうだが、そんな中でも長男の寿壱と俺に対しては


「太守たるもの、兵法を知らずしてどう民を守れましょうか? まずは孫子から! 」


 とか言って時間を見つけては兵法の講義にやって来た。だが元々この時代の文章に慣れていない俺と、5歳児の寿壱相手には難しすぎてよく分からない。そこで俺が


「半兵衛、その話じゃ元々兵法を学んでない俺達は難しすぎてよく理解できないよ。もっと5歳児にも理解できるように易しく説明するとかできないのか?」


 って聞いてみたら難しい顔をしながら去っていき、数週間後にはさっぱりとした顔をして


【5歳児でも分かる! 初めての孫子  著 竹中半兵衛】


 と表紙に書かれた本をテキストとしてドヤ顔で持ってきやがった。俺も5歳児並みだと思われてるのは悔しいけど、実際よくまとまっててメチャクチャ読みやすい。これは多分、写本したらあまり頭を使う事の得意ではない武士なんかにも需要はあるんじゃないかな。例えるなら以前ウチに居たサバノスケとか。

 

 そういえばアイツ、元気にしてるかな?腕は立つからもう他の大名家に居ると思うけど。戦場で敵味方では会いたくないな。



 逆にマグロの剣の稽古はすごく分かりやすくて、寿壱も三郎も活き活きと楽しそうに竹刀を振るっていた。


「おお! 良いですね。寿三郎さまはなかなかに剣の素質がありますぞ。寿壱さまもその年にしてはなかなかですが、寿三郎さまより先に生まれたのですからここは兄としての威厳を見せないと」

「やった! もっと頑張りゅ。えい! 」

「くっそー! 私とて弟には負けませぬ! えい! 」


 昔のスパルタとは違って褒めたり実力が近い相手との競争心を煽ってみたりして伸ばすやり方だ。そして二人が躓くと


「お二人とも、父上様の剣をよーく見るのです。ほら、奇麗にブレないまっすぐな剣筋でしょう?これを目指しましょう」


 といってお手本に担ぎ出されるモンだから、俺も必然的に練習に身が入る。ただ一つ気になるとしたら

 

「なあマグロ、寿壱は良いとして三郎はなんで寿三郎って呼んでるんだ?」

「それは当然、元服なされたら殿の一文字を取って名付けられるからでしょう?」


 なんて短絡的な。んな事したら四郎なんて寿四郎Jr2世って名前にしなきゃじゃん。

 

 とか思っていたが俺と光の間に生まれた北条の血を引く待望の男子・四郎は氏康に大層気に入られたらしく、早々に氏康の名を取って『寿康』という名を戴いたらしい。しかも将来は伊豆を任せるからと【伊豆守】という官位まで既に義輝から貰ってきたというのだ。伊豆守寿康、さすがにやり過ぎではないだろうか。


 

 そして軍事面では美濃に出兵する前は3000人しかいなかった常備兵だが、甲斐からの受け入れもあって5000人まで増えた。騎馬隊が500人から1000人に増え、鉄砲隊が100名から300名へ、あと数は少ないが精密射撃スナイパーライフル部隊と石火矢(中型砲)隊も居る。

 

 もちろん何処かから駿河が攻め込まれるような一大事には国衆や農民からも人を搔き集めれば1万5千~2万人ぐらい動員できるだろうけど、そうなる前に交渉と今居るこの部隊だけで解決できるようにしていきたいところだ。もちろん何処とも戦にならず済むのならそれに越したことは無いけど。

 

 

 そんな風に過ごしていたのだが翌年の5月、北条家からの一通の書状により俺達はまた戦いに駆り出されることになるのだった。

ご観覧ありがとうございます。

是非とも面白い作品に仕上げていきたいと

思っておりますので応援戴けると嬉しいです♪

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