表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

76/190

~閑話 左馬之助剣客修行譚 其之四 小田原御前試合~①

お待たせしました。第7章、再開です!

最初はこの人の話からです。

 永禄10年(1567)6月。


 左馬之助が小田原にやってきてから3年近い時が流れた。


 その間に元の主である浜寿四郎は駿河一国の国主となり、上杉・武田・北条・朝倉といった有名大名とも同盟を結んで活躍していると聞いている。かつて自分の居たポジションには新当流(しんとうりゅう)の免許皆伝を自称する剣豪・マグロなんとかというのがその場に収まり、きっと戻ったとしても自分の居場所など無い。


 困った。真面目に困り果てた。


 もちろん左馬之助の方もダラダラと3年間を過ごしてきたわけではない。上杉・北条の同盟が成立した事で関東諸国の反北条勢力は団結力を失ってはいたものの、各地でゲリラ戦を行っており完全な鎮圧には至っていない。その為、中小規模の戦に出る機会は何度もあったので、左馬之助は雇われの浪人として各地を転戦していたのだ……そのほとんどが偽名を使っていたが。


 偽名を名乗ったのには理由があった。


 甲斐甲府から小田原に移ってきた時、山賊との戦いにはもう飽き飽きしていた左馬之助はその腕を今度は海で海賊相手に振るってみたいと考えていた。苦手な船酔いを克服する事と、揺れる足場でも安定して戦えるようになる事。それを目的として手始めに腕っぷしでは他に劣る海賊衆へ用心棒として入り込んだのだ。……だが、それが間違いだった。


 一介の海賊相手なら誰よりも強く、そして粗暴で適当な性格だった左馬之助はとにかく海賊たちから大人気になる。初めは海賊衆として先輩だった者たちからも、任務によっては敵対した海賊衆からもいつの間にかアニキ呼ばわりされ、初老近い年齢になっていた頭領からも左馬之助は何かと目を掛けられる存在になっていた。


 そして子が先に戦死していたその頭領がいよいよ船を降りるとなった時、次の頭領に指名したのが左馬之助。海賊衆には古参の船乗りたちも居て当然、次の頭領の座を狙っていたハズなのだが、全く反対意見が出てこなかった。


「やっぱ俺達のお頭っつったらアニキしかいねぇですよ! よっサバのお頭!! 」

「そうか?やっぱりそう言われりゃやるしかねえよな。ガハハハッ! 」


 腕っぷしの強さが全てモノを言う、そういうシンプルな構造の世界に左馬之助は驚くほどマッチしていたのである。



 だが剣術に関しては冷静さを身に付けたものの、担ぎ上げられれば調子に乗る性格は治っていなかった彼は増長し、ヒャッハーと言って調子に乗って小田原近辺の海を散々荒らしまわった。

 その結果、青鯖海賊衆(左馬之助の苗字名前からそう名付けられていた)は小田原の海の天敵として恐れられるようになり、ついには北条家の海軍に包囲されて殲滅されるほどの出来事となる。


 機動力に特化して装甲などほぼ何もない海賊衆の船は全て轟沈、浮いた船の残骸にしがみ付いて漂流していた海賊は全て捕縛されて座敷牢行き、という状況で青鯖海賊衆はあっけなく解散した。



 そんなワケで本名を名乗ればお尋ね者で牢獄一直線なので、命からがら陸に上がった彼は只野三郎(ただのさぶろう)とか武蔵野武蔵(むさしのたけぞう)とか佐々木光二郎だとか毎回適当な偽名で、しかも槍を持ったり大太刀を振るったり小太刀二刀流にしてみたりと素性を隠しながら北条川の雇われ足軽として戦場に立ち、幾多の活躍を見せる。

 

 そうやって活躍していれば当然、士官のスカウトも来ていたが当然のように全部断り代わりに金一封を手にしてその場を去る、そんなスタイルを繰り返していた。士官などしなくても勝手気ままに剣を振るう場所なら幾らでもある。そう思っていたのだが現実は彼に甘くは無かった。


 北条家が関東の弱小抵抗勢力を潰し過ぎた結果、戦が無くなってしまったのだ。



 残っているのは房総半島一帯を取り仕切る里見家を中心とするグループのみ、しかしその戦いに参加するなら海戦となるのは必至。そうなれば……海の男どもにはイヤというほど顔が割れてる。つまり自分が元・青鯖海賊衆の頭領であることがバレる。


 かと言って今更仕官するとしてもこの辺では素性が知れてしまうし、元の駿河に戻ろうにもポジションが無い。


 困った事に突如として活躍できる場がなくなってしまった。



「ねえアンタ、どうすんだい?このまま仕事が無いんじゃ長屋も追い出されちまうよ」


 ここ数年、左馬之助に付いて世話役をしているお初が言う。左馬之助にしてみればたまたま助けた村娘が勝手に付いてきただけなのだが、戦い以外何一つロクに出来ない左馬之助に炊事洗濯身の周りの事をしてやり、長屋を見つけてきて住む段取りを決めたのも彼女だった。


「ああそうだ、あんたコレに出て見ないかい?天下一剣舞会、だってさ。優勝賞金は甲州金50貫分(現在価値1000万円)北条家で武将仕官の機会有り、ですって」


 お初が指をさしたのはついこの前、小田原のあちこちにお触書として出された御前試合の案内だった。なんでも小田原に限らず、関東中の強者を集めて天下一を決めるために破格の賞金とこんな大会名にしたんだとか。


(天下一、か。まさに俺にぴったりだな)


 そう思った左馬之助は翌日には小田原城に向かい、参加申し込みを済ませていた。ちなみに今回名乗った偽名は真野 抜作(まの ぬけさく)という何とも間抜けそうな名前。これには大会受付をした門番が「ちょwおまwマジかよww」という顔をしたのは言わずもがなである。



ご観覧ありがとうございます。

是非とも面白い作品に仕上げていきたいと

思っておりますので感想戴けると嬉しいです♪


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ