第67話 今すぐにッ!! 腹斬れ貴様ぁ!!
これまでのあら寿司
朝倉・上杉と共に能登の内乱鎮圧のために能登半島を回っていた寿四郎。
上杉輝虎から思いがけない内乱の真相を聞き、急いで朝倉の元へと駆け付けるのだった。
翌朝、日の出と共に船に乗り込み能登半島の沿岸を通って能登島の突端・八ヶ崎という土地に辿り着く。そこで慌ただしく馬を借りると能登島を横断し、渡し船の様な小舟で大体1キロあるかないかの湾を渡り、七尾の町に着く。
もうすでに大勢の上杉家の軍勢が城を囲む準備の為に町に溢れかえっていて、半分ぐらいお祭りのような様相だ。
そんな中で上杉輝虎はあちらこちらに急ぎの伝令を飛ばすと替えの馬に跨り、朝倉軍の本陣目指して馬を駆る。もちろん、俺達もはぐれないように後を追うのに必死だ。
そうしてようやく半日以上かけて辿り着いた朝倉軍本陣は騒然としていた。
「朝倉殿! 一体何があったのだ!? 」
「輝虎殿、それがですね……」
なんと畠山親子は上杉軍が間もなく到着すると聞きつけるや否や、自分たちの手勢と朝倉軍から借り受けた兵の総勢・千を連れて七尾城に降伏勧告に勝手に攻め寄せたのだという。
それも『大人しく今のうちに降伏するなら首謀者の遊佐続光と長続連の切腹だけで、他の者は許してやる。だが勧告を受け入れないのなら朝倉・上杉3万の兵で一人残らず皆殺しにする』なんて勝手に条件を付けて。
「あのような者野放しにしておくわけにはいかん!今すぐ追いかけるぞ、皆の者!! 」
「お待ちください!敵も小勢と侮って城から打って出た場合、多勢に無勢……」
「私を誰だと心得る!? 毘沙門天の生まれ変わり、越後の龍・上杉輝虎なるぞ!!! 」
準備が整わないと慌てる朝倉に怒鳴りつける輝虎。確かに今の勢いだったら千人以上の敵を目の前にしても一人で倒してしまいそうな空気だ。俺も並みの兵以上には鍛錬をしているつもりだったが昨日、コレが戦なら100回は死んでたってぐらいボッコボコにされたからわかる。おかげで全身がメッチャ痛い。
七尾城の麓の山中を敵兵に見つからないように駆け上り、畠山親子を追う。メンバーは輝虎・俺・朝倉・遊佐・温井の5人にマグロなどの選り抜きの精鋭が数人だけ。こんなところで城から出てきた数千の兵とコンニチハしてしまったらまさに一巻の尾張だ。
その割に先頭を突っ走る輝虎の速さが凄い。この人もしかして忍び?と思わせるぐらい音も無く茂みをかき分け、目指す方向へ突っ切っていく。
「こんなもの、川中島の妻女山下りに比べたら容易い事」
あ、確かにこの人、深夜に山を音も無く駆け下って信玄の本陣に大将自ら斬り込みを掛けてたんだった。俺が出会ってからはそこまでの本気モードを見てなかったから、ヤベェ人だったのをちょっと忘れてたわ。
そうして野生の嗅覚か、味方が敵方と衝突する前に畠山親子の軍団に辿り着いた。突如現れた上杉輝虎の姿に兵達は驚いていたが鬼のような形相と雰囲気に飛び退くように道を開ける。俺達の前には畠山親子の元までモーゼの海割れのごとく道が開けていた。
「おお! 輝虎殿!早速駆けつけてくださるとは……ごぶぁっ!! 」
満面の笑みで近付こうとした畠山義続の左頬に輝虎の豪快なクロスカウンターが炸裂し、甲冑を付けて重くなっているハズの義続がマンガみたいに宙を舞って数メートル吹っ飛ぶ。
「話は全部聞かせて貰ったぞ。ここに居る者どもになっ!! 」
「げえっ温井に遊佐の息子!? お前らがどうしてここに」
「何か申し開きはあるか?あるわけ無いよなぁこの屑めッ!! 」
言い訳の隙を与えず追撃の蹴りが入る。完全にブチ切れてるのが誰の目から見ても明らかだ。
「輝虎さま! このような者たちの言う事など鵜呑みにせず、能登の残党の始末は我らに任せて……」
「貴様もだ義綱ッ!! 家臣の訴えより、もう退いた父の尻拭いを優先するなど暗君そのもの!さらにこの期に及んで口封じで揉み消そうなど言語道断っ!! 」
父親への暴行を止めようと後ろに回った義綱には鋭い肘が顔面に刺さる。顔を押さえてうずくまる義綱を無視し、輝虎は義続への追撃を再開した。
「貴様がッ!! 生涯2度と女子に近付かぬと誓うまでッ!! 殴るのをっ!! 止めないッッ!! 」
「ち、誓うっ! 誓いますからっ!! もう止め……」
「そんなモノ信じられるかぁぁー!! 今すぐにッ!! 腹斬れ貴様ぁ!! 」
改心することを誓ったところで殴るのは止めないご様子。なんか……言う事を信じてもらえずに拷問され続ける姿を見ていると、身に覚えがあるというか背筋が寒くなるというか、前に有ったなこんな事。
「寿四郎殿、これはどういう事なのか?」
「ああ、朝倉様。これはですね」
親子二人を殴り飛ばす打撃音が響き渡る中、俺は事情を一切聞いていない朝倉義景に聞いた話を要約して説明した。最初は半信半疑という感じで聞いていた義景も、すべて話し終わる頃には顔を真っ赤にして怒っていた。
「そのような事、由緒ある足利将軍家重臣の名を汚す事甚だしいッ!! 私にも一発殴らせてくれッ!! 」
そう言って立ち上がって輝虎に混ざっていこうとする義景を必死で止める。ちょっと待って、あなたが混ざらなくても彼らのライフはもうゼロよ。
「七尾城の者らに伝えよ!そなたらの事情と義続・義綱の悪事、我ら上杉・朝倉は納得致した。
必ずやそなたらに納得できる裁定を下すゆえ、今すぐ武装を解いて主だった者らは七尾の城下・上杉の本陣に馳せ参じよ、と」
肩で息をしながら輝虎がそう告げる。伝令を務めるのは倍くらいに膨れ上がった畠山親子の顔に若干引き気味の遊佐・温井コンビ。彼らなら城に籠る父親の続光を通して武装解除の説得に成功できるだろう。
そして城下町・七尾に構えた上杉本陣に戻って待つこと一昼夜。
遊佐家を通じてなんとか説得に成功したようで、軍勢同士がぶつかる戦が起こることなく畠山義慶・遊佐続光・長続連らが上杉本陣へとやってきた。
ご観覧ありがとうございます。
是非とも面白い作品に仕上げていきたいと
思っておりますので感想戴けると嬉しいです♪
次回、北陸平定編最終話です。




