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第57話 ゴリマッチョ寺なんて無かったんや

 翌朝、福光(ふくみつ)と呼ばれる集落を出て加賀の中心的拠点・御山御坊(おやまごぼう)へ向かう。


 昨日は村人たちから熱烈な歓待を受け、村長の家に泊めてもらって久々にぐっすりと眠れた。眠れずに大きなクマを作っていた半兵衛もすっかり優雅そうな雰囲気を取り戻している。

 海老沢は山仕事をする者から細かな地理を聞き、代わりに軍監は『美味しいほうとうの作り方のコツ』を女衆に教えながら、ちゃっかりこの土地の名産品として使えそうな美味しい食材を聞き出していた。早くこの土地も豊かに暮らせるようにしてやりたいな。


 ここから御山御坊までは医王山と呼ばれる山を抜ける6里(約24キロ)の道のり。だがその山地にも寺が多数存在するようで全ての領地を避けて山を抜ける事は難しく、いくつかは通り抜けなければいけない。つまり、戦闘は避けられないという事。

 

 他の寺社仏閣と違い、本願寺の寺は高く囲われた塀に頑強な城門を備えており、中には武芸の鍛錬を積み大鎧を着た僧兵が多く詰めている。戦国大名の統治する国であれば支城ぐらいの規模の建物だ。そして大体、名前がもう強そう。最強寺とか昇勝寺とか常勝寺とか。


 なんでもその昔、超勝寺(ちょうしょうじ)とかいうめちゃくちゃ強そうな名前の寺が本願寺で実力を持っていて、そこの坊主が「やっぱ強そうな名前にしないとご利益あると思われないべ」と発言したとかしてないとかで皆こぞって漢字を変えたり、名前自体ごっそり変えてイカつい名前の寺ばっかりになったのだとか。何してくれてんだ超勝寺。



 そんなこんなで最強とか常勝とか凄い名前の付いた寺を幾つか攻め落とし、6里のうちの中間地点・本泉寺と呼ばれる寺に辿り着く。


 攻め込む前は『うっわぁこんなイカつい名前の寺、ゴリマッチョな坊主兵がウヨウヨ出てきたらどうしようかなぁ』とか心配したけどそんな事は全然無く、むしろ『農民の夜襲と違って生臭坊主相手なら何の躊躇も遠慮も無く戦えるぜ♪』と鎧武者の皆さんは意気揚々とヒャッハーしていた。

 坊主を平気で殺すってのもどんなモンかなぁ……と思うんだけど、村で財産貯め込んでたあの生臭坊主の事を考えればまあ、仕方ないわな。



 翌朝、敵を始末した寺で寝ていると大音量の銅鑼の音で叩き起こされる。慌てて起き出すと武装した坊主に寺を囲まれていた。


「我が土地を侵略し阿弥陀(あみだ)様に仇なす仏敵(ぶってき)どもが! さっさと寺を出て我らの槍に掛かるが良い! 」


 坊主軍団のリーダーと思われる坊主が大声でこちらに叫ぶ。俺達が泊まったこの寺は一向宗の中でも歴史と権威のある寺らしく、だから火矢を射掛けたり殺生を行う事は避けたいと思っているのだろう。でもさあ、そうと分かっていてわざわざ寺から出て戦ってやるお人好しは居ないと思うけどな、普通。


「出て来ぬのなら我らが山門を破り突撃するまでよ! 」


 今度はリーダーの前に立ちはだかった、馬に乗った鎧武者の一団の大将と思われる男が叫ぶ。僧兵の一団とは装備や雰囲気が違う所から察するに元々が武士の一団だろう。


「ちょっ窪田殿、由緒ある本泉寺の寺内で戦など勘弁してくだされ」

「そんなもの、民からまた寄進を幾らでも集めて作り直せば良いではないか」


 何やら内輪揉めしている様子だが、そんな状況を待ってやるほど間抜けのお人好しではない。大将が揉めてるせいで待機させられてる僧兵たちに、寺の塀のあちこちに設置してあった鉄砲用の狭間から銃口を向ける。


「誰が出てくか! 鉄砲隊、撃てぇぇぇ!! 」


 俺の号令で数十カ所の筒先が一斉に煙を上げ、バタバタと僧兵たちが倒れた。


「おのれ! よくも騙し討ちのような姑息な真似を。白法衣隊は裏門に回れ!! 山門ブチ破って突撃だ! 」

僧都(そうづ)どの!先程由緒ある寺を戦に巻き込むなとご自分で……」

「一方的にやられて黙っておられるかッ!! やられたらやり返す! 倍返しじゃ!! 」


 怒り狂った坊主が自分の言った事に手のひらを返して全軍突撃を命じる。煽り耐性ゼロなんか、コイツは?


「我々が裏門は固めます!こちらも気を付けてくだされ」


 そう言ってノドグロと寒ブリが越後兵を引き連れて裏門へ向かう。表門付近ではマグロが強弓をつがえ他の兵達にも指示を飛ばしている。物見からの知らせだと敵味方共に数はほぼ同じくらいらしい。

 となると塀の内側から戦ってるこちら側の方が圧倒的に有利なハズなんだが、敵側は犠牲を省みずに突っ込んでくる。何か策があっての事なのか?


「貴様ら、我は大僧都(だいそうづ)・超勝寺実証ぞ! 我が采配に従えば勝ちはおろか大勝利、更にはそれを越えた超勝利は確実!! 進め進めェー!!! 」


 お 前 が 超 勝 寺 か !!


 実際それによって坊主たちの士気は異様なまでに高く、弓にしろ鉄砲にしろ致命傷まで与えていなければ構わず突っ込んでくるので、これが野戦だったらなかなか苦戦していたかもしれない。だがこちらには防壁となる寺の壁がある。もはやワンサイドゲームだ。


「そん……な。我が加護がありながらこのような敗亡など」


 マグロの射る強弓の一撃が見事にブッ刺さった超勝寺が『敗北なんて信じられない』という顔をしてドサっと地面に倒れる。俺からしたらそんな根拠のない理由で籠城してる寺に無策に突っ込ませる方がクレイジー極まってると思うんだけどな。


「ここは退く! 御山御坊まで撤退だ!! 」


 坊主たちの中にあって冷静に戦況を判断していた武士の一団が退却を開始する。確か窪田とか呼ばれてた奴か。坊主どもが超勝寺みたいな駆け引きに疎い脳筋ばかりなら簡単なんだけど、あんなのも居るとなるとさすがに本拠地攻めは一筋縄ではいかなそうだな。



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