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第51話 戦闘狂ってマジで正気の沙汰じゃねえんだな。

 翌朝、浜家の陣代わりに借りていた寺に『陣を畳んで全軍、稲葉山城に来るように』との伝令が訪れる。

 昨日は斎藤龍興(さいとうたつおき)の処刑についてだったが、今日はどんな要件だろう?そういえば義信・勝頼兄弟はまだ織田領から戻っていないのだろうか?


 陣を畳むのは軍監に任せて速攻で稲葉山城へ向かう。考えてみれば一昨日は国主の座にふんぞり返っていた龍興が昨日はその首を獲られ、今日はもうその座に信玄が座っているのだと思うと短期間でとんでもない変化だ。


 国盗りとか下剋上、ってのは成立しちゃう時にはこういうものなのだろうか?俺も民衆や隣国のヘイトを気付かずに貯めてしまったとしたらいつかは……とか考えると身震いがする。今はとりあえず考えないでおこう。



 一昨日も挨拶に訪れた稲葉山城の天守・大広間に着くと、前とは別の意味で騒然としていた。居並ぶ将たちの顔にははっきりとした困惑が見てとれ、その中心には一人の男が正座している。あれは……勝頼か?


「四郎勝頼! 貴様は独断で川を渡り、退却する織田軍を深追いして小牧山にて返り討ちに遭い兵を全滅させたと聞いておる!! 何か申し開きは無いか!? 」


 怒気を含んだ信玄の怒鳴り声が広間に響き渡るが、それを受けた勝頼は涼しい顔だ。


「我らの軍勢3千に対し織田信長どのが小牧山に遺した兵は2千程度。にも関わらず城での籠城など姑息な手を取らずに一兵残らず打って出て我らと対峙してくれた。

 その姿は将・兵ともに、まさに食うか食われるかに命を懸ける飢えた狼の群れの如き勢いであったのだ。戦国の乱世に生まれ、これほどまでに生きていると感じた事は他にない! これぞ命の獲り合い、戦よ!! 」


 半分以上、申し開きにも言い訳にもなっていない事を熱弁する勝頼の目には恍惚に近いものが映っており、もはや別人のようだった。いや、コレがコイツの本性なのか。戦闘狂ってマジで正気の沙汰じゃねえんだな。


「そこでその命の獲り合いとやらに負け、逃げ帰ってきたという事か! 」


 信玄が握りしめた拳をワナワナと震わせながらそう問う。


「逃げるとは人聞きの悪い。俺は最後まで命を燃やし尽くすつもりだったが、其処に転がっている義信の傅役のジジイが姑息にも俺を気絶させてここまで連れてきたのだ」


 ふと勝頼の目線の先を見ると、総白髪のわりに筋骨隆々とした身体つきから一目で優れた武人と分かる上半身裸の男が、正座して頭を垂れた姿勢のまま腹から血を流して事切れていた。切腹、したのか?



 ……って事は義信も……



「あの男も馬鹿な奴よ。『弟を守るは兄の役目』などと命の遣り取りの場に横槍を入れおって。そのような甘さがあったから命を落とす事になったのだ。あんな者はどうせ生きておっても武田の跡目を継ぐに相応しくなどなかったわ」

「四郎!! 貴様ぁぁぁぁぁぁぁ!!! 」


 ついにブチ切れた信玄が立ち上がりつつ刀を抜いて勝頼に斬りかかろうとする。が、それを一瞬早く察知した信玄の腹心の内藤 昌豊(ないとうまさとよ)馬場 信房(ばば のぶふさ)が信玄を両脇から取り押さえた。他の諸将も立ち上がり、広間は騒然となる。


「貴様のような者を今後、戦に出す事は無い! 当然、武田の世継ぎとなる事もだ!!

 即刻、甲斐へ戻れ!! 秋山、間違いなくそれを見届けよ!! 」


 取り押さえられて少しは冷静を取り戻したのか、先程の剣幕ほどではないトーンで信玄が勝頼に帰れと告げる。だが肩で息をしていて怒りが収まりきらないといった雰囲気だ。当然だ、俺でも刀を抜いて斬りかかってやろうかと思うぐらいの態度だったし、同じように思った奴も少なくないはずだ。


 だが肝心の勝頼は全く意に介した様子もなく、フンと鼻を鳴らして立ち上がり踵を返す。そして捨て台詞のようにこんな事を吐いた。


「尾張の狼と対峙するには年老いて牙の抜けた虎ではもはや話にならぬ! いずれは俺がこの甲斐を手にして強き武田を取り戻す! 必ずだ!! 」


 そう言って愉快そうに笑いながら広間を退出。監視役を命令された秋山虎繁(あきやまとらしげ)は無言で一礼し、その後を早足で追いかける。真面目にトチ狂ってんな、アイツ。


「御屋形様! あのような者を放っておいては何時寝首を掻かれるか分かりませんぞ! 」

「しかし、義信さまが亡くなったとしたら世継ぎは勝頼さま以外には……」


 それぞれの思うところを述べたいと何人もの将が口を開き、大広間は喧騒に包まれる。その空気を両断するように信玄は言い放った。


「あ奴の事など放っておいて、これよりこの美濃をどうするかの軍議を始めるぞ! ちなみに寿四郎、終わったら俺の部屋に来い! 」


 場を収めるよう放った一言に一同は口を噤み、広間は静寂に包まれる。そして「ちなみに」の先の言葉から俺を振り返り、哀れそうな目で見る数人の顔。あ、これ腹いせになんかされるパターンのヤツじゃね??まさかとは思うけど……色んな意味で慰める役、とか?


 俺にはソッチの趣味って全く無いんだけどなぁ……何されるんだろう……こわぃ><

ご観覧ありがとうございます。

是非とも面白い作品に仕上げていきたいと

思っておりますので感想戴けると嬉しいです♪

また評価・ブックマークも戴けるとハゲ……

励みになります!よろしくお願いします。

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