第27話 反撃の狼煙
翌日、はま家の家臣一同が大広間に揃い、新年の挨拶から始まった。
と言っても戦で主だったものは戦死・行方知れずになってしまったので女中さんを入れても総勢20名、将と呼べるものは魚兵衛兄とマグロ・軍監のみ。それでも、誰も残っていないよりはマシだろう。
「ええと……皆には本当に迷惑を……」
「迷惑だなどと思う者ならここに残ってはおりませぬ! 」
「そうでござる!それゆえ当主が頭を下げるなど必要なき事! 」
頭を下げようとした俺の言葉に軍監とマグロが割って入る。その眼には何かを決意したような強さがあった。それを見て魚兵衛兄がニヤリと笑う。
「こいつらもこいつらなりに責任を感じて、何が出来るか考えてそれぞれが出来ることで動いてたんだ。お前はちゃんと立ち直る! って、そう信じてな」
そうだったのか。
俺が荒れていた時、砦では誰にも会わなかったから皆が愛想を尽かしたものだと思っていた。正直今日だって口を開くまで『人として終わった奴が今更何をノコノコ出てきてんだ!?』って気分で俺の前に来たのかも、とか思っていた。
「すまなかった……皆。俺はもう大丈夫だ!! 」
下げかけていた頭を元に戻し、姿勢を正すと皆が安堵した表情で笑いかけてくれる。うん、戻ってきたぞ、俺は。
「であれば!! 殿に是非見ていただきたきものがござりまする!! 明日の朝にでも早速甲府に……」
「待て待て真黒殿。殿にはまず小田原に来ていただきたく。新年祝賀の儀で北条氏康様・氏政様も小田原におられますゆえ」
「それならば武田も新年祝賀の儀で甲府に集まっておる!! そこに駆け付けて武田家中に小原の卑劣な策略を伝え、駿河を攻めるための助力を訴えれば……
「信玄殿の元へ向かうのは後じゃ! 私の頭の中ではちゃーんと順序と段取りは全部計算に入っておるから安心されよ」
そう伝えるが早いか、我先にとマグロと軍監が進言してくる。ああ、そういえば前もサバと軍監で同じような事あったなぁ。あの時も凄いピンチだと思ってたし、大丈夫か?って随分と俺は狼狽えてたけど、力を合わせて何とか成った。
そうだよ、ちゃんと力を合わせれば何とかなるんじゃないか!
マグロと軍監がまだあれこれ言い合っているのを見ながら今の状況を振り返る。魚兵衛兄に昨日聞いた情報では、今のはま家は曳馬城で俺含め主だったものは戦死したことになっており一応、今川への忠義に報いたという事で魚兵衛兄を当主として20石の俸禄を与えられたのだそうだ。
20人規模の小勢力で収まって大人しくしてるなら給料は面倒見てやる、って感じか。
もちろんそんな事に従うつもりは俺は毛頭ない。逆に死んでいると思われてるなら好都合だ。
今川に、いや小原のやり方に反感を持つ遠江・駿河の有力者に敵に悟られないようにどんどん接触して味方に引き入れ、孤立させたうえでアイツだけは今までしてきた事の報いを受けてもらう!
多分だが、軍監も同じような事は考えているだろう。
「それで、どちらの案を優先させるか決まったか?」
「あうぅ、ぐ、軍監どのの策の方が優秀かと……」
マグロが蚊の鳴きそうな声でそう言い、軍監は勝ち誇ったような顔をしている。はい論破ー!! ってやつか。
「ならば先に小田原の北条殿の元へ向かう、で良いんだな」
「はい。それと殿に一人、紹介したき者が居りますれば」
軍監がそう言うのに合わせて、大広間に一人の男が入ってくる。
大柄な体型、ドスドスと歩く足音、ボサボサの髪の毛。あれはまさか……
「多羅尾!! 」
言うが早いか、俺はソイツの方に駆けだしていた。そのままの勢いで男に抱きつく。男は少し驚いた様子を見せるが抵抗はしない。
「……生きてたんだな……傷だらけで俺を救ってくれたって。死んだって聞いてショックだったぞ。でも……良かった」
俺は人目を憚らず泣いた。あの恐怖を共にくぐり抜けて、あの地獄から救い出してくれた男。どれほど感謝しても感謝しきれない。
しかもオレのせいで命を落としたなんて聞いていた奴が、生きて俺の前に帰ってきてくれたなんてもう……
「あー、殿。その者は多羅尾に間違いは無いのですが……」
軍監が言いにくそうに何か言おうとするのに気付いて我に返り、抱きついてた身体を少し離す。
うん……冷静に落ち着いてみると確かに微妙に違う。多羅尾にしては髪が薄くないし加齢臭もしない。
「こほん、父でなくて申し訳ないですが……多羅尾増俊が息子、多羅尾増乗と申します」
「はああああああぁっ!!!!? 」
息子かよっ!!! 思わず抱きついて泣いちゃったじゃん!!
この感動の涙をどうしてくれる!?
しかし似てるなぁ。年齢的に息子より弟なんじゃないかってぐらい
「齢は殿の二つ上で今年二十歳になりまする」
若っ!!いや君どう見ても30超えてるっていうか40でもおかしくない見た目じゃん!!驚きのオンパレードだわ。
「昨年まで父の命により、北は奥州の地を見て回っておりました。父の死の知らせを聞き、戻って参った次第でございます。これよりは我が駿河多羅尾衆頭目として殿の耳目となりましょう」
多羅尾(息子)は片膝をつき、頭を下げてそう言った。体型的には忍びなんて出来そうに見えないのだが、見かけによらんのか?
「それがしは殿の居られる城に構え、我が手の者たちが運ぶ情報を殿へとお届けする役目を果たしましょう」
あーやっぱり実行部隊では無いのね。そんな気はしていたわ。
「それがしはこの城に籠って今川・松平の動向を探りますので。殿は存分に甲斐相模などを周り、下固めをしていただければ」
うーん……普通、逆じゃね??
なーんかどうしても前世の記憶で『自宅警備員』という単語がチラついて仕方なかったのだけど、こうして新たな仲間を得て俺達のリベンジバトルがスタートした!!
ご観覧ありがとうございます。
是非とも面白い作品に仕上げていきたいと
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