閑話 とある歴ヲタの転生譚ー壱ー
今回は歴史上に登場しない謎の軍師、
軍監が主役のお話です。
実際にあるならウイ氏、やりたいっ!
私の名前は赤井 監太。
普段はしがない商社の経理部門で働く、20代後半のサラリーマンだ。
好きな物語は戦国軍記モノで『寿四郎立志伝』と戦国パロディ『転生したら有力武将の息子だったので蹴鞠で天下を統一します』好きなゲームは今挙げたラノベ、略して『転ケマ』から派生した大人気ゲーム『ウイニング氏真』
いや、決して戦国オタで趣味が渋いとかそういうヤツではない。ウイ氏やってるヤツなら他にも世の中に沢山いるし! まあ、オンライン対戦でしか会ったことないのばかりだけど。
私の今ハマってるゲーム、ウイ氏こと『ウイニング氏真』は11人の武将を選んで前衛・中衛・後衛に配置して作戦を練って敵と戦い、勝利して自分の領地を拡げるという国盗りとチームバトルを融合したスケールの大きな戦国ゲーム。
ステージ(領地)が拡がっていくに従って使っていた武将もレベルアップして固有スキルをどんどん覚え、他地域の武将も新規獲得できるようになるというやり込み要素がウケて昨年、世界征服版も発売された人気ゲームだ。
私は仕事が終わって帰宅すると毎日、このゲームに没頭するのを唯一の趣味としていた。昨夜はたしかようやく全国制覇編まで終わり、金曜の夜だしと世界対抗戦をどっぷり楽しんでいたらついついやり込んでしまって、空が明るくなって雀の鳴き声が聴こえていたのまでは覚えている。
だが、ベッドで横になったハズが起きてみたら草むら。それも、そこから見える風景が明らかに現代の家じゃなくて時代劇で出てくる『長閑な農村』って感じの家ばっかりなのはどういう事だ!? これはまだ夢の中……なのか?
「貴様! 何処の者だ!? このような所で何をしている!? 」
上半身を起こしてみた所で後ろから誰かに取り押さえられる感覚と、ほのかに香る加齢臭。これ、ウチの上司の朝倉部長が私のデスクに近付いて仕事ぶりを監視しに来た時にするのと同じ匂いだ。
つまり私は今、後ろからおっさんに手を後ろに捻じりあげられて職質っぽいのを受けている、という事か。しかしさっきの質問、むしろ私がしたいぐらいだ。ここは何処で何でこんな所に居るのか?
「いえ、私は決して怪しい者では……」
「そんな恰好でなぁーにが怪しくないものか!? とにかく城まで来てもらおう」
そう言われて捕縛された格好のまま、連れてこられたのは『城』というより『海賊の砦』と言った方が正しい感じのする、砂浜に立つ木造の建物。
「うーむ、聞けば聞くほど珍妙な話だが……そういう事もあるモンかの?」
「殿! このような話を真に受けてはなりませぬ! きっと我々を誑かすための策略」
連れてこられた彼らの自称『城』の広間で私は壊れた機械のように、ここに連れて来られるまでの経緯を説明した。だが、海賊風のおっさんと私をここに連行した小〇伸也風のおっさんには全く信じてもらえない上にこちらの話が全く通じない。
この『城』とかさっき見た家々は映画のセットかなんかかと思ったのだが、どうも本当にその時代に来たとしか思えないぐらい現代社会では普通にあるはずの物を彼らは知らないのだ。ゲームと言っても通じない、テレビと言っても通じない……テレビもねぇ、ラジオもねぇ♪で始まる曲を大昔の懐メロ特集で聴いた事があるが、21世紀においてはどんなド田舎だとしてもテレビも無い所なんてある筈がない。
ただ、一つだけ通じたワードがあった。
「しかし貴様の言っていたうい……何とか氏真というのは、我らが御屋形様の御子息で当家の寿四郎さまが仕えておる今川家の御曹司殿と同じ名前ではないか。貴様が何故その名前を知っている!?」
そう、この連れてこられた城の主・はま家は駿河の大名・今川家の支配下にある国衆で、その4男の寿四郎さまは氏真公の近習として仕えているのだ。
はま寿四郎と言ったら私からしたらずっと昔、小学生時代に歴史の授業で『今川家の国衆からスタートして大名に上り詰め、戦国時代を終わらせた人物』として歴史上で最も尊敬している人物の一人だ。この現象をタイムスリップと言うのかは分からないが、そんな御方の実家に飛ばされたのは間違いなく幸運と言って良い。
元の時代に帰る方法もおいおい探さなくてはいけないが、それと並行して、折角来たこの時代で歴史上の偉人が偉業を成し遂げるのを見届けたい。そんな期待に胸が膨らんでついつい、こんな事を口走ってしまったのだ。
「わ、拙者は古今東西の色々なモノを見聞きし、よく知っておりまする。我が知恵を是非とも、このはま家のお役に立てていただきたく。手始めに、今川家重臣の名を全て言い当ててみせましょう」
そう言ってこの時代で今川家の主だった武将の名や特徴・二つ名をスラスラと読み上げる。その場に居る者達は驚いているが何のことは無い、ウイ氏で駿河を開始地域に選んだ時、出てくる初期武将達だから使い込み過ぎて紹介分から台詞に至るまで完璧に暗記してしまっているだけなのだ。まあ、バレるハズがないのだが。
調子に乗って三河・徳川に尾張・織田の初期武将(課金ダウンロードで入手可)も読み上げ終わる頃には、その場にいた全員が優れた者を賞賛するような表情に変わり、私はこうして後世での天下人・はま家の配下に入る事が出来たのだ。
後半へ続くよ!




