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第105話 弟の提案と新たな旅立ち

ここまでのあら寿司

 信玄と輝虎の息子に転生した前世での

弟・景信がチャラすぎて困る兄。

どの世界でも兄と弟ってそんな感じよね。


「それで、具体的な話なんだけどさぁ」


 そう言うが早いか、何処からか取り出した馬鹿デカい日本地図を広げる弟の義仁、改め景信かげのぶ


 そこには、現在の各大名の版図が事細かに記されていた。が、何故か俺の領土だけ『長尾』とか『北条』じゃなく『は』と真四角の札が置かれている。やめて! それじゃまるでどっかの寿司チェーンの看板みたいじゃないの。


 

「俺はゲームとかで『信長の今後の動向』が分かってるからさぁ、史実通りなら対策打てるんだけど」


 そう言って将棋の駒のようにバチンと『は』を裏返して『織田』を甲斐に『徳川』を駿河まで持ってくる。確かに俺の拙い歴史知識でもそんな感じで信長は領土拡大してたハズだったな。

 

「ただ……元々は無いハズの大名家だからさ、兄貴んトコは。そこが大きなパラドックスを生んじゃってるよね」


 といって札を元の位置に戻す景信。そうなのだ。史実では今川家は滅亡して、武田も越後上杉や北条と三つ巴の戦いをしているうちに織田信長が勢力を伸ばしてきて吸収される運命だったので、織田がこの段階で東海・中日本エリアを掌握できていない時点でかなーり史実が変わってしまっている……のかもしれない。


「でもまぁ2つだけ言えるとしたら、織田信長ってのは史実で知ってる通り『泣かぬなら殺してしまえホトトギス』を地でいく感じだから史実通りにどんどん敵は作っていくだろうし、そんな奴と兄貴はこれから先も味方同士には多分ならないって事よね」


 

 一瞬、小谷城を何の躊躇もなく城下ごと焼き討ちにして、浅井長政あさいながまさを殺しながら不気味に笑っていた信長の事を思い出す。当たり前だ! 誰があんな残虐非道を絵に描いたような男と手を組めるもんか。


「当り前だろ、俺が目指すのは天下泰平だ。あんな暴力でねじ伏せてこそ至高、みたいな奴と協力なんて出来るか! 」

「そう、そこなんだよねぇ♪」


 予想通りだったであろう俺の反応に将棋の持ち駒よろしく、新たな札をバチンバチンと置いていく景信。そこには『本願寺』とか『松永久秀』『荒木村重』と書かれている。


 

「では、歴史が得意ではない兄貴に問題です。この盤面に出ている札の中で、織田信長との敵対同盟を組むのに最も適した相手とは?」

「正解はっ! 明智光秀!! 」


 年末に見かけるどっかの餅メーカーのCM並みに条件反射で答える。そりゃもちろん本能寺の変を起こすわけだしこの人が居なきゃ始まらないよね。この時代に早押しのピンポーンって鳴るヤツが無いのが惜しいところだ。


「ぶっぶ~残念! 明智光秀が裏切るの待ってたら、史実通りにいってもあと7年は必要よ?ただでさえ兄貴が信長の上洛とか邪魔するから史実イベントの発生遅れてんのに。下手したら10年ぐらいアイツのさばらせておくワケ?」


 ぐぬぬ、ハズレなのか。てか史実イベントってゲームみたいに言ってくれるなよ。それじゃまるで……長政が殺されたのもイベントで決まってたみたいじゃねえか。


「あ、ゴメン。なんか言い方間違えたか……俺はまだこの世界があんまリアルに感じてないからさ。すまんかった」

「お、おう。そこは気を付けてくれ」

「じゃあ言い方を変えるけど……史実での話、信長と敵対した足利義昭あしかがよしあきが都から追い出されて頼ることになるのは毛利家なんだわ。それが元で毛利は織田との同盟を解消して播磨・美作(はりま・みまさか)あたりで戦になってくる」


 そう言って景信が指差したのは現代では兵庫県の瀬戸内海側、この時代で言う播磨国だ。確かに前世の俺でも知ってるような有名武将は居らず『赤松あかまつ』『別所べっしょ』『浦上うらがみ』といったよう知らん苗字が並んでいた。1つだけ知っていたのは『宇喜田直家うきたなおいえ』ぐらいか。この人は何をしたのかよく覚えてないけど、確か卑怯者とか裏切り者で有名よね。


「そんなわけで兄貴には今のうちから毛利に行って、信長と対立した時の為に同盟を取り付けて来てもらいたいんだよね。それと今後、信長は近畿からどんどん西側の小領主を倒して進んでくるはずだから、出来るならそれも早めに食い止めてもらうようにお願いできると良いなぁ。あとは……」


 さらに地図の端、南側を見ながらうーん、と考えるような仕草をする弟。そんな姿までメチャクチャ美男子なのが際立つんだが。ちょっとオラにイケメン度を分けてくれ! って言いたくなるな。


「これから四国は長宗我部ちょうそかべ・九州では島津しまづが段々と勢力を伸ばしてくるはずだから、毛利がその後ろ盾をして後々、毛利を中心とした西側大連合を作ってもらうようになると良いかな」

「いや、いくらなんでも家臣でも上司でもないヤツがそんな事を進言して、未来もまだ分からんのに『はいそうですか』ってなるか?」


 むしろ逆にそうなったらびっくりだ。現時点(1575年)では島津はまだ薩摩・大隅(さつま・おおすみ)の九州でも南側、現代だと鹿児島県の分くらいしか支配できていないし、長宗我部に至っては今年に入ってやっと土佐(現代の高知県)一国を平定したぐらいだ。これらの小勢力がそれぞれ九州・四国を統一するなんて夢にも思わないだろう。


 まあ『尾張のうつけ』と呼ばれた変わり者が天下人になるのも、破竹の勢いで日本全土を制する勢いだったそれがイキナリ殺されて天下人に成れないのも誰も想像できなかったと思うが。


「大丈夫。もう既に向こうには連絡を取り合ってる奴が1人、いるんだ。兄貴もよぉーく知ってる奴だよ」

「誰だソレ!? ちなみになんで俺が行かきゃなんだ?お前が行けば早ぇじゃねえか」

「まあ、会えばわかるよ。俺は兄貴が不在の間、このスーパーな戦略脳で織田・徳川の動向を注視して甲斐・信濃に攻め入るのを未然に防ぐ役割があるからさ。それに俺みたいな奴が他国に行ったら目立って仕方ないと思うし」


 自信満々だなオイ! それってつまり俺がモブ顔でオーラゼロだから他国に行っても大名だってバレないって言ってるのと同意義なんだが……まあ、事実ではあるから仕方がない。



 こうして、俺は現代の中国地方・山陰山陽道8か国を束ねる西の大国・毛利家へと向かう事になった。


 

 そうそう、それから弟は会見が終わる間際にもう1つ、とんでもない事を報告してきやがったんだ。

 

「あぁーそれともう1つ、兄貴に在ったら言わなきゃと思ってたんだ!


 兄貴の軍師で軍監ぐんかんって呼んでる奴居ただろ?アイツ、転生者だぜ。だってアイツ、俺が赤ん坊だと思って俺の前でスマホ見てたことあったからさ」

弟からもたらされたまさかの真実!

ついに次回、あの男の謎が開かされる!?

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