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海鳥  作者: 雲音︎︎☁︎︎*.
6/10

ろく「いきをすること」

【memoryー追憶ー】1章「海鳥」


口下手だがずばぬけて頭がよい“アオイ”

笑顔で過ごすがどこか寂しげな“リョウ”

日々を平和にくらす幸せな子“ヒオリ”

キレ症ですぐ手を出す“ケンセイ”


平和だった。“私達”みんな笑顔で、面白いことが毎日あった。

いつからこうなってしまったのだろう。

いつから私達は歪んでしまったのだろう。

…あぁ、元からだったっけ。


------------------‐


毎日を平和に暮らしていたヒオリは、ある時親友のアオイを喪う。しかし幽霊となったアオイが現れる。彼女の『心残り』をなくし、生きる楽しさを伝える戦いの夏休みが始まったー。



〈1部残酷、流血表現等があります。人が死んでます。〉


巡り巡るものがたり。

親友を失った少女の、ものがたり。


その後も私たちは次々と色々な所へ行って、話して、アオイの心残りをなくしていった。

そんなこんなしている間に夏休みも後半にはいり、私は課題や塾におわれることとなる。

塾の日数も増えたし夏期講習だし進路もきめないとだし…。

とにかくてんやわんやの今年の夏休みはあっという間に過ぎてしまいそうだ。

今日は1週間ぶりの休みで、午前が空いていたためアオイが行きたいといっていた母校…小学校にいった。

小学生の笑い声をbgmにして私達も数時間ほど遊具などで遊んでいた。あ、あと先生にも会いに行ったよ。でも、もう卒業してから3年程たつ。違う学校に行ってしまった元担任も多くいた。

そんなこんなで母校を嬉しみ今は帰り道である。

「いやー結構楽しいもんだね!ひっさしぶりに小学校行ったー。」

そうだなあとアオイも相槌をうつ。

あれだけ毎日通っていた小学校も、卒業してからは自然と行かなくなったからなあ。

毎日アオイと一緒に行って帰って……あ、そこは中学校でも変わんないかっ。

「アオイ、次はなに?そろそろ“心残り”も最後かなぁ。」

「んー。…そうだね。」

彼女は曖昧な返事をした。

その時、私はふと思いつく。

「あっ、そうだアオイ!次リョウの家いかない?ほら2人さ…」

「いかない!!!」

アオイは拳を握りしめ、声をあげる。


そして、もう一度ハッキリと言った。


「いかない。」


アオイの顔が見えない。見れない。

心臓の鼓動が、早くなる。

「ねぇ…アオイ、一体何があったの?」

私はずっと胸の内にひめていたことを口にしてしまった。気づいた時にはもう遅く、最早私の口は止まらない。

「あのこと、教えてよ。どうして何も言ってくれなかったの。2人が消えたあの日、どこに行ってどうなったの!??

なんで、何でリョウは、帰ってこなかったの!??」


……


「何も無かったよ。」

表情が消えうせたその顔からは何も感じられない。怒りも、悔しさも、辛さも。

「何も無かったんだ。そうだろう?」

その言葉は誰に言っているのか。

疑問形であるにも関わらず目は私に向いていないし、問いかけているようにも思えない。

「私とリョウはどこかへ行って、リョウはいなくなった。そして私は、死んだ。ただそれだけ。」

「っその間に………ッ。」

そこまで言いかけて口を噤む。

無駄だと分かってしまったからだ。

アオイとリョウに何があったのか、何故死んだかなんて私は知ることが出来ない。だって、本人は言う気がない。

手が細かく震え、頭痛がした。

白い静かな空間に一人ぼっちでいる錯覚に陥る。しかし、そこに蒼色がまざる。

蒼…?

「私がここに残った1番の目的、…心残りは、ヒオリが私達をおって死なないようにすること。

それは、自分の経験を経ていっている。」

アオイが遠くを見据える。

「私も、最初は死なないつもりだったしヒオリと同じだった。けど死んだ。…ヒオリには、死んで欲しくない。あなたには、これからも幸せな人生を送ってほしい。」

段々と元の世界へと自分が戻っていった。

ああ、私たちは今この世界で、地球で存在していて、普通に会話をしている。

なのに、あなたはもう死んでいるのね。

「でも…どうしたらいいのか分かんない。結局ヒオリの優しさに甘えてしまっている。私のしたかった事が、叶えられていく。」

前にたつ彼女はは酷く人間らしいとぼんやり思った。完璧人間だと思っていたアオイも、私と同じようなことを悩んでいた。

「生かすことって、殺すよりむずかしいよ。私もアオイに生き甲斐、どうやって教えるかずっと悩んでる。」

私はアオイの手を握った。

勿論不透明な肌には触れられない。

「じゃあ自由でいいよ。私たち好きなことしよう。誰よりも気ままに生きよう。アオイ。したいことを言って。アオイの“心残り”をなくすことが、私の生につながるから。」

彼女は目を見開き、息をのんだ。

…そして、言う。

「…っ。…これが最後の“心残り”。果たせなかった約束。私をあの海に連れて行って。」


「うん。任せて!」


夜。窓辺に座って月を眺めていたアオイに私話しかけた。何だか今日は眠れなかったのだ。


「ねぇアオイ。幽霊は眠らなくていいの?」


「んー…?そうだなー。この体になってからは1度も寝てないな。」


「へぇ。幽体も案外便利だね。眠らなくていいなんて。」


「ヒオリは起きていたいの?」


「うーん…起きたい、というか、やりたい事が沢山ありすぎて、時間が足りないの。でも眠くなっちゃうから徹夜とかできないんだよねー。」


「あーたしかに。そう考えると便利かも。だけど、私はちょっと怖いんだよね。いつか、ずっと夜のままになってしまいそうで。」


「ずっと夜だったら花火し放題イルミネーション見放題電気代かかりまくりだね。」


「夢あるところから急に現実になるね。」

あはは、と笑われた。いいじゃん好きなんだもん両方。


「…ヒオリはさ、私が死んだって聞いた時どう思った?悲しかった?」


「そりゃ悲しかったよ。当たり前じゃん。」



「そっか。…さ、ヒトは寝る時間だ寝た寝た。」


「あっちょ何よ急に…。もう…おやすみ。」


その日は綺麗な三日月だった。

私は窓から差し込む月明かりに目を細めていたが、そのうち瞼は閉じられた。

夢の羊を抱えて私は。



         ✲


ぐずっ、ぐす、ひっく、うぐっ

小さな女の子は押し殺すように泣いていた。

大泣きする訳ではなく、ひっそりと泣いていた。そんな子にもう1人の女の子が近づく。

「?ヒオリちゃん、どうしたの?」

泣いていた子は一瞬ピクっとして、赤くなった顔を上げる。

「アオイちゃん…」


『アオイ』は『ヒオリ』の隣に座った。

「みんながね、ヒオのこと変だって言うの。おかしいっていうの。」

「…だから泣いてるの?」

「うん。ねえ、ヒオだけちがうのかな。変かな。ふつうに、なれないのかな。」

一呼吸も待たずにアオイは言葉を発した。

「そんなことないよ!」

「だって、私も変だから。ばけものだから。ヒオリちゃんだけじゃないよ。それに、ヒオリちゃんは全然おかしくなんかないよ。大丈夫。」

そうにっこり笑う。

「アオイちゃん…。」

私の涙はすっかりどこかへ行って、笑みが零れる。

「それこそ違うよ。アオイちゃんはばけものじゃない。だって、こんなにやさしいんだももん。」

アオイは返事をしなかった。



そうだ。

アオイはどこまでもやさしく

    どこまでも思いやりがあって


誰よりも自分の事が嫌いだった。


「私が死んだ時、悲しかった?」


かなしいよ。

つらい。

身体が弾けて散り散りになってしまうくらい、痛くて苦しい。

でも、だからこそ私は笑う。

どれだけ辛いことがあっても私は生きなければならないから。

生きるために笑った方が元気が出るから。

今まで無意識でやっていたけど、アオイの死をきっかけに、それはもしかしたら変なんじゃないかと思った。けど、ケンセイが『普通』だと言ってくれた。

私は、生きるために笑う。

悲しみを克服する。

ああ、なんだこんな簡単な方法があったんだ。生きるって()()()()()()()()()

明日、アオイに私の考えを伝えよう。そして、私はちゃんと生きれることも。

なにより、死ぬのは怖い。

痛いのは怖い。

私には大切なものがある。

私が死んだら悲しむ家族や友達がいる。

だから死ぬ訳には行かない。


死にたくはないの。



ピピピピピッ


いつものアラームで目覚めた。外はもう明るくなっていて、微かに鳥の声が聞こえる。

何か、夢を見た気がする…。

夢の内容はあまり思い出せないが、目覚めた私の頭に強くあったのは『生きたい』という気持ちだった。

とにかく、私は生きるんだ。

そしてこの気持ちをアオイに伝えなきゃ。

「アオイー、いる?」

自分しかいない一人部屋に、声をかける。

すると空間が歪み、彼女が現れた。

「あ、おはよー早いね。まだ9時だよ?いつも12時くらいまで寝てるのに。」

いや最近はそんなグースカ寝てないし!それに私だって勉強があるもん!!

「あのさ、言ってた海のことなんだけど、今日行かない?」

アオイは驚いたようにいう。

「えっ、昨日の今日で?勉強は?」

「いーのいーの、ほら、もうすぐお盆だからもしかしたら他のゆうれーさんたちと会えるかもよ?ー」

すこしきょとん、とした顔をしてぷッと笑う。

「いやお盆だからってそんなホイホイ会えないよ。なにそれ。」

朝から私の部屋で笑い声が溢れる。

でもきっと、周りからしたら私の声しか聞こえていないのだろう。

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