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海鳥  作者: 雲音︎︎☁︎︎*.
1/10

いちわ 「あなたのいないあさ」

【memoryー追憶ー】


・対象一

 凍死


・対象二

 溺死


・対象三

 頭部破壊


・対象四

 生存


record by MNE.



第一章

「海鳥」


ぜろ 「あなたのいないあさ」


6月 12日 朝

朝の光がカーテンの隙間から差している。

その微かな光で目を覚ました。

さっき眠ったばかりだと思っていたのに、もう朝か。

うーーんせっかくの休みだしまだ布団からでたくなーい…

と思うが相反して私の腹はぐぅと小さく音を鳴らした。

くそぅ、私の中で眠気と空腹が戦ってやがる!

空腹が勝てば眠気がまとわりつく。しかし眠気が勝てば私の腹の音はどんどん大きくなるだろう。

どっちが勝利しても辛いことに変わりはない。

初めからバッドエンドじゃん!!

そんな下らないことを考え、結局布団から出る。

1人用の私のベットは6年生の時に買ってもらったもので、まだ3年しか使っていない。全然余裕で使えるだろう。

『8:12』と表示された時計をチラっと見てから私は部屋を出た。

「おはよ〜」

「おはよ。ご飯できてるよ」

え、まじ?やった!朝降りてきたらご飯があるだなんて何て幸せ。クゥ~いい一日になりそうだぜ!

「どうせ上で二度寝するか降りるかジタバタしてたでしょ」

エスパーかッッなんで分かるんだよ!!!

「そそそそんなことなぃよォ、ねっ」

私は汗だらだらで席についていただきます、とした。

因みにメニューはこんがりと焼いたトーストと野菜スープ、目玉焼きにフルーツはアメリカンチェリーと中々に豪華だった。

へへ、今日はいい日になりそう!

うまうまとご飯をほおばっている時、電話の音が遠くでなる。母がとりにいった。

その電話は今後の私の運命を決定的に変えるものだった…なんて、その時の私はまだ知らない。


「“ヒオリ”!大変よ、“アオイ”ちゃんが…」


「…え。」


ザク。トーストを齧った音と母の告げた言葉が重なる。


「アオイが…死んだ?」


いち「おもいで」


1年前 6月26日 朝


「ヒオリ!」

少しくぐもった低めの声が私の名前を呼んだ。

窓の外をぼーっと見ていた私はさっと現実に戻る。

「んっ?なになにどったの?アオイ。」

「あー、いや、なんか上の空だったから生きてるかなーって。」

ちょ、生きてるかな?ってなによっ!

「勝手に殺すなよー!」

「はは、ごめんごめん。…にしても、元気ない?腹減ったか?1時間目も始まってないけど。」

「いや私そんな食いしん坊じゃないから!!このヒオリさんにもきょうしゅう…郷愁?に、浸ることくらいありますよ!」

へ〜とにやにやとアオイは見てくる。

絶対私のこと阿呆だと思ってる顔だこれ。まったく、これだから頭良い奴は!!

そんなこんなしてる間に、チャイムが鳴り、がやがやしていた教室が次第に静まり始める。

アオイもまた、と自分の席へ戻って行った。

…っていっても私の前の席なんだけどね。

彼女の名前は龍治 葵(りゅうじ あおい)。私の幼なじみでありクラスメイト。14歳。やや手入れ不足の真っ黒の髪は背中近くまであり、日に焼けていない白い肌がそれを際立たせている。

引きこもりで帰宅部、のわりには走るのが早くて、ある陸上部の人が「解せぬ」と言う程だ。アオイむっかしから早かったもんなぁ、。

身長高いし足ながいからかな。低いわたしにとってはうらやましい…。

アオイは頭良くて身長も高いから男女問わず密かな人気がある。(と思う)私とは全然違う。

どっちかというと私はいじられキャラみたいな?

あ、でも人前に出るのは好きだからよく実行委員みたいなのはやる。

そういえば、夏休みが終わったら体育祭だなあ。今年も体育祭実行委員に立候補しよっかなぁ。

去年はまだ1年生で何かと大変だったしてんやわんやだったけど慣れた今年ならきっと大活躍できちゃうねっ。

ま、その前に夏休みだ夏休み。来年は受験だからね。楽しめるのは今年だけだ、はっちゃけるぞー!

プールでしょ、かき氷でしょ、あと海、夏祭り、それとスイカ!!

宿題?そんなもん知らない知らない

せっかくの中学生、青春しなきゃ損だぜ。

(毎年後半は宿題に追われているなんてことはないよ!!)


そして私はもう一度窓の外に目を向けた。

(いい天気…平和だな。)


バサバサッ

どこかで鳥が飛ぶ羽音を聞いた。


        ✲

昼休み。


カッカッカッ、

「あ、いた。」

階段を登りきると、そこには彼の姿があった。

「おはよ!」

「…はよ。」


短くぶっきらぼうに返事を返した銀髪の彼―久慈 賢清(くじ けんせい)

得意なことは喧嘩。銀髪にピアス、授業には参加せず、立ち入り禁止の屋上付近の階段に常に住み着いている。

つまり、所謂『ヤンキー』である。

いやぁ昔はもっとツンケンしてたよねぇ。皆怖がってたし。ま、私は本物のヤンキーだ!と感動してたけど。


「つーか、お前、ここ立ち入り禁止なの分かってるよな?」

「うん。」

「…意外と真面目じゃねーよな。お前。」

「あーうん。そうだよ。クソ真面目なのはアオイ。私わりとルール破る。」

「笑って言うことかよ。」

そんな事を言うので寧ろ大笑いしてやった。

最初は話しても無視決め込まれてたけど、色々あって、今こうして話せるくらいの関係になれた。

すっごい色々あったんだよ!まじで。

ちなみに、何ヶ月もの無視を乗り越え、

やっとできたはじめての会話が以下である。


「綺麗な銀髪だね。」

「目腐ってんの?」


…酷い。まぁでも大きな進歩だったよね。

最近では苗字でだけど名前読んでくれるくらいになったし。


「いつも謎なんだけどさ、なんで毎日毎日ここ来るんだよ。別に面白いもんもないし、

退屈だろ?」

「退屈じゃないよ!!!!」

私は彼に大声で言った。

「私は、ここで、ケンセイと話すの、楽しいの!」

彼は少し拍子抜けしたように目を開いた。だけどすぐにふいっ、と向こうを向いて顔を隠した。

「あっそ。好きにすれば。」


「…デレてる?」

「照れてねぇよ!!!」

目を釣りあげてケンセイは怒鳴った。

その反応は照れなのか怒りなのかは知らないけど。

なんだ可愛いとこあんじゃん、と私はまた新たな発見をした。


         ✲


バレないようにこっそり屋上階段をおり、教室へ向かおうとした時。

「ヒオリ?」

背後からの人の声にビクッと肩を震わせ、振り返る。やっば怒られるか…?

だが、そこに居たのは見知った顔だった。

白い肌に少し長い真っ黒の髪、細身ですらりとした背丈の『依本 涼(よりもと りょう)』だ。

「!なんだリョウか!びっくりした…」

「そんなにビックリしなくても…。…あ、もしかしてまたあそこ行ってた?」

アオイとリョウは私がケンセイに会いに屋上によく行っていることを知っている。

まぁなんせこの3人みんなケンセイの友達☆だもんね。

本人は否定しそう…。

「まぁバレないようにね。今来たのが僕じゃ無かったら危なかったよ〜」

「…リョウも意外とルール破るよね。」

「ん?」

「え、天然…?…あーいや、なんでもないよ。それより早くアオイのところいってやりなよ。ひとりで寂しがってると思うからさ。」

ぐいぐいとリョウの背中を押す。

「あー確かに。じゃ急いでいくよ。ヒオリは?」

「私は部活休むこと先生に言わなきゃいけないから職員室行ってくる!」

そっか、とリョウが笑い、私は職員室のある反対方向へと走り出した。

私は今日塾の体験があるからね。

実は私、少し、いや結構頭悪くて成績がアウトなんだよね…。

(前回のテスト、五教科の合計が200点とちよっとだった…トホホ)

もうすぐ中3だしなぁ。

…受験か…実感湧かないや。

1年後には部活は引退だし、皆とも全然遊べなくなっちゃうし、勉強も大変だし。

考えたら嫌んなるけど皆通る道だ。私も頑張ろう!

その先には高校生活というキラキラしたものが待っているはず!

それを楽しみに勉強するんだーい!

まぁ、明日からね!


私は幸せ者だ。学校が楽しいし、学校以外でも毎日が楽しい。寝る時にいつも思うことは、はやく夜が明けないかな、ということ。だって早くみんなに会いたいもん。

アオイとリョウとケンセイという親友がいて、クラスのみんなも良い人ばかり。お父さん、お母さん、弟と毎日美味しいご飯、暖かい布団があって、ぐっすり眠れる。

幸せ以外の何物でもない。


八色陽織(やいろ ひおり)。歳はまだ誕生日が来てないから13歳。好きなことは遊ぶこと人前に出ること。

嫌いなことは勉強。(いや、苦手なことか…)

髪はいつもお団子にまとめ、私のてっぺんを飾っている。ファッションにも興味がありよく買い物にもいきます!

どこにでもいる、幸せな女子中学生。



幸せだった中学生。


          *


「ヒオリ!アオイちゃんが……」


『何アレやばwうち初めて見たわ。

ご愁傷さまです…。

なになに、自殺?』


異音。


時計の針音。

「リョウとアオイがいなくなった…!?」


崩れる羽。

「ヒオリ、生きて。」








朝の光。


「おはよう。×××。」

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