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【リメイク版】乙女ゲームのように人生一度でいいからモテてみたいと思いながら死んでしまった私が、異世界で義兄の王子から愛されて悶絶死しそうになる

作者: 夜炎 伯空

 人生一度でいいからモテてみたかった。

 こんな私にもいつか恋人が出来ると信じていた。


 でも、それは叶うことなく、私は死んでしまった。


 惚れやすい私は今までにも好きな人はたくさんいた。

 だけど、勇気を出すことができなく、誰にも告白したことはなかった。


 こんなことになるなら、恐れずに告白しておけばよかった。

 しかし、今更後悔しても仕方がない。


 もう、私は生きていないのだから。


 それにしても、私は今どこにいるんだろう。

 死んでしまったら何もかも無くなってしまうんじゃないの?


 それなのに、考えるということは出来ている。

 もしかして死後の世界があるとか?


「その疑問にお答えします」


「うわっ!」


 急に誰かに話しかけられた。


「だ、誰ですか?!」


「僕は異世界の神だよ」


「あ、ショタ」


 声をかけてくれたのは、見た目が小柄な男の子だった。


「お姉さん。異世界や神とかじゃなくて、そこに注目するんだ……」


 異世界の神と名乗る男の子にあきれられた。


「はは、生前の癖で」


 私は苦笑いした。


「まあいいや、さっきの答えだけど、ここはお姉さんがいた世界と異世界を結ぶ異空間なんだ」


「え、それって、どういうこと?」


「お姉さんの強い後悔の念が、お姉さんをここに導いたみたい」


 私の後悔って、そんなに強いものだったの?

 ただ、モテたかったというだけなのだが……


 そう思うとなんだか急に恥ずかしくなってきた。


「それで急な話なんだけど、異世界転生という形でなら生き返ることが出来るって言われたら、お姉さんはどうしますか?」


「そ、そんなことが出来るんですか?!」


 正直、生き返られるなら手段は何でもいい。


「うん、こっちの世界でも少し前に亡くなった女の子がいて、家族から助けて欲しいとお願いされていたんだ。でも、亡くなった子を生き返らすことは出来ないから、どうしようかと思っていたところに、ちょうど君が現れたから、転生という形で生き返らせられないかと思って」


「つまり、私が転生したら、その家族の願いを叶えることが出来ると」


「まあ、簡単に言うとそういうことかな。その子本人が生き返るわけではないから、それが家族にとって本当によいことなのかは分からないけどね……」


 それはそうだ。

 生き返ったとしても、それは本人ではない。


 でも。


「私、転生します」


 私は、ショタ。

 じゃなかった、神様にそう告げた。


 もちろん、私が生き返りたいという思いもあるけど。

 私が亡くなる時、家族は私のために泣いてくれていた。


 こんな私が死んでも、誰も悲しむ人なんていないと思っていたのに。


 私でさえ、これだけ家族を悲しませてしまった。

 それなら、必死に助けて欲しいと神様にお願いした家族は、今どれくらいの悲しみに打ちひしがれているのか。


 想像すら難しい。


 私は自分の家族のために生きることは出来なかった。

 その分、その家族の悲しみを少しでも和らげられたらと思う。


 私が転生した結果どうなるかなんて誰にも分からないけど、自分の家族に尽くせなかった分、新しい家族のためには精一杯尽くしたいとは思うから。


「君ならそう言ってくれると思っていたよ」


 神様は笑顔でそう言った。


 へへ、ショタの笑顔かわいい。


 あ、いかん、いかん、欲望が駄々洩れだ。

 これから転生するんだから、気を引き締めないと。


「それで、新しい家族についてなんだけど。実はその家族は王族なんだ」


「王族? それって、海外の昔話に出てくるような王様とかのイメージでいいのかな?」


 私に王族らしい立ち振る舞いが出来るとは思えないのだが。


「君がどんなイメージをしているのか分からないけど、たぶん、そんな感じかと。あとは家族構成なんだけど、王様と王妃が君の両親であとは義理の兄がいるんだ」


「義理の兄? そのお兄さんと私はどっちが本当の家族なの?」


「そう、そこが重要なんだけど、転生する予定の女の子は、君の本当の家族ではないんだ」


「え、そうなの?」


 必死に助けたいと思われていた子だから、本当の家族だと思っていた。


「女の子が生まれなかったから、教会の孤児を引き取ったみたい」


「なるほど」


 自分の本当の家族でもないのに、神様に必死に助けて欲しいと願っていたのなら、きっと人の良い王族なのだろう。

 それに、元が孤児だったのであれば、王族らしい立ち振る舞いが多少出来なかったとしても許してもらえそうな気はする。


 少し安心した。

 というか、王子とか見てるだけで尊い。

 

 妄想が止まらなさそうだ。


「それと、次の話で最後なんだけど」


「あ、まだあるんですか?」


 つい、頭の中で王子のこと妄想してしまっていたところ、現実に戻された。


「これは君にとっていい話だよ」


「私にとって?」


「そう、そもそも君のこの世への未練は、モテたかったという後悔からでしょ」


「ま、まあ、改めて言われると恥ずかしい限りですが……」


 家族の悲しみを和らげたいという思いに偽りはないが、モテたかったというのも本音だ。


「その王子は、亡くなった女の子に淡い恋心を抱いていたみたいなんだよね」


「はっ?」


 何それ?


 義兄の王子と一緒に過ごすというだけで、もう既にお腹一杯なのに。

 転生したら、その王子から好意を寄せられるってこと?


 無理。

 たぶん、悶絶死する。


「それじゃあ、伝えることは伝えたから、新しい人生も頑張ってね」


 神様はそう言って、私に手を振っている。


 え、もう転生するの?


「ちょっ、ちょっと待って、まだ心の準備が……」


 そう言う私の声は空間の歪みによってかき消された。


 ◇


「ユフィア!?」


 目を開くと王子が涙を流していた。

 

 どうしよう、王子が私の目の前で泣いてるなんて。

 尊すぎる。


 転生して数秒も経たない内に、私は悶絶死もんぜつししそうになっていた。

 一瞬、意識が遠のきそうになる。


 ダメだダメだ。

 これから一緒に生活してくんだから、これくらいで意識を失ってはいけない。


 何とかそう自分に言い聞かせながら、意識をたもった。


「ユフィア、生きていてくれて、ありがとう……」


 うごっ!


 ま、まぶしすぎる。

 眩しすぎて、直視ちょくしできないっす。

 

 この人がショタ神様が言っていた義兄の王子だよね。


『そうだよ、ユフィア』


 え?

 ショタ神様がどうしてここに?


『ユフィアにしか見えてないんだけどね。転生直後は分からないことがたくさんあると思うから、最初だけサポートするよ。って、あんまりショタショタ言わないで欲しいな。僕にも、シヨルダっていう名前がちゃんとあるんだから』


 それって、略したらショタ。


『それは言わないで……』

 

 シヨルダが涙目になっていたので、それ以上は言わないことにした。 

 それはそうと、さっきから心で会話してるような。


『ユフィアだけしか見えていないのに、声に出して会話をしないといけなかったら、変な人に思われるでしょ?』


 確かに。


『それで、この黒髪黒目の王子が義兄のロドリアだよ』


 シヨルダが名前を教えてくれた。

 兄妹なのに生を知らなかったらおかしいもんね。


「どうした、まだ苦しいのか?」


 シヨルダと心で会話していただけなのだが、私が無言になっていたからだろう。

 ロドリアが心配してくれた。


「あ、いえ、大丈夫です」


「そうか、それなら良かった」


 や、優しい。

 思わず顔がニヤけてしまう。

 

 こんな人が現実にいるなんて。

 まあ、ここは異世界なんだけど。


 でも、ロドリアが好意を寄せているのは、私じゃなくてユフィアなんだよね。

 勘違いしないようにしないと。


「ロドリア、ありがとうございます。おかげで元気が出ました」


 私はロドリアお兄様にお礼を言った。


 

「何かあったら、俺を頼れよ」


と言った。


 ぐぉっ!


 これは死ぬ。

 死ねる。


 シヨルダはあわい恋心と言っていたけど、これはどう考えてもガチ恋だってでしょ。

 私はユフィアじゃないから、本当の恋人にはなれないかもしれないけど。


 少しくらい、ユフィアのモテ人生を謳歌おうかさせてもらっても、罰はあたらないよね……


 ロドリアお兄様を見つめながら、私は胸中でそう呟いた。


 ◇


 コン!コン!


 私はロドリアお兄様の部屋のドアをノックした。


「どうぞ」


 ギー!


「失礼します」


「ん、ユフィアか? 体調はもう大丈夫なのか?」


 ロドリアお兄様が微笑みながら、そう言った。


「お陰様で元気になりました」


「それなら良かった。それで、今日はどうしたんだ?」


「あ、いえ、病気の間、看病をして下さっていたと従者じゅうしゃにお聞きしましたので、お礼をと思いまして」


「妹を大切に思うことは当然だろう? それにお礼を言われるほどたいしたことはしていない」


 ロドリアお兄様は素っ気なくそう言ったが、王子達は私が目覚めるまで、ずっとそばにいてくれたらしい。


「いえ、たとえそうであったとしても、お礼はさせて下さい。ロドリアお兄様、本当にありがとうございました」


「ま、まあ、元気になって良かったな」


 そう言った後、ロドリアお兄様はそっぽ向いたが、私には顔が照れていたようにも見えた。


 ツンデレ?

 ツンデレなのか?


「あれ、ロドリアお兄様、どこかに行かれるのですか?」


 よく見ると、ロドリアお兄様は身支度をしていたようだ。


「ああ、ユフィアが急病だと聞いて急いで戻って来たが、まだ国境では戦いが続いているからな」


「どうして王子である、ロドリアお兄様が戦地へ行かなければならないのですか?」


 素朴な疑問を投げかけると、


「え?」


 ロドリアお兄様が驚いた表情をした。


「あ、いや、ロドリアお兄様が戦地に行くなんて心配で……」


「国をまもるために、俺が戦地に行くのは当然と思っていたんだが。ユフィアはそう言ってくれるのだな……」


 バッ!


「え、え、えぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


 急に、ロドリアお兄様が私を抱き締めた。


「ロ、ロドリアお兄様?!」


 突然の出来事に、頭が混乱している。

 

 王子様に抱き締められるとか。

 妄想は何度もしたことはあったけど。


 これはヤバい!!

 ヤバすぎる!!


 現実にこんなことが起きるなんて。


「頭では、ユフィアは他の誰かと一緒になった方が幸せになれると思っているのだがな……」


「え?」


 ロドリアお兄様の声が小さかったため、聞き取れなかった。


「明日から、俺は戦地に行かないといけない。だから、今は少しだけ、こうさせてくれ」


「はい」


 ロドリアお兄様がそうしたいのであれば、いつまででも。



「す、すまなかった」


 ロドリアお兄様が謝ってくれているが。


「あ、いえ……」


 むしろ、ご馳走様ちそうさまでした。

 

 でも、できれば戦地になんて行ってほしくないなぁ。


「ロドリアお兄様。もし、私が戦地には行かないでほしいって言ったら、どうしますか?」


「………………」


 ロドリアお兄様が、しばらく無言で考え込んでいる。


「ユフィアにそう言ってもらえるのは、正直、嬉しい。が、俺はそれでも戦地に行くだろうな……。俺は家族とこの国を護りたい。そう思っているから」


 なんて人なのだろう。

 自分のこと以上に家族や国のことを考えている。


 こんなんれてしまうわ!!


 私は心の中で叫んだ。


「分かりました。でも、もし私にもできることがあれば、なんでも言って下さいね」


「ふ、もう十分もらったよ」


 そう言って、ロドリアお兄様は、私の頭をポンポンした。


 うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!


 頭ポンポン、キターーーーーーーーーーーーー!!

 

 今日だけで、何回悶絶したか分からないが、とにかく、幸せ死というものがあるのなら、こういうことを言うのだろうと思った。

 

 ◇


「ロドリアお兄様、もう出発されるのですね」


「ああ、戦地で多くの仲間が戦っているからな」


 できれば戦地など行って欲しくはないが、仕方がないことのなのだろう。

 それなら、せめて。


「あの、これ、急いで作った物で、申し訳ないのですが」


「これは?」


「私が作ったお守りです」


 ロドリアお兄様にアミュレットの入ったお守りを渡した。

 

「ありがとう」


 ロドリアお兄様が目を細めて微笑する。

 そして、大切そうにふところへとしまった。


 転生前の趣味がこんなところで役に立つとは。


「これは、ユフィアのためにも、死ぬわけにはいかないな」


「当たり前です! 私だけでなく、ロドリアお兄様の無事を祈っている人は大勢いるんですよ」


 私は思わず大きな声を出してしまった。

 ロドリアお兄様は少し驚いた表情をしている。


「そうか、なら、必ず戦地の状況を解決して戻って来る」


「はい。必ず戻って来てくださいね」


 ギュッ!


「ロドリアお兄様?!」


 私が悲しそうな表情をしていたからか、ロドリアお兄様が私を強く抱きしめてくれた。


「これで、少しは安心してくれたか」


 力強い。

 でも、優しい声。


「どうか、ご無事で」


 王子だからだとか、そんなのは関係なく、私の大切な人として私は心からそう願った。


 ◇


「あれ? 何だか頭がクラクラする」


 ガンッ!


 今日はあまり体調が優れなかったのだが、無理して王宮の掃除をしていたら、ドアに頭をぶつけてしまった。


「ユフィア王女様?!」


「あ、大丈夫です」


 一緒に掃除をしていたメイドのミラリナが、心配して身体を支えてくれた。

 

「大丈夫には見えませんよ、ん? ユフィア王女様、身体がものすごく熱くなっていますよ!!」

 

「そうなの?」


 言われてみれば、身体が熱い気もする。


「直ぐに、お部屋にお連れします!!」


 ガバッ!


「え!?」


 ミラリナがいきなり私をお姫様抱っこした。


 タッタッタッ!


 そして、そのまま駆け出して、私の部屋へと向かった。


 これは王子様がしてくれることじゃないの。

 初めてのお姫様抱っこを、同性のメイドにされてしまった。



「これは高熱が出やすい風邪ですね」


 部屋のベッドでしばらく休んでいると、宮廷医師が診察をしてくれた。


 風邪で高熱になっていたのか。

 通りで頭がクラクラして、ブルッと寒気もするわけだ。


 氷枕で首の動脈を冷やしているので、体温は下がると思うけど。

 

「ふぁーあ」


 処方された薬の影響もあり、眠たくなってきた。

 私は眠気に抗うことなく、そのまま眠りについた。


 

「だいぶ、よくなってきたけど、まだ身体は重いかな」


 丸一日眠っていたからか、風邪の症状はだいぶ収まっていたが、まだ身体は思うように動かなかった。

 何もできずに寝ているだけだと、広い部屋がいつも以上に広く感じられる。


「そういえば、一人暮らしで風邪をひいた時も、こんな風に一人で寝込んでいたなぁ」


 転生前のことを思い出し、寂しさが込み上げてきた。


「寂しい」


 そう口にした矢先。


 カチャ!


「え?」


「はぁはぁ、ユフィア」


 静かにドアが開いたと思ったら、ロドリアお兄様が息を切らしながら部屋に入って来た。


 どうしてロドリアお兄様がここに?

 今は戦地にいるはずでは?


「ロドリアお兄様がどうしてここに?」


「ユフィアが高熱を出したと聞いて……」


 ロドリアお兄様が私のことを心配してくれている。


 うぐっ!


 いつもならテンションだだ上がりの展開なのに!!

 病気のこの身体が口惜しい!!

 

 あ、でも、風邪をひかなかったら、このシチュエーションはなかったのか。

 そう考えると、不思議と風邪も悪くないと思えてくる。


 ロドリアお兄様が私をじっと見つめている。

 

 最高か!!

 

 もうこのまま死んでもいいや。

 風邪をひいて辛かったはずなのに、私の心は幸せな気持ちで一杯になっていた。


 ロドリアお兄様と私はたくさんのお話をして、気がつくと私は眠りについていた。



「あー、よく寝た」


 目を覚ますと同時に、私は上半身を起こして身体を伸ばした。

 熱はすっかり下がって、身体も普通に動かせるようになっている。


「クスッ!」


 布団の上を見て、私は微笑した。

 ロドリアお兄様が腕枕をした状態で、私の方に顔を向けたまま眠っている。


「ありがとう、ロドリアお兄様」


 私はそう言って、ロドリアお兄様の頬に口づけをした。

最後まで読んでいただきありがとうございます!!

分けて書いていた短編小説を繋げてリメイクしました。


評価が多いと続きを書きたくなる気持ちになりやすいので、もし続きを書いて欲しいと思った方がいましたら、画面下の「☆☆☆☆☆」から評価をよろしくお願いします。

もちろんブックマークも嬉しいです!


『悪役にされた天然系の令嬢は王都を追放された後も心優しい伯爵の息子達から愛されました』


というタイトルで連載小説を書き始めましたので、興味のある方は、そちらも読んでいただけると幸いです。

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