このあたりのどんぐりは生で食べられるしアク抜き不要なのは助かる
さて、ヤスで突いて仕留めたイワナを焼いて食べた後に雨が降ってきたので横になっていたらそのまま寝てしまったが翌日目が覚めたときには雨はすっかりやんでいた。
外に出しておいた水瓶には雨水がたっぷり溜まっていたので沢まで水を汲みに行く必要はないな。
むしろ雨で増水している沢に行くほうが今はよほど危険だろうし水を入れた瓶は意外と重いのでありがたい。
そして雨がやんだことでもあるし、今日も木の実を拾いに行くとしようか。
栗や胡桃以外に食べられてそれなりの期間貯められる木の実というとドングリがある。
北方では身近なドングリであるコナラ、ミズナラ、クヌギなどには渋み成分のタンニンを多く含んでいるのでアク抜きをしないと食べられない。
しかし、スダジイ、マテバシイ、ツブラシイなどの南方系のシイ属もナラと同じブナ科植物で縁戚関係にあるが、椎の実であれば栗のような甘みはないが苦味もなくそのまま生でも食べることすらできる。
ちなみに落葉樹のナラと違ってシイは常緑樹で椎の実は先が尖っていて根本が太い。
無論生では虫食いなどの可能性もあるので加熱はするつもりだが。
というわけでまた背負籠を背負って山の中に入リ、落ちているドングリをちょこちょこ拾い上げながら、木の根元などに落ちているあまり湿っていない薪なども拾い上げる。
基本的に木の実類は秋にしかとれないから今のうちにある程度の量は確保しておくべきだろうか。
とは言え一人で暮らし、最低限の行動しか必要ではない状況であれば、さほど大量に貯蔵する必要もないが雨の日はほとんど何もできないことは考慮しないといけないが。
結構な量が落ちているのでそれを拾って持って帰ってきた後でどんぐりを、水瓶の水に入れて沈んだどんぐりを拾い上げて、水に浮いたどんぐりは古くなっていたり虫に食われていたりして危険なので捨てる。
そして、拾ってきた薪を手斧でわって中の湿っていない所を露出させ、枯れて倒れた松の根や枝の付け根に溜まっている松脂を含んだ部分を小刀で削って着火剤代わりにして火をおこし、ドングリは石鎚で叩き割ってカラと薄皮をはがして、軽く茹でてから、炎で炙って口に入れる。
「うむ、なかなかだな」
その味は甘みの少ない栗と言ったところで栗もブナ科である事を考えると、むしろ当たり前ではあるかもしれない。
椎の実は栗や胡桃よりずっとたくさん落ちているが、古くなったものや虫食いも結構多いのでもう少し拾っておくべきか。
現状では食料を得るために必死になる必要は当面なさそうであるが。