マオたちが元気になったようでよかったぜ
さて、俺はマオとその子供二人と同居することになった。
しばらくは衰弱していてろくに動けなかったが食事をできるようになって多少元気は出てきたようだ。
「とりあえず衣食住の食と住は何とかなるから、早めに衣服を何とかするか。
特に子供たちは寒いとかわいそうだしな」
俺がそういうとマオは申し訳なさそうに言った。
「そのようにしていただけるとありがたいですが……」
俺は笑って言う。
「なに、襦褲は後々編んでいってくれればいいが、裘はそういうわけにはいかないだろ?」
「あ、はい。
そうですね」
襦褲は平民が着る麻のズボンと上着で裘はその上にはおる毛皮のコートみたいなものだ。
「じゃあ鹿でも狩ってくるとするよ、そうすれば肉も食えるしな。
もう動き回っても大丈夫そうなら薪拾いくらいはやってほしいができそうか?
俺がマオにそう聞くとコクリとうなずいた。
「はい、その程度なら大丈夫です。
任せてください」
「んじゃ頼むな」
地道に薪集めは時間がかかるから手分けしてできるとかなり助かる。
子供たちも元気になったなら体を動かせることで何かしていた方が暇もつぶせるだろう。
「よし、鹿を狩りに行くぞ」
”がう!”
狼の子供たちもすっかり大きくなって狩りも手馴れてきた。
そして狩りをすれば新鮮な内臓が食べられることもすっかり覚えたのか、最近は狩りに行くのを楽しみにしているようだ。
山の中に生えているトリカブトを探し塊根を取り出し矢へ塗布して狼たちに言う。
「いつものように俺の前に鹿を追い込んできてくれな」
「がう!」
狼はうなずく様に吠えると山の中に入っていった。
そして追い立てられた鹿が俺の方に走ってくるのを見ると俺は弓に矢をつがえてヒュウと其れを鹿めがけて放つとそれは背中に刺さった。
「きゅいー!」
悲鳴のような鳴き声を上げて鹿が崩れ落ち、動かなくなった。
いつものように手早く解体し内臓は狼たちに食べさせる。
「がうー」
新鮮な内臓を食べられて狼たちは満足げだ。
そして鹿を担いで俺は小屋に戻った。
「戻ったぞ……いないか」
マオと子供たちに姿が見えないがまだ薪を拾っているのか、それともここがいやになって逃げだしたのか。
まあ元気になったら逃げだすこともあるとは思っていたけどな。
赤身の肉をひもでつるして干して、鹿皮の鞣しが終わったころにマオたちが返ってきた。
「すみません、時間がかかってしまいました」
「いっぱいひろったよー」「ひろったー」
「ああ、いや大丈夫だ。ちょうどなめしの作業も終わったし鹿肉でも皆で食うか」
「はい、ありがとうございます」
火を起こしてシカ肉をあぶり焼きにして皆でたべる。
食べるという行為は前と変わらないのに他人が一緒にいるというだけでも気分が結構変わるのは不思議だよな。
「なめした鹿革の革は好きに使ってくれ。
裁縫の道具はこっちにあるからな」
針は骨角製のものだがさほど問題なく使うことはできる。
町まで行けば青銅の縫い針をかうこともできるが、そこまでしなくても大丈夫だろう。




