いずれは乳を飲めるように魚と交換で山羊を手に入れたよ
さて、子どもの猪と狼達は相変わらず俺の周りをうろちょろして、芋を掘り当てたり、俺が狩った鹿や雉の骨や内臓を食べたりしている。
現状ではそれほど問題はないが、できれば乳が飲めるか卵を生む家畜がほしいところでもある。
山の中で飼えそうなのは山羊か驢馬ぐらいではあるのだけど。
北の方の寒くて平地が多い場所では綿羊、つまり羊毛を利用するいわゆる羊もそれなりに飼われているがこのあたりは山が多いこともあって飼われているのはほとんど山羊だ。
投網でとった魚と引き換えに仔山羊とか驢馬を手に入れられないかな?
街の市場とかでは普通に銅銭が使われているが、山奥では物々交換も珍しくはない。
麓の湖で魚を取りそれを〆た後で、更に降りていって道のある場所まで降りていった。
それなりに人通りはあるはずだが、上手く通りがかってくれるかは不明だ。
そもそも一般の農民などは都市の城壁の外に出たりはしないからこういった道を通るのは役人か商人か道術の術者ぐらいではあるのだが。
市場での価格は
農耕や荷運び用の駄馬が1万~2万銭
軍馬なら1万~10万銭
軍馬でも名馬ならば20万銭以上
牛や驢馬は6千銭
猪や豚は1200銭
羊や山羊は400銭
犬や鶏なら200銭
前後で状況などによって値段は変わるが山羊ならさほど高くはない。
奶山羊と呼ばれる乳の出が良い山羊が手に入ればもっといいのだが。
猪たちは道端に生えた雑草の穂をもりもり食べ、狼の子どもたちはのんきにじゃれ合っている。
そしてしばらく待っていたら運良く山羊や鶏を積んだ檻車を引いた馬を連れている商人が、道を通りがかってくれた。
「おーい、そこの人。
可能なら上の湖で取れた魚と山羊を交換してくれないか」
「ほ?
こんな所に住んでおるのか?
では、その魚を見せてもらおうか」
「ああ、こんな感じだがどうだ?」
おれは網で取った3尺(90センチほど)の大きさのコクレンやハクレン、コイ、アオウオ、ソウギョなどを出してみせた。
「ほうほう、なかなか悪くないですな。
魚三匹と引き換えに仔山羊一頭でどうでしょう?」
「ああ、それなら構わない」
こうして魚6匹と引き換えに雄雌一頭ずつの山羊を俺は手に入れた。
「ありがとうな」
「いやいや、こちらこそ」
そう言って旅商人と別れ俺は猪・狼・山羊などに言う。
「じゃあ山へ帰るぞ」
こうして俺の山小屋へ仔山羊が加わったのである。
山羊は馬や羊や牛に比べて好き嫌いがかなり少なく、固い植物でもよく食べ、鹿同様に樹皮でも大丈夫だったりするので、猪や狼とも食べ物はかぶらないはずだ。
これでいずれは山羊の乳が飲めるようになるだろう。




