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小料理 タヌキ屋  作者: まんまるムーン
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3



「オーダーはいりまぁ~す! 筑前煮ワン~!」

今度は熟練ウェイター風な重低音でタヌキ女将は自分にオーダーを入れた。


「スィッ!」

そしてまた自分で自分に返事をした。

ものすごいドヤ顔で…


 小料理屋でこのオーダーの取り方不自然だろ! 


モヤモヤする私をよそに、タヌキ女将はニコニコ嬉しそうに筑前煮を皿に盛っている。


 さっきの歯を剥きだした威嚇は何だったんだ!


「こちら、筑前煮でございまーす!」

タヌキ女将の出してくれた筑前煮を一口食べてみた。


 うっまぁ~!

 こんな旨い筑前煮、食べたこと無い! 

 何なんだこの女将! 


あまりの旨さにいくつか他の物も注文してみた。

「えっと…じゃあ、このアグー豚の角煮と…ジーマーミ豆腐…ん…この店沖縄系の多いな…ま、いいや、それと…たい焼き…」

タヌキ女将がどういう反応するか見たくて、恐る恐るたい焼きも注文してみた。


シャーーーーーーーーーーーー!


案の定、女将は牙を剥きだして威嚇した。


「あ…じゃあ…たい焼き無しということで…、この本日の魚の塩こうじ焼きで…」


「スィ!」


 だから何でイタリア語なの?


タヌキ女将はご機嫌で手際よく料理をしていた。

「どうぞ。」

目の前に料理が運ばれた。


 うまぁ~

 心に染みわたる家庭的な味! 

 なんだかお母さんの手料理を思い出すなぁ~。 


 え? 

 何? 


涙が溢れてきた!


私は止まらなくなった涙を拭うため、ハンカチを出そうとバッグに手を伸ばした。

その時、タヌキ女将が無言でさっとハンカチを手渡してくれた。ガーゼ素材の柔らかそうな白いハンカチ。その女将の心配りにまた泣けてきた。


「ありがとうございます。」

私はハンカチを受け取って涙を拭った。


 何――――? 

 このハンカチ! 

 めっちゃ涙吸い込む! 

 しかも肌触り最高―――!


 何なのだろう…この料理といい、上質素材のハンカチといい…。この女将、タヌキのくせに、食と住にはものすごいこだわりを持っている! 

 

 まてよ…女将の着物…どこかで見た…、そうだ! 

 この間別れた元カレと沖縄旅行に行ったときに見た琉球紬だ! 

 

 シンプルだけど品がいい! 

 なんとお洒落なタヌキなんだ! 


 衣食住全てにこだわりがあるということなのね…タヌキ女将よ…




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