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天使管理官〜ロリ天使のお世話と、悪魔をぶちのめすのがおしごとです〜  作者: 奈良ひさぎ


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11/28

11:「分かった。むしろちょうどいいし、同じ天使管理官どうしの話をしよう」

「ヴォロンテ=バーチュース。序列は22位、あたしが昔からつるんでる……まあ、腐れ縁ってやつね」

「ヴォロンテ?」

「幼馴染ってほどではないけど、知り合い以上の存在よ。あ、ちなみに男ね」


 男の天使。あんまり実感わかないけど、それはたぶん絵画とかで見たことがないからだ。美術の教科書に載っている絵画の天使って、みんな女だった気がする。


「ロゼの友達なら、心配はありません。向こうもこちらが接触してくることを分かっていたでしょうし、やはり悪魔の動向をうかがうためにサークルに潜入していると見て、間違いなさそうです」

「協力はしてくれそう?」

「むしろ猫の手も借りたいって状態なんじゃない? ロンテが潜入捜査なんてらしくないことしてるし、慎重にならざるを得ない事情があるか、単純に手こずってるんだと思う」


 どうやらヴォロンテというその天使は大胆で強いらしい。あんな能力を使いこなすロゼが言うのだ。


「へえ……」

「”神”ではないとはいえ、22位は十分な強さです。特に彼の能力をもってすれば、条件が整う必要はあるものの、わたしも勝ち越せない可能性があります」

「そんなに?」


 リュールは3位。視覚的にはいまいち伝わりにくいが、数字が十分すごさを物語っている。そんなリュールが負けるかもしれないなんて。


「とにかく、協力できるのは間違いないわ。あの男もロンテの話を聞いてるはずだから、後で話ができるってことは、そういうことよ」

「なるほど」


 幸い4限の教室はすでに開いていて、何人かすでにいたので、私はその中に混じってスマホの相手をすることにした。それと同時にロゼとリュールは実体化を解いて、私にしか見えない状態になる。


「実体化は普段見えない相手にも姿を見せることになるので、エネルギーを結構使うんです。姿や格好も自然な感じにしないといけませんし」


 ロゼもリュールも、もとの童顔に小さな体、それからかわいらしい小さいサイズの服を着た姿になった。確かにこれだけいろいろ変えるとなると、なかなかの負担だろう。

 だらーん、と机に寝そべりながらスマホをいじっていると、ロゼがぺしぺし、と私の腕を叩いた。


「ん?」

「やることないなら、亜季のとこ行けばいいんじゃないの?」

「んー。それもいいんだけど、今から行くのはめんどくさい」

「……ま、さゆみがそう言うなら」


 その一言だけ言って、結局ロゼは4限が終わるまでずっと寝ていた。大真面目な顔で授業を聞きノートを取るリュールの隣で、私は眠たいしゃべり方だな、と心の中で文句を言いつつ話を聞いていた。



「……あー、よく寝た」

「まさか本当に全部寝るなんて。もったいない」

「眠たかったんだから仕方ないじゃない」


 何も授業を聞いていなかったロゼと、全部聞いてノートまで取り、それを嬉しそうに抱えるリュールの会話を聞きながら、私は待ち合わせ場所の講義室前に向かう。


「……あれ。ロンテがいる」


 眠いものは眠い、とリュールに言おうとしたロゼがふいに動きを止めた。ロゼの視線の方向を見ると、確かにすっかり誰もいなくなった講義室の入口に、そこそこの背丈の男性が立っていた。さっき会ったサークルの副会長さんではない。髪は真っ黒で、副会長さんからさらにチャラさを取っ払ったような人だった。


「あれが例の天使なの?」

「そうよ。雰囲気はものすごく真面目になってるけどね」


 ロゼが一目散にその天使の方へ走っていってしまった。


「はじめまして。名前はもう聞いていると思いますが一応。ヴォロンテ=バーチュース、ロンテとでもお呼びください」

「ずいぶん大人っぽい格好ね。管理官の影響?」

「ロゼこそ。なんだよそのちんちくりんな格好」

「ちっ……ちんちくりんは失礼ね! 文句ならこのさゆみに言いなさいよ!」


 出会って早々ギャーギャー叫ぶロゼをよそに、ロンテが私に話しかけてきた。


「……いいんですか? 天使にあんな言葉遣いをさせて」

「どういうこと?」

「一応人間界に降りてきた天使は、天使管理官より立場が下という扱いになるんです。あなたが構わないというのなら、いいんですが」

「いいよ、別に。もともと妹がほしい、っていう思いが影響して、ロゼもリュールもこの姿になったみたいだし。変に敬語なんか使われたら、妹感なくなるかなって」

「なるほど。それでロゼたちは、あんな姿になったんですね」


 ロンテはいったん私から離れて、今度はリュールの方を向いた。


「……で、ロゼのお()りにリュールがついていると」

「そう。よろしく、ロンテ」

「お……おもりってなによ! ってかロンテ! 話聞いてんの!?」

「はいはい、聞いてる聞いてる。そろそろオレの宿主さんも来るから、いったん落ち着いて」


 ロンテが言い終わる頃には、講義室からリュックを背負って副会長さんが出てきた。


「待たせてごめん。亜季ちゃんは?」

「たぶんまだ授業だと思います。そんなに遅れてこないとは思うんですが」

「分かった。むしろちょうどいいし、同じ天使管理官どうしの話をしよう」


 副会長さんが学生証を見せてきた。


飯山侑介(いいやま・ゆうすけ)です。同じ天使管理官どうし、いろいろあるだろうから、名前だけでもよろしく」

「はい……」

「君は?」


 自分の名前を名乗る。正直天使管理官なのは天使を連れているあたりから確定だし、気さくな人なのは間違いないが、チャラチャラしたサークルの副会長ということで、私はまだ警戒していた。


「早速だけど、上月さんたちに協力してほしい。これは天使管理官と天使一人ずつじゃ、とても対処しきれない問題なんだ」


 あれ?私のことは名前呼びしないんですか?まあいいか。


「はい。なんか、サークルの人たちが全員悪魔に取り憑かれてるって話は聞きました」

「そう。もともと僕らのサークルは、今言われてるような乱れたところじゃなかった。ほんの数ヶ月前からなんだ」

「ちょうど悪魔が増え始めた時期と一致するわね。それで? どうしてあんたは悪魔のお世話にならず、むしろ天使管理官になったわけ?」


 ロゼが会話に割り込んできた。今は天使管理官どうしの話し合いだから、というリュールの制止も振り切っていた。


「忘れたか、ロゼ。オレは先行部隊だったんだ。天界は悪魔増殖の(しら)せを受けてすぐに、何人か天使を人間界に派遣した。その一人がオレだったってわけさ」

「悪魔にやられるギリギリのところで、ロンテが駆けつけたってわけね」

「そう。だけど正直オレの力じゃ、奴らがこれ以上暴れないように押さえつけるので精一杯なんだ。しかももう限界に近くて、だんだんサークル外部への影響が出始めてる。その結果が、亜季さんへの勧誘だ」


 決して元からチャラチャラしたサークルだったわけではない。メンバーたちの心のどこかに潜んでいた、彼氏や彼女を作ってあれやこれやしてみたい、という願望が、悪魔によって表面化し、増強されてしまった。飯山さんの話を要約すると、だいたいそんな感じだった。


「オレの能力は他人の感情や思考に少し干渉して、行動を変えるように影響を与えるものだ。侑介と同じ大学にロゼに加えて、リュールの宿主も務める天使管理官がいることが分かって、ちょっと強引な手を使わせてもらった。申し訳ない」

「いいのよ。別にリュールもさゆみも、大して気にしてないわ」

「まあ気にしてないのは間違いないけど、そうやって言った記憶はないよ」


 またロゼが勝手なことを言ったので、私は釘を刺しておく。


「やっぱり、そうだったんだね……何となく、分かってはいたけど」

「分かってたんだ」

「ロゼほどではないですが、わたしもロンテとは一応、長い付き合いなので。ロンテの思い通りに自分が動かされてるな、っていうのがだいたい分かるんです」

「へえ……全然分かんなかった」

「普通は分からないので大丈夫です。これはロンテと長い間一緒にいないと分からない感覚ですから」


 リュールの言葉終わりを聞いて、再び飯山さんが私たちに向けて話す。


「これは天使管理官としての仕事でもあるし、亜季ちゃんを助けるための作戦でもあるんだ。ぜひ協力してほしい」

「分かりました。やりましょう」


「えっ! なになに、わたし抜きで何か決めた⁉︎」


 亜季がタッチの差で走ってきた。亜季の知らないところで、同盟は結成されたのだった。

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