第2転生! 転生するなら強くなりたい!
「さぁて、どうしたもんかなぁ。」
異世界に転生したのはいいものの、俺は何をすべきかさっっぱりわからなかった。こういう時アニメの主人公なら何をしていたか・・・。
ステータス確認か?
そう言って俺は視界の隅々を調べてみる。
「・・・・・・・・・何も無いな。」
ステータス確認どころか、何も無い。ほんとに何も無いのだ。もしやこの世界、俺が想像してた異世界とは違うのか・・・?
心の底で何かが崩れかける音がした。
──ドタンッ!
そんな事を考えていると突然、人が倒れたような音がしたのだ。周りが少しでも騒がしければ聞こえない程小さな音。だがそれはこの小鳥の声しか聞こえない今、とても大きく聞こえた。
急いで近づくと、そこには全身を覆う白いローブにいかにも魔法使いが使ってそうな杖を持った80歳くらいのお爺さんが倒れていた。
「お、おい!大丈夫かよ!」
慌てて抱き上げると、爺さんは俺が心配してたよりも元気だった。
「おおすまんな、若いの。ちと足を出し間違えてしもうての。」
爺さんはかっかっと笑いながら起き上がる。
・・・いや待って!?出し間違えたって何!?人ってそこまで忘れちゃうの!?
心の中で喋りすぎて言葉を発することを忘れていた俺を見て
「そこまでビックリせんでもええわい。そうじゃ、これも何かの縁。自己紹介をしよう!お主、名は?」
すっかり爺さんのペースに飲まれていた俺は慌てて我に返る。
「俺の名前は吹雲 真也。なんてこと無いただの高校生だ。」
転生してる時点でなんてことないわけないんだけど・・・それは今は置いておこう。
「ふむ、わしの名はイムホテプじゃ。今後ともよろしくぞ。」
ん?イムホテプって、どっかの国の神様じゃなかったっけ?
「イムホテプって俺の知ってる国の神様にいたな。同じ名前なんて爺さんすげーな。」
面白い偶然でつい言ってしまった。慌てて失礼だったかと思ったが。
「ん?なぁに、その神がワシのことじゃよ。」
爺さんは周りの静けさなどお構い無しに大きな声で笑いながらそう言う。てっきり爺さんなりのジョークなんだと思った俺は、爺さんと同じくらい笑いながら言った。
「話が上手いな爺さん。神様が実在するわけないだろう。」
もちろん俺はふざけてなどいない。事実を言ったまでだ。俺じゃなくとも誰だってそう答えるだろう。だが、その一言で爺さんの顔は先程の笑っていた顔は別人かと思うくらい真剣な眼差しで答えた。
「・・・お主、もしや転生者か?」
「・・・え・・・・・・。」
またもや俺は言葉に詰まった。この爺さん、今の会話だけで俺が転生者だということに気づいたのか?まさか本当にこの人は「神様」・・・なのか?
──その瞬間、体全身に不吉な風が吹く・・・気がしたのだが全然そんなことは無かった。理由は簡単。目の前のじじぃだ。
「お主ほんとに転生者なのか!おっほ!っしゃあ!おもろしくなってきたぜぇ!!がっはっは!」
・・・・・・思わずイラッとしてしまった。俺の緊張感を返せバカヤロウ。
「面白いのぉ、お主。そうじゃ、せっかくだから属性適性でもしてやろう。転生者なら、自分の属性なんぞ知らんじゃろ。どれ、胸を貸せ。」
「属性適性?」
ついに異世界っぽい言葉が出て思わず心が舞い上がりそうになった。
「・・・すぅー・・・」
これはっ!俺が求めていた・・・魔法を唱える時のお約束!!
「・・・すぅ・・・・・・・・・属性鑑定!!!」
「っておいじじぃ!!詠唱しろや!!!」
神様にじじぃとか言っちゃいけないんだろうけどそんなの今はどうだっていい。どうだっていいんだ。心の声と合わせたらもう2回目だけど。
「ふぉっふぉ、神クラスのわしらはこの程度詠唱なんぞ必要ないわ。・・・ふむ、どれどれ」
ったく、相変わらず空気を読まない神様だなぁ。
「・・・。」
「俺が何属性かわかったか?」
こんなの聞かないでいられるわけが無い。なんだかんだ俺の心は最高潮だ。
「・・・うむ。初めて見るからなんだかよく分からんのじゃが・・・何も出ないってことは無適性って事なのかの?」
「まじかよ・・・。」
さっきまでの高揚感はいつの間にか消え去っていた。まさか異世界にまで来て運の悪さが残っているとは・・・さっきまでいい事ばかりだったのに・・・。
「じゃが・・・どうもおかしい。普通、無適性なら「無」と出てくるはずなのじゃが・・・お主、以前死ぬ時は何が原因で死んだのじゃ?」
「死因?そんなの関係あるのか?」
落ち込んでいた俺は半分諦めかけながら聞いた。
「普通、転生者は以前の死因で属性が異なる。例えば、火事で亡くなったのなら火属性じゃ。溺れて亡くなったのなら水属性じゃ。逆に殺傷や自殺などの死因が無属性じゃ。」
そこで俺は気がついた。自分がヤバいって事に。
「俺は死んだ死因は色々だ。台風、津波、地震、落雷、噴火。ありえないかもしれないがこの自然災害が全部だ。」
「ま・・・まさか・・・!」
爺さん・・・改めイムホテプは焦る顔で・・・いきなり呪文詠唱を始めた。
「5つの精霊よ。汝、根元の力を解放し、我に従え。悪しき罪人に天罰をくだせ!」
・・・ちょちょちょちょイムホテプさん!?なんで急にそんなヤバそうな魔法詠唱始めてるんですか!?悪しき罪人って別に悪いことしてませんけど!?!?
そんな俺の無残な思いが目の前のヤバそうな神様に届くはずもなく・・・
「刻め!勇気の剣!」
その掛け声と同時に、5つの色をした剣が俺目がけて放たれる。
ははっ、詰んだわ。なんだこれ。転生して20分程度でまた死ぬのか俺は。どこまで運がないんだか・・・。
俺なりの命乞いをしてる間にも剣はますます近づいてきて、俺を切り刻む。
「せめてもっと女の子とイチャイチャしてればよかったぁ!」
どこかで言ったようなセリフがまた蘇る。短い人生だったなぁ。なんだかんだ、人生不運なことしか起きなかったなぁ。
──シャキンシャキン!
バナナの皮を踏んで転んだり
──シャキンシャキン!
歩いてたら寝ている犬の尻尾踏んで追いかけ回されたり
──シャキンシャキン!
誰が作ったかも知らない落とし穴に嵌ったり
──シャキンシャキン!
・・・いやこれ漫画じゃよくあるかもしれないけど現実でやる人間なんてそうそういないからね!?あぁ!信じてないでしょ!!って誰に話してんだか。
──シャキンシャ
「っていつまで切ってんの!?もうよくない!?流石に俺ももう死ん・・・」
そこまで言って俺はようやく気がついた。傷がどこにもない。それどころか、痛みが全くなかった。
「死ん・・・でないのか?」
「お主・・・まさかとは思ったが・・・。これを見てハッキリわかった。お主は無適性ではない。全ての属性を兼ね備えた、全属性じゃ。」
「全・・・属性・・・?」
死因を伝える直前、何となく気がついてはいたが、実際に攻撃された後だと確信が持てるな。
──って。
「おい!いきなりそんな危なっかしい攻撃してきて、もしダメージ入ったらどうするつもりだったんだよ!?」
「なぁに、お前は知らぬじゃろうが、ワシは神の中でも回復や医療に関してトップの神じゃ。死ぬ直前なら全回復させる事ができるから安心せい。」
なんとも他人事のような言い様だ。少しは考えて欲しいものだ。
「・・・お主なら・・・この世界を救ってくれるかも知れん・・・。」
重々しい表情で小さく唸ったその言葉を、俺は聞き逃さなかった。
「この世界を救うって・・・どういうことだ?」
イムホテプは、聞かれてしまったかと少し笑いながら俺に言った。
「お主にこの世界の事を全て話そう。」
俺は、イムホテプから全てを教えてもらった。
人間や天使、悪魔さえも全て神の支配下にあるだそう。その理由は、どっかの偉い神がこの世界全体に神に逆らえぬ呪いをかけ、この世界で生まれた瞬間、その呪いが魂に刻まれる。逆らおうとした瞬間、その魂は燃え尽きるのだと。
神が何故そんなことをしたかと言うと、ただの暇つぶしのためだと。だが神の中にもそれが悪いと思い人々に寄り添う者もいるらしい。イムホテプもその1人で、それが他の神に知れ渡り天界を追放されたのだと。
今までにも転生者はいたらしいが、ハイスペックの者はおらず、神の手先に次々殺されたらしい。
「なるほど・・・。それで俺にこの世界を救って欲しいって訳か・・・。」
俺は渋い顔でそう答える。
「老いぼれの一生の願いじゃ。お主が全ての希望なのじゃ。頼む。」
こんなでかい責任をやらないってのも自分でどうかとは思うんだけどね・・・。そもそもチート能力があろうとも神相手に通用するのかって話だよ。それも敵になる神も1人や2人じゃないんだ。そう考えるとどうも乗り気になれる話じゃない。・・・それにもう死にたくもない。
「まぁ別に今答えが欲しい訳でもないわい。人里にアテナと言う戦いの神がいる。まずはアテナにお主を紹介しようではないか。」
またもや聞いたことのある・・・というより、アテナなんて誰でも知っている程有名な神だ。
「もしかして、アテナも天界を追放された1人なのか?」
「うむ。彼女はほんとに生物を愛していたからの。」
アテナと言ったら、だいたい美人で優しそうなイメージがあるが、俺の中のアテナというイメージが壊されないで少しほっとした。
「アテナか・・・。わかった。とりあえずアテナがいる町まで案内してくれ。」
「ふぉっふぉ、ワシに任せい。」
そんなこんなで、俺とイムホテプは戦いの神 アテナに会いに行くため、「アールミオン」という街に出発するのであった。
こんにちは、「神が支配する異世界で、神を支配してやります!」第2話を読んで頂き有難うございます♪
前回とは打って違ってとても長文になりましたね(笑)
もし1話も見てくださっていたら読みづらくなってないかとても心配です・・・汗
とにかく、なんだかんだ2話も投稿できましたが1つ自分でダメ出しするなら・・・女の子がいないっ!!許せないっ!!
って事で、第3話では女の子がちょっと増えます(笑)やはりこういう小説だと女の子居ないとページを進める気にならなくなりますもんね(偏見)
それではまた次のお話でお会いしましょう♪