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「なんと!! そんなに大量のヒドロクラゲが来襲しているのか!!!」
Dr.ハマグリはいつもより貝の蓋を大きく開けて興奮気味に話した。
「そうなんだ。なんとかなるかな?」
博士は腕組みをして沈思黙考している。
「ねえ、聞いてる?」
「ふむ」
まだ腕組みの態勢から直らない。
本当に作戦を練っているのだろうか。僕はだんだんDr.ハマグリが頼りない存在に見えてきた。敵はもう目前に迫っているのに………。
でも、僕の記憶容量はたったの1メガ。たかが知れている。
そこにイソギンチャクたちからヒドロクラゲの大軍が警戒区域に侵入したとの電信が入った。依然としてDr.ハマグリは口を開かない。
進退谷まった僕は一人でヒドロクラゲの大軍に立ち向かうことにした。
ふわーん、ふわーん、ふわふわーん。
みるみるヒドロクラゲの群れが近づいてくる。といっても海底一面に広がっているだけで、それほど”脅威”ではないことに気が付いた。
そのまま前進すれば勝手に浜辺に上陸して息を引き取るだろう。
閃いた僕は回避行動をとった。
まずはDr.ハマグリを救出。
一時的に相模湾一帯を放棄して、黒潮に乗り日本海溝へと抜けるのだ。そして態勢を立て直し、様子を見る。
僕はイソギンチャクたちにえい航されて、Dr.ハマグリの救援に向かった。しかし、とっくにDr.ハマグリは戦線から離脱していた。さすが年の功。勘だけは鋭い。
僕らはそのまま日本海流をつかまえて飛び乗ると「ゆらゆらーん」と日本海溝へと向かった。途中でヒゲクジラに出会ったが、飲み込まれずに済んだ。おそらくイソギンチャクたちの毒が怖かったのだろう。
ひとまず海溝で息をひそめ、ヒドロクラゲ軍の全滅をのんびりと待つことにした。