表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
炭素繊維複合材KURAGE  作者: 深山鬱金
ミズクラゲくんとDr.ハマグリ
2/16

1

海中をたゆたっていると”Dr.ハマグリ”に出会った。

ここらでは物知りで通っている博士だ。道すがら挨拶あいさつをしていくことにした。

「おや、ミズクラゲくん、どこへ行くんだい?」

ハマグリは貝の蓋を上下させながら言った。話すたびに貝の中から空気が泡となって海面へと昇る。

「ミズクラゲちゃんを捜してるとこ」

「そうか。若いな。ところでクラゲのご先祖様はどこから来たか知っておるか?」

「ううん」

僕はただ横に首を振った。そもそも僕の頭脳は1メガもない。せいぜい覚えられるのはミズクラゲちゃんの顔と触手の場所ぐらいだ。

「宇宙だ」

「ウチュウって?」

「夜になると空にキラキラ光るのが見えるじゃろ?」

「うん」

「それが宇宙じゃ」

「でも、いっぱいあるよ」

「そうじゃ、そうじゃ。その中でもな、火星という星から来たという噂があるんじゃ」

「遠いの?」

「遠いな…」

「どれくらい?」

「行ったことないが…一年、いや五年くらいかかるだろうか。とにかくわしらが生きたままたどり着くのは不可能なほど莫大な時間がかかるんじゃ」

「そんなの役に立たないよ」

Dr.ハマグリは咳払いを一つした。

「それがそうでもないんじゃ」

「どうして?」

「お主ら、ミズクラゲは無性生殖で増えるじゃろ?」

「まあね。それもできるよ」

僕は胸を張って言った。

プラクトンの友達で有性生殖と無性生殖ができる種は少ないのだ。

「だから、何世代か後には子孫が火星につけるじゃろ」

「どうやって?」

炭素繊維複合材たんそせんいふくごうざいじゃ」

「タンソ……、何それ?」

「最近、ホモサピエンスが発明したものでな。とっても軽いのに頑丈なんじゃ」

「僕より軽い?」

「ああ、もちろん」

「じゃあ、そのタンソセンイとかいうのに乗ったら、宇宙に行けるね」

「そうじゃ、そうじゃ。でも一つ問題があるんじゃ」

「何?」

「水がいる。しかも海水の」

「それならココにいっぱいあるじゃない」

「いいや、その物体の中に海水をどう注入するかがミステリーなんじゃ」

「研究中ってことね」

「ふむ。しかし、さらに大きな課題がある」

「もしかして、飛ばす方法?」

「ご名答。ミズクラゲやわしらは海の生き物。人類のように火を使って打ち上げることができん。常に水中にいないと死んでしまうからな…」

「じゃあ、水の力を使ったら?」

「おおおおおおおおおおお! 水圧か!!!」

そう叫んだきりDr.ハマグリは岩場の研究室に閉じこもってしまった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ