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desire 1

重たいプロローグなんですけど、そこまで深い何かを書けるのかっていうプレッシャー...

主人公の紹介回です。


desire 1




めくるめく毎日。変わらない日常。何かを求めて、仕事をしたり、恋をしたり、仲間と騒いだり、そうして疲れれば眠る。そしてまた同じことを繰り返す。それが人の人としての在るべき姿であり、他の動物には真似出来ない唯一的な理。



欲求を満たし幸福を得る為に、大昔から人間が作り上げてきた自我。例外もあるが、他の動物のそれより強い意志や感情に突き動かされる。



俺もそんな人間の1人。名前は坂本 (タケル)

23歳 彼女なし 職業 ショップ店員

身長175cm 体重 59kg

趣味 特に無し。


どこにでもいる普通の男。めちゃくちゃモテるわけでもないけど、モテないわけでもない。見た目と趣味の所為で、よくバンドマンと思われがちだが、俺はあんな不特定多数の人間から当てられる、期待されるような視線は嫌いだし、自分の思いや考えを人に伝えることなんて出来ないし、ましてや楽器なんか弾けない。


ああいうのも結局は自分を見て欲しい。認めて欲しい。思いを共感してバカ騒ぎして、明日からも頑張ろうぜ!なんて青臭いことを言って、現実から目を背けさせるものでしかない。


でも、明日になれば、仕事行きたくない。学校行きたくない。昨日のライブで燃え尽きたからやる気が起きない。なら死ねばいいと、ひねくれた俺は思う。そもそもやる気が無くなるくらいなら行かなきゃいいし、やりたくなければやらなきゃいい。


何かを満たしたくても満たされない人もいるのに、どんな神経してんだよって、心の中で悪態をついてしまう。


俺は満たされない。満たされないままこの世界に囚われて、求めることも忘れて、そのまま朽ち果ててもいい。もう何も欲してはならないと、人間としての欲求など陳腐なものなんだと。


猛「あぁ。そろそろやめよう。」


黒い感情に飲まれないように自制する。時々何か変な病気なのではないかと、本当に自分を疑ってしまう。


俺は今ショップ店員として衣服を販売している。従業員は俺含めて7人程度、正社員は4人、あとはアルバイトの小さな店だが、人間関係は良くも悪くも深い関係にならず、生活には困らないし、それなりに充実している。


何故今の仕事に就いたのか、衣食住は欲求云々より生活するにあたって必要なものだから。


けど、住は不動産屋さんに務められるほど学識を持ってないし、何より面倒くさそう。


食は細かいことが多すぎて、一度やってみたが性にあわなかった。


服を売るだけなら、適当にお似合いですよ、なんて言っておけばフラフラ生きてる若いヤツらはその気になってお金を払うし、それなりに年齢を重ねた人も好みの物があれば、勝手に買っていく。楽でいい。


20~30代後半くらいの層の人が好みそうなファッションで、系統で言えば少し落ち着きのあるカジュアルな物がメインになっている。店内も白が基調の黒と青が差し色でシックな雰囲気を演出していて、服の系統と店内の雰囲気がしっかり噛み合っているので、俺もそれなりに気に入っている。


店長「あ、猛君。来週分の発注と在庫確認お願いしてもいいかな?」


猛「分かりました。ちょっとレジ忙しくなりそうですし、フォロー終わったらやっておきます。」


店長「助かるよ!嫌な顔しないで引き受けてくれるの猛君だけだからさー、頼りにしてるんだよね。」


猛「(それはアンタの頼み方に問題があるんだよ。)仕事ですからね。給料分の働きはしますよ。」


俺はにこやかな顔で店長に受け答えする。演技だとしても悪い顔をしないでいた方が楽だからだ。いざこざなんて面倒臭い。面倒事は極力避けていきたい。


一時のピークが過ぎて、アルバイトのスタッフが出勤してきたのを確認して、フロアを任せる。本当に人と接するのは嫌気がさしてくる。仕事をしてる上では避けられないが、バイトのスタッフも、まぁ金の為なら多少嫌なこともやるだろう。



夕方、人気のない倉庫で発注と在庫の確認をする。

店長は大体デスクワークで、何をしてるのか意味の無さそうな生産性をパソコンという無機質な物に費やしている。残りの店舗内の面倒事は俺の仕事。というかパソコンと向き合うくらいなら、他にやることやれよ。


つまらない仕事。つまらない人生。つまらない人間達。自分の人生。明日終わってもいいと思っている俺からしたら、何もかもがつまらない。そんなことを閉塞感のある倉庫でぼんやり考えていると、


???「つまらなそうな姿...いつまでそんなことをしているの?」


猛「...!?」


急に聞こえた耳馴染みのある声に驚き後ろを振り返る。1番聞きたくて、1番聞きたくない声。聞いてしまえば、俺は生きなければいけなくなる。かと言って聞かずにいると、いつ死んでもいいなどと虚無感にも囚われる。


気の所為。疲れてるんだ。拗れた妄想のようなものだろう。そういう痛いところがあるのは自覚している。もちろん誰もいるわけがない。いるはずがない。聞こえるわけがないんだ。なぜなら、その声の主は、彼女は、


もうこの世いないのだから。

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