つい、婚約破棄と叫んでしまう。~ヴァンクレア&オフィア+騎士団の皆様 第二弾~
ヴァンクレア&オフィア+騎士団の皆様、第二弾。
僕の婚約者は可愛い。とても可愛い。
僕の名前はヴァンクレア・ヴェア。
男爵家の長男で、現在は騎士団に所属している。
可愛くて仕方ない、僕の婚約者を追いかけて騎士になった。
遠く離れて暮らすなんて絶対に嫌だった。だから同じ職場にしたんだ。
愛しい婚約はオフィア・コドンという。
家族や親しい人だけ、フィアと呼ぶ。
僕も小さいは、フィアちゃんフィアちゃんと呼んでいた。
名前まで可愛いよね。
凄いでしょ、女の子なのに騎士の中でも一番の実力者と認められてるんだ。
立場は騎士団長や副団長のほうが上だけど、団長たち、
「オフィア?あー、ありゃ無理だ。あれを止めたきゃドラゴンあたりに相手させるしかねぇよ」
「サシで勝負したらどうなるか?俺はやんねぇぞ。馬鹿、あの速さを見ろ。
人間のスピードじゃねぇよ。どう育てたらあんな化け物育つんだ」
って大絶賛。フィア凄い!
実力を認められてるから、筆頭騎士の地位をもらって、いつも最前線に出るんだよ。
今も騎士団で稽古中なんだけど、本当に可愛くて強くて格好いい。
「だありゃああぁっ!!」
新人騎士がフィアの剣に弾かれて、砂煙をあげて転がっていった。
「なんだその動きは!敵が人間とは限らないっ!騎士の礼に囚われすぎるな!全方向に意識を巡らせろ!」
「...まあ確かに、今のオフィア嬢の動きは人間の範囲越えてたかなー。あれを耐えろってのはなかなか無茶だわ」
「俺、どう動いたのかわからんかった...」
「俺も...」
一緒にフィアの稽古を見学中の騎士達が言うけど、目が慣れればきっと皆にも追える。
「凄く速かったけど、真正面から飛び込んで下から一閃、あれならこちらも正面から受け止めれば初打は止められたかな。
避けるのは悪手だったかも。追いつかれる。まあうまく受けても避けたとしても、追撃はくると思うけど」
でも受け止めるのも辛いんだよなー。
フィア、全身の体重かけてくるから弾かれるんだよ。
「...お前も結構な規格外なんだよなぁ」
「オフィア嬢が相手じゃなきゃ、とっくに結婚出来てるんだがなぁ」
そう。僕とフィアは婚約しているが、フィアは自分より弱い相手と結婚したくないと言っている為、僕がフィアから一本とって彼女を守れるぐらい強いと証明しないと結婚出来ない。
「次はヴァン!」
「はい!」
フィアに呼ばれて彼女の前に立つ。
「フィア!一本取ったら、結婚して下さい!」
「本当に取れたらね!」
ああああ!可愛いいい!
勝ちたいいい!!
開始の合図と共にフィアが飛びかかってくる。
今度は上からか。
剣と剣を合わせる。受け止めるのではなく力を横に逃がしてフィアの体勢を崩そうとするが、その勢いを利用して空中で一回転して横腹を狙ってくる。
これは避けられない、剣のくる方向の逆に飛んで勢いを殺そうとするが、パワーを殺し切れず転がされる。
だが一回転したところで後ろにステップしながら立ち上がり、体勢を整える。
「まだまだ!」
「ふふふっ!」
フィアが本当に嬉しそうに笑う。
可愛い可愛い可愛い!!
「本気の殺し合いみたいな殺気放ちながらイチャイチャしてる」
「二人とも目がギラギラしてるのに楽しそう」
「ヴァンクレア!いけっ!早くオフィア嬢を寿退団させてくれ!
俺はもうこのオフィア嬢との一対一の訓練したくない!」
「オフィア嬢との対人戦は毎回死ぬ覚悟するよな」
「俺毎回走馬灯見える」
「あ...。ヴァンクレア吹っ飛んだ」
「てかアイツ生きてる?起きない」
「起きないね」
残念だが、今回もヴァンクレアの敗北で勝負は決まった。
担架で救護室へと運ばれるヴァンクレア。
「次!誰だ!」
「婚約者が運ばれても稽古続けるんだ」
「あ、次俺だ」
「生きて帰れよ。帰ったらあの子に告白するんだろう?」
「やめて、変なフラグ立てないで、死ぬやつそれ」
ヴァンクレアを叩きのめした後は、いつもより訓練が厳しくなると評判のオフィア嬢。
はたして騎士の彼はフラグを回収してしまうのだろうか。
オフィア嬢の良心に期待したい。
救護室で目覚めたヴァンクレアはうなだれていた。
「あ~...。今日も勝てなかった」
悔しいなぁ。
幼い頃に婚約して、お互い十八歳になった。
男はまだ結婚に年齢的な余裕があるけど、女の子はそろそろ適齢期だ。
なるべく、あまり待たせないで一本取りたい。そして改めて結婚の申し込みをしたい。でも正直...。
「勝てる気がしない...」
恋する騎士に春は来るのだろうか。
まだ彼の冬が終わる気配はない。
「フィア!もう!君とは婚約破棄だ!!」
あれからまた順調に負けを重ね、またヴァンクレアが爆発した。
「だが断る!!!」
今日のオフィアの声も凛々しく響いている。
「また始まった」
「アイツらなんでいつもギャラリー多いとこで始めるんだろな」
「しょうがないよ、様式美ってやつ?」
「「「「様式美」」」」
騎士達は納得した。
「僕ばっかりフィアが大好きで、ちっともフィアは僕を見てくれない!稽古だって、他のやつにもつけてるし。
僕と稽古する時間が減るじゃないか!」
「いや、仕事だろ。稽古つけるのは」
「ヴァンクレアってアレなの?Mなの?ボコボコにされたい人なの?」
「見てないなんて、そんな事ないよ。ヴァン。だって騎士の指導はわたしの仕事のうちなのよ?」
「仕事仕事って!僕と仕事どっちが大切なの!」
「おわー、男が言われて困るセリフランキング上位が来ましたなー」
「本当に言うやついるんだな。言ってるのが男で、言われてるの女の子だけど」
「俺ひらめいたんだけどさー、もうオフィア嬢がヴァンクレアを娶ればいいんじゃね?」
「「「それだ」」」
「でもそれだと、オフィア嬢、寿退団する?」
「「「「!!?」」」」
「しない...のか?」
「あの稽古なくならねぇのか。却下!」
フィアの事は大好きなんだけど、大好き過ぎて僕ばっかり結婚したくて仕方ないみたいで。
言っちゃダメだとわかっているのに、つい婚約破棄だ!って言ってしまう。
フィアはいつも婚約破棄を受け入れないから、少しは僕と結婚してもいいと思ってくれていると思う。
「わたしだって、...ヴァンが...えっと、その...。
好きよ。だから...」
早く、わたしに勝ってね。
顔を赤く染めて、控えめな声でたどたどしく、僕を好きだと言ってくれるフィア(超レア)
早く勝ってね=早く結婚しようね
~~~っ!!
僕の婚約者が可愛すぎて辛いっ!!
「うんっ!うんっ!勝つ!僕頑張るから!」
「じゃあ、今から...、稽古、する?」
「するっ!たくさんする!」
「いやー。愛の形って本当にひとそれぞれなんスねー」
「勝って、と思いながら、でも勝負で手は抜かない」
「騎士の鏡ですな」
「騎士とかの問題かなそれ」
「うーん。ヴァンクレアは、自分がオフィア嬢にちゃんと好かれてるのわかってないんじゃないかな?」
「えっ!さっき好きとか言われてたっスよ?」
「あんなにイチャイチャしてたし?
オフィア嬢、ヴァンクレア殿と話してる時だけ言葉づかい違うからね。
ちょっと女の子ぽさ出てるからね?普段ドス効いた怒鳴り声がデフォだからね?」
「なんつーか...、相手はオフィア嬢だからなー」
「本当それな。だいたいの事は、オフィア嬢だからなーで仕方ないかなーってなるよね」
「ヴァンクレアもヴァンクレアだしな」
「ああああ!本当マジさっさと結婚しねえかなアイツらああああ!
こんなん見せられる独身の俺に謝れよおおお!」
「お前はいい加減彼女みつけろよ」
「だな」
「!!? うう、ううう!」
「あ。先輩騎士さん泣きながら走っていった」
「お前ら、言ってやるなよ。可哀想だろ」
「だって、結構騎士ってモテるし。なんでアイツ彼女出来ないんだろ」
「意外と、オフィア嬢に惚れてたりな」
「ええええ!あの猛獣に!!?」
「だって、さっきオフィア嬢が顔赤くしてモジモジしてるのみて、アイツ赤くなってたぞ」
「マジか」
「ガチだ」
「でもさっきのオフィア嬢はちょっと可愛かったっスね。普通の女の子みたいでした」
「対ヴァンクレア限定だろありゃ」
「だな」
「不毛ですなぁ」
「本当ですなぁ」
演習場からはオフィア嬢とヴァンクレアの戦う音が響いている。
「っはぁ!今度、こそ!勝つ!!!」
「右が甘いっ!!」
「がっ!!」
もしかしたら、意外と二人の春はそこまで来ているのかも知れない。
会話が多くて読みにくさあるかも知れません。申し訳ないです。