ティーセットの異形と紅茶ゲーム2
「来い! ドクロ!」
拳を握りしめる高羽。高速回転するスロット。ゆっくりと、押し出されては戻るコイン。
一つ目、ドクロ 二つ目――――ドクロ。三つ目――――ドクロ!
「いよっしゃあ!」
デデーン! ざんねーん!
「なんだって!」
ウンともスンとも言わない機械。後ろから冷たい気配が浮遊して近づいてくる。
「はい一人目の脱落者ぁ。ほほいのほーい」
メルヘンなティーセットが恐ろしく映った。体が流体となり、重力に負けるように床に落ちていく。
「からのぉ、ほーい」
浮遊した皿のかけ声とともに、紅茶となった高羽は浮かび動かされる。その先には、ちょっと前まではなかった大きなティーカップ。液体の打ち付けられる音とともに、ティーカップに注がれる高羽。
「何があったの!」
入り口の方から由花の声が聞こえる。全員が、入るな! と叫ぶ。
「ちょっと待っててね! 助け呼んで来る!」
おそらく自分に言ったのだろうと高羽は思う。とりあえず、ここ近辺から去ってくれたことに高羽は安心した。
「はい二人目ぇ」
二人目のゲームオーバーが出たのだ。紅茶の大きな球体が、揺らめきながら高羽の入っているティーカップの上に来る。そして、大きな水音を立てて紅茶は注がれ、混ぜられる。
うう……混ぜられる、気持ち悪い――――
「連れてきたよ!」
由花の息を切らした声。
「だめだって言ったのに!」
人々の叫ぶ声が聞こえる。
建物の中に由花と、他に由花の連れてきた誰かが入ってきたのは高羽にも分かった。
「まあまあ、見てろって!」
聞いたことのない男の声に、高羽は粗暴な男を想像する。男がティーカップを覗く。高羽が想像した通りであったが、しゃべり方にしては年を取っている様に思う。
「こいつを入れれば……!」
男がドボドボと投入し初めたのは、大袋の砂糖。砂糖でドロドロになっていく紅茶。体が砂糖によって形作られていくような感覚。戻ってくる四肢の感覚。高羽ともう一人、弐番目に負けたであろう中年女性がティーカップの中に座っている。焦り出す異形の二体。
「あいつ、俺らより強い魔法が使えるんじゃないか? 逃げるぞ!」
「ほいさっさあ!」
◇
「良かったな」
高羽の肩を笑顔で叩く男は、葛谷という名前であった。黒っぽい上下に、じゃらじゃらとチェーンを付けている。
「ありがとう……あんた誰? 由花の何」
葛谷を睨み上げる高羽。
「おいおい嫉妬かあ? 友達だよ。」
「うん」
由花がうなずいたので、高羽は落ち着いた。
「こんな悪そうな友達いるんだね」
「見た目で決めちゃいけません」
「まっ、俺は盗みで生計立ててるけどな」
「ものすごい悪じゃんか!」
絶対に認めない! と怒る高羽の声が、ビルの狭間に響いた。
新キャラ登場!次回から葛谷にもガンガン活躍して貰います!