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ティーセットの異形と紅茶ゲーム

 由花がずっと手を引いてくれる。高羽はそのぬくもりをかみしめながら斜め後ろを歩く。

 進むにつれ、魔法のように建物が現れる。誰もが知ってるコンビニを、高羽は不思議な気持ちで見つめた。そのうち、ゲームセンターが通りの前に見えてくる。


「ゲーセンか」

「どうかな? よく行く?」


 由花は高羽を振り返り、小首をかしげる。肩丈の髪が艶やかに揺れた。


「まあ。時間つぶしていきますか」


 ゲーセンに入るときになって、由花が高羽を掴む腕が離れる。


「あれ? ハンカチ落としちゃったみたい」

「ポッケに入れてたのか。どうする、探す?」

「そこら辺だけ見て、無かったら諦める。高い物でもないし」


 ここでは紳士なところを見せたほうが良いよな。


「一緒に探すよ」

「ううん、大丈夫。建物の前だけ探す」

「そっか……」


 もう一押し声を掛けようかと高羽は思ったが、ゲームを始めていることにした。高羽はゲームが好きな方だ。

 少し薄汚いモルタルの壁。古い型のゲームたち。UFOキャッチャーの景品も見たことの無いものばかりで、やる気にはならない。次に目に入ったのはクレーンゲーム。


「1回50円……? 安いな」


 しかし中身は飴玉ばかり。うーん、なんか欲しくはないかな。


「なんだかなあ」


 しかし、結構人がいる。交流を深めているお年寄りたちもいるし、がち勢の中年方もいる。もちろんガラの悪そうな兄ちゃんたちも、たむろしていた。

 そのとき、突然の大きな音。がらがらっ! という音とともに振り返ると、入り口のシャッターが降りていた。


「おいおい、中に人いるぞ!」


 ガラの悪い兄ちゃんたちが数人、シャッターを上げるスイッチがあるはずだとしゃがみ込む。しかし、シャッターは上がらない。他にも数人の客たちが、店の裏手へ繋がるドアを開けようと試みるが、ウンともスンともいわないのだ。

 この時はまだ、高羽もなんかの手違いだろ、くらいにしか思っていなかった。その場に立ったまま、誰かが解決するのを待つ。店員は一人として見えないゲームセンターだが、バックヤードに一人くらいいるだろう。

 タイミング悪い時に入っちまったなあ。

 高羽はそう思ったが、その次に由花が心配になってきた。


「携番知らないし。どうすっかな」


 ポケットの携帯電話を掴み、ぼうっとする。そのとき、突然の甲高い声。


「はいはい、お集まりの皆さーん」


 随分高い所から聞こえる声に、違和感。


「うわっ」


 思わず悲鳴。そこかしこから悲鳴が上がる。

 そこにはティーカップと、それをのせる皿の二つが浮かんでいたのだ。かわいらしい目と口が付いている。可愛らしさと、化け物を見た恐ろしさがあまりにもアンバランス。高羽は心臓の音が速くなる。


「お前らにはこれからゲームをして貰う。コインを百円、十五枚分持つんだ。増やしていけば良いけれど、無くなったらお前らを……」


 ティーカップの作るタメに、場が静まる。


「無くなったら紅茶にしちゃうよ!」

「それじゃあ初め! ふんふふーん」


 宙に浮かぶ洒落たデザインの皿が、地獄へのスタートを出した。

 高羽はコインゲームを探す。


「こんななんだったか」


 すべてのコインゲームの台が、可愛らしいお菓子や洒落た蔓薔薇のデザインされた台になっているのだ。見たことのない台だ。

 人によっては、小さい子供用の台――じゃんけんをしたり、キャラクターを捕まえたりする台――を選んでいる者もいる。コインを一つずつ、大事に使う寸法だろう。


 俺は一気に勝つ!


 四人で囲める大きなコインの台。ガラスの向こうでスライドする板が、コインを押している。もうコインたちが大量に落ちてきそうだ。


 よし! これだろ。


 高羽は台に着く。まだ迷っている客もいて、高羽はそいつらを可哀想に思った。

 十五枚のコインを、一気につぎ込む。入れたコインがコインを押しだし……。


「嘘だろ!」


 コインはすべて、やっとのことで踏みとどまった。しかし、何枚か機械のジャックポットに入ったようで、スロットが始まる。


「いけ! いけ!」


 ラッキーセブンがそろえとは言わない。一番下の、イチゴの絵がそろってくれば。

 一個目、イチゴ。二個目、イチゴ。ラストの三個目が、長めに回っている。


「よっしゃ……嘘だろ!」


 イチゴで止まると思ったそれは、急に次のニンジンのイラストで止まった。


『ちゃららちゃらららん! チャンスターイム!』


 突然ウサギが跳びだしてきて、スロットをすべて回し始めた。


「よっしゃ! 来るぞ!」


 一個目、どくろ。二個目、どくろ。三個目……。


「来い、どくろ!」


 一筋の汗が額を伝う。これほどまで高羽がゲームに熱中するのは、最初で最後の事である。




「うーん、ハンカチないなあ」


命はかかってないからデスゲームという訳ではないし、紅茶ゲームかな。ということで。

今回も私が実際に見た夢を元にしていますが、これも! めっちゃ怖かったです!

次回、ドクロがそろうと何が起きるのか! 当ご期待!

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