第五話
病院へ行って診察を受けた結果、体に外傷はないということを言われた。そして何か精神的に大きなショックがあった可能性があるということ、そして自らを保護するために記憶を抑圧している可能性があるということを伝えられた。当分はいつも通りに生活して何かのきっかけで思い出すのを待つしかないという助言をもらった。
しかしこれらの助言はみじんも役に立ちはしない。そもそも私は記憶喪失ではないのだから。
とりあえず、このような診察結果を私は店に伝えた。するとさしあたっては改めて仕事を教えるので、また店に来てほしいという返信があった。
私はそれから今日の調査結果報告を書いた。これは毎日一つ、通達のためにやってきた猫に渡すためのものである。
『私は今日、記憶喪失ということで店にやってくることで仕事を知らない事実をうやむやにすることができた。そのさい、店の人間は私の頭を打った可能性のあることや、そのほかいろいろのことについて心配してくれた。これは人間に慈悲のあることを証明し、人間は他社を助ける性質があることを意味している。人間の中にもこうした種族がいることからあながち人間のすべてが残酷であるということではないのかもしれないと思われる。これからより調査を進めて、人間の中にさらに獰悪な種族がいないか、調べてみることとする』
翌日、私は通達文を受け取った。その文にはこうあった。
『人間に人間を助ける性質のあることはわかった。では次に人間が猫に対してどのような印象を持っているかを確認してもらいたい。御影の働く店に我々の一匹を来店させる。その際の店員や客の対応を観察し、報告せよ。また、もし来店した我々の同志が傷つく恐れのあるようなことがあるなら、身を挺して守るべし』
守るべし、とは言われなくてもわかっていることではあった。この店にやってくる役目というのは危険な行為であった。先日、猫にあのような虐待する人間がいると聞いた後に、猫の姿でその目の前に姿を現すとはさぞ勇気のいることであろう。私はこの勇敢な猫に手紙の前で敬意を表した。




