第三話
私は翌日から複数の猫とともに天童光輝の尾行を始めた。そして案外、すぐに機会は訪れた。
深夜のことである。天童光輝は図書店に行って、雑誌を買ってきた帰り路を歩いていた。その途中、天童光輝は私たちの見ている目の前で公衆トイレへと入っていったのである。それを見た私たちはトイレに殺到した。
天童光輝は立ちながら小用を足していた。日中もそうであったが、天童光輝が幸せそうにしている場合、私の脳裏にはあのおぼれ死んだ猫のことが浮かんだ。そしてこの一人と一匹を対比して、世の中の無情をまざまざと感じたのだった。
我々は輪になって天童光輝を囲んだ。天童光輝は我々がトイレに入ってきたときから私たちに注目していたが、ここに至って、とうとう困惑したようだった。私たちをきょときょとと見まわす様子が見受けられた。
「天童光輝。貴様は一匹の猫を残酷な方法で殺害した。よって我々猫は貴様を死刑に処することにした」
天童光輝はなおさら辺りを見回し始めた。誰か人間のいたずらとでも思ったのかもしれない。そうだとすれば結局、天童光輝は自分の犯した罪のために死んだということを知らないままであったのかもしれない。
我々はあらかじめ所定されていた処刑方法で天童光輝を殺害した。この殺害方法というのは、相手の体を損壊せず、かつ確実に殺すことのできる殺害方法であった。これは猫の間に伝わる、恐ろしい秘術の一つであった。我々は独特の鳴き声を天童光輝に向けて唱えた。それは次第に一つの韻律を作り上げ、それは天童光輝の魂を破壊した。
天童光輝の魂はこれによって、ケツの穴から下り、地獄へと落ちていった。
それから私は天童光輝の姿を注視した。そして天童光輝と全く同一の姿へと化けた。裸の私は天童光輝の服をはぎ取り、着用した。
「ではよろしく頼むぞ、文彦よ」
文彦とは私の名前である。人間の書く小説ばかり読むことからその名がつけられたものである。人間の書物ばかり見るこの性質が、私がこの職務に抜擢された理由の一つでもあった。
「はい」
私はそしてトイレを出て行った。天童光輝の死体のことは心配する必要がなかった。死体についてはほかの猫たちが処理してくれる手はずになっていた。




