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猫の戦争  作者: 富山晴京
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第一話

 ある時、猫の間で一つの動画のうわさが広まった。そう、先ほども言った猫の虐待動画である。

 私はその噂をさる友人から聞いた。私はその噂を聞いた時、あまりに衝撃的な話であるのと、あまりに噂の広まるのが早いような気のすることから、この時すでに悪い予感を感じていた。これは重大事になるやもしれんと思って、私はその動画に目を通すことにしたのである。

 我々猫にはパソコンがない。パソコンを買う金もない。ではどうやってネットを見るのかといえば、端的に言えば人間に化けるのである。

 昔の人間は知っていたようだが、猫は化ける。ただし尾が二つに分かれていなくても化ける。

 私がネットを見た時のやり方はこうだ。まず適当な成人男性に化ける。なにも成人男性でなくてもよいがとりあえず五本の指を使える姿に化ける。

 続いて通りすがりの人間の財布を拝借する。そうして手に入れた金でネットカフェに入る。これで私はネットを閲覧することができた。

 さて、私はその動画を見た。その動画の始まりには耳の後方に巻きあがった猫(人間界ではアメリカンカールと呼んでいるらしい)が首にリードをつながれて座っていた。その傍らには水の入った桶がある。

「えーでは、これから実験を始めたいと思います。猫は何分でおぼれ死ぬか。それを、今回の実験で調べたいと思います。今回実験に協力してくれるのは」

 男の声でそういったかと思うと、動画に入り込んできた手が猫を抱きかかえた。

「この猫です。名前はないです。なぜなら、今日十三万円だかそれぐらいで買ってきたばかりだからです。それにしても命って高いですね。この猫は果たして、十三万円分の働きをきちんとしてくれるでしょうか?」

 手が猫を置いた。

「それでは初めは十秒から」

 手が猫の首根っこをむんずとつかんだ。そして桶の中にその頭を突っ込んだ。

「いち、に、さん……」

 その調子で男は数を数えていく。

 その間猫は体をくねらせ、爪を立て、必死に逃げだそうともがいていた。その体の動きにはそれこそ死に物狂いという言葉が似合うくらいのものであった。

「じゅう」

 猫の顔が出された。

「では次に二十秒で行きたいと思います」

 私はその時、この画面の中に入り込んでこの男の暴挙を止めてやりたいくらいであった。しかしこの動画の中で起こったことは過去のものであり、すでに変えられないものであった。それがまた、私にとって著しい苦痛となった。

 結局、名前もない猫が死んだのは七十秒間水に沈められた時であった。

 男の声は実験を終えたのち、笑いを含んだ声でこういった。

「実験の考察。猫は七十でおぼれ死ぬことが分かった。あと、おぼれ死ぬときの様子はめっちゃ面白い。皆さん、動画を視聴してくださりありがとうございました。これからももっと面白い実験もやりますので、ぜひチャンネル登録お願いします」

 その言葉の後に動画は終わった。


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