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十四話 他人の足を引っ張るって虚しいけどすごく気分が晴れますの(ゲス顔)。




ことの始まりは、わたくしの怪我が治ったばかりのことでした。




ただ今わたくしは、おじさま、ユリアちゃん、セバスチャンと共に蔵書館におります。


あれから一週間。怪我はようやく完治いたしましたわ。

それくらいかかると思っておりましたが。 


だって、地面に激突したときに、バキバキッとか、ブチブチッなんていうヤバげな音が聞こえてきましたから。

一週間のあいだもいろいろやらかしましたし、むしろこれだけの短期間で治せたことは奇跡ですわ。さすが王宮治癒魔術師です。


まあ、本来ならばもう少しはやく治ったかもしれないのですが、少々の些事がございまして…………。

一週間前、わたくしとおじさまは、怪我のせいでテンションがおかしくて真面目ぶったことを口走ってしまった羞恥で悶えていたら、紅潮した顔色と洗い息で勘違いされ、その事件に爆笑したあとに息を整えているとまた勘違いされ、笑ったせいで怪我に響いた痛みを堪えていると勘違いされ…………以下エンドレス。


おじさまの不審さが噂に拍車をかけているのはわかりますが、さすがにこれはないと思いません?

治療が終わっても、まだ噂が駆け巡っておりますもの。



「ねえ? ユリアちゃん。いくらおじさまが怪しげで五歳の幼子を囲い込みそうな雰囲気でも、わたくしが子供らしからぬ小賢しさで常に嫣然と微笑んでいようとも、わたくしとおじさまに共通の秘密がありそうだったとしても、どうしてわたくしとおじさまは噂になっているのかしら。」


「まさにそれが理由だと思いますが。エレオノーラ様。そこまで理解されていて、どうしてほかの理由をお求めになるのですか?」


「言っておきますが、わたくしが言ったことではなくってよ? そこらを少し歩いただけで、これだけの噂が集まりましたの。」


思わずため息をついてしまいました。幼子を囲い込もうとするような貴族など一人や二人はいるものですし、小賢しい子供だっておりますわ。未来の叔父と姪が共通の秘密を持つなどままあることでしょう。嫣然と微笑んでいることに関しては、事実無根ですわ。ですが、そんな方々はここまで噂になったことなどありません。


「エレオノーラ様のおっしゃる “そこらを歩いた” ことについてはいろいろと申し上げたいですが、一言述べさせて貰うと、人徳では?」


「ある意味ではね……。」


その言葉に、わたくしはため息を付いてしまいました。だって……………



「おじさまではあるまいし、その “人徳” がわたくしにも当てはまるなんて、納得できませんわぁ!!」


そう。そうなのです。わたくしの評価が、おじさまのような怪しげな人物とほぼ同じなんて認められませんわ。だって、だって…………可愛い子(幼児)にモテなくなるではありませんか!

わたくしの孫ハーレムの野望が……!



「やあやあようこそ! 人物評価底辺の世界へ!」


「……おじさま。嬉しそうですわね。」


「ああ。とても嬉しい。私を差し置いて孫ハーレムを成し遂げてしまえば、ハンカチをギリギリしてエレオノーラ嬢の血を垂らして黒魔術で呪ってしまうぞ☆ いやあ、そんなことにならなくてよかったよかった! 一緒に傷を舐め合おうではないか!」


「くっ……おじさまの気持ちが少なからずわかってしまう自分が憎い……………!」


「ふははははは! 所詮は同じ穴のむじなよ!」


おじさまのドヤ顔に腹が立ちますわ。



こうなったら……!


「言っておきますけど! ユリアちゃんもセバスチャンも他人事みたいな顔しておりますが、あなたたちも同じような噂がそのうち出まわるようになりますからね? なんと言ってもわたくしとおじさまの従者ですから!」


「「!?」」


わたくしは、できるだけ多くの人を、わたくしとおじさまの境地に引きずり込むことにしたのです。






「という訳で、あなたの悪評を流そうと思いますの。陛下。」


と、わたくしの目の前にいらっしゃる陛下に向かって言いました。


だって、ね? 引きずり込むにしても、まったく人と関わりのないわたくしとおじさまに心当たりのある方なんて、ユリアちゃんとセバスチャンを除けば陛下くらいしかおりませんでしたの。


わたくしとおじさまが陛下の顔を思い浮かべたのは同時でした。

思いたったが吉日。流れるようなコンビネーションで、わたくしが手を伸ばすとおじさまはわたくしを抱え上げ、全力ダッシュで陛下が政務を行う執務室へ向かいました。ユリアちゃんとセバスチャンも、おじさまの駿足には追い付けなかったようですわ。


「……何がという訳なんだ?」


「かくかくしかじかですよ。兄上。」


「かくかくしかじかじゃわかんねーよ!」


「ああ、兄上。あまり叫ばれると血圧が上がってしまいますぞ。」


「ルードヴィヒ、心配してくれるのはありがたいけど、陛下まだそんな歳じゃないよ!?」


「まあまあ、陛下。落ち着いてくださいまし。いくらわたくしとおじさまでも、大事な政務のお仕事の邪魔はいたしませんわ。仕事場見学だとでも思って、気軽になさってください。」


「今まさに邪魔してるからね!?」


「安心なさってください、陛下。ちょっと侍女たちに声が届きそうな扉の側で、わたくしがおじさまと陛下に手込めにされている演技をするだけですので。」


「かけらも安心できる要素がないんですけど!?」


「なので兄上。部屋の隅をお借りいたしますぞ。」




「……………いや、さすがに国政を執り行っている場に関係者以外の方の入室を許す訳にはいかないのですが。」


「!?」

「!?」



誰ですの!?



新キャラ登場。こうして芋づる式にエレオノーラさんたちの被害者が増えていく……。

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