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第十一話 アイ・キャン・フライ!ですわ。




という訳で、現在王城のてっぺんの屋根の上におります。具体的にどこかというと、なんか国旗とかが立ってるような場所だとでも考えればいいでしょう。

風がすごいふいております。落ちそうですわ。おじさまなど、ただでさえ癖毛な髪を風で煽られて、軽くマリモみたいになっております。


そんな不安定な場所で仁王立ちしながら立っている、わたくしとおじさま。


セバスチャンとユリアちゃんも一緒に登らないか誘ったのですが、残念ながら断られてしまいましたわ。



結局あのあと、おじさまの持っていたクソつまらない本(目測400ページ~600ページ)でセバスチャンとユリアちゃんを昏倒させようとしたのですが、止めないからせめて付いて行かせてくれ、という必死の懇願により彼らは難を逃れました。懸命な判断ですわね。なにしろクソつまらない本(目測400ページ~600ページ)で人を殴ったことなどないので、多少の後遺症が残るのではないかと心配しておりましたの。

そのことを二人に伝えると、ユリアちゃんの無表情と、セバスチャンの鉄壁の笑顔が引きつっておりました。これはかなりの快挙ですわね。


ちなみに “たん” 呼びは、セバスチャンの無言の圧力によって諦めました。

最初はやめるつもりなどなかったのですが、イケメソ風腹黒紳士たるセバスチャンの、キャラ崩壊の危機すら物ともしない必死さを見ると、なんだか可哀想になってしまったんですの。



そんなこんなで、ユリアちゃんとセバスチャンは、下からはらはらした顔でこちらを見上げているのですが。

いえ、はらはらした顔は気のせいでしょう。髪が風で靡いてびしびしと顔に当たるので、前があまり見えませんの。きっとユリアちゃんは、期待に満ちた目でこちらを見ていることでしょう。

そんな思いでユリアちゃんに笑いかけると、首をぶんぶんとふられました。そんなに首をふると痛めますわよ。


きっと、ユリアちゃんはわたくしを応援してくれているのでしょう。ですが、心配でもあるようです。

ごめんなさいね、ユリアちゃん。わたくしは今日からはっちゃけると決めたのです。セバスチャンは、いくらイケオジなビジュアル系執事とはいえ可愛くもない男なので、どうでもいいですわ。



今の自分の行動を振り返って、あとから羞恥で悶えそうな気がしないでもないですが、些細なことですわね。

これの比にならないほどの黒歴史を、わたくしはすでに持っておりますし。暗黒の黒歴史を。

暗黒……黒だけに。ふふふっ。




まあ、とにかく、わたくしなりにいろいろ考えて決めたのですが、おじさま……この人は何も考えていなそうですわね。だって……………



「っはは! 見ろ! 人がゴミのようだ!」



……………ね? 明らかに何も考えていないでしょう?

わたくしも計画性のなさは人並み以上だと自負しているのですが、この人を見ると自信をなくしますわね。まだまだ精進しなければ。


ですが、そのセリフはやめてくださらないかしら。あなたが言うと洒落になりませんわよ。



「ノリと勢いだけでここまで辿り着きましたが、これからどうしましょうか。」


「さあな。そこに城があったから登った。それだけだ。そのあとのことなど考えてもいなかった。」


「馬鹿と煙はなんとやらとは、よく言ったものですわね。では、とりあえず………………





飛んでみましょうか。」




「なるほど!」


目から鱗という風情のおじさまに、ふっと笑ってみせました。


「この程度のことを思いつかないとは、おじさまもまだまだですわね。高いところに登ったら、飛ぶ。あたりまえのことです。」



一二の三で行きますわよ。目と目を合わせて、頷き合います。下を見ると、地上から三十メートルくらいありますわ。落ちたら確実に死にます。これは…………燃えますわね。



セバスチャンとユリアちゃんが何か叫んでいる気がしますが、聞こえなかったので、気にしないことにしましょう。

あ、セバスチャンがどこかへ走って行きました。主人の勇姿を見届けませんの? こんな薄弱な方だとは思いませんでしたわ。セバスチャン。


傷付いていないか、おじさまの方をこっそりと伺いましたが、何の心配もありませんでした。おじさまは、まさに慈父の凶相でセバスチャンを見送っておりました。ここで凶相になるのがおじさまクオリティ。


これでいいのか、というわたくしの疑問に気付いたのか、おじさまは、まるで心配するな、とでも言うように見事なナデポ(悪役系)をわたくしにすると、アンニュイに笑ってこう言いました。


「人は……誰しも、親元を離れて行くものさ…………。親じゃないけど。」


わたくしはおじさまに、パパのパンツと一緒に洗濯しないで! と娘に言われた父親の姿を幻視いたしました。

涙を禁じ得ません。



「こんなときこそ、飛んですべてを忘れましょう。断罪で処刑されるまでは、多分死なないと思いますし。行きましょう、おじさま。いいえ……おじいちゃん!!」


「ッ!!!!」


わたくしの “おじいちゃん攻撃” が直撃したおじさまは、数秒前は沈んでいたことですが嘘のように、不死鳥のように華麗な復活をなされました。


「さあ、飛ぼうか!」


心なしか、悪者オーラが薄れているような…………いえ、ないですわね。





そんな、いよいよ飛ぼうとした瞬間に、思わぬ邪魔が入ったのです。



正確には、


「行きますわよ! おじさま! せーのっ!」


「「いーち、にーの、s


「やめろおおおぉぉぁああ!」


ドゴォッ



陛下に王冠を当てられました。




陛下すごい筋力ですわね。二十メートルも離れていて、重力もあるでしょうに。まあ、魔術で筋力を強化したのでしょうけど、それにしてもハイスペックですわ。さすが王族。


ですが……。


「陛下! 王冠を投げてはいけませんわ! めっ!」


すると、魔術で陛下の声が届きました。


「めっ! じゃないよ! 何なんだよ!? 確かにお前らが変な行動するんじゃないかと思ったよ? 陛下わかってた!! だけどここまでとは思わなかったよ!!」


「兄上……。私は人類にとって大いなる挑戦をしていたのです。何故邪魔をするのですか…………!?」


「ルードヴィヒ! なんでちょっとこっちが悪い感じに言うの? そうだよ! 城から飛び降りるなんてすごい挑戦だろうな! だけど人はそれを自殺と言うんだよ!!」


「まあ、大丈夫ですわ。死にませんもの。」


「どこからくるのその自信!?」




「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、はぁー。わかった。OK落ち付こう。一回話し合おう。だから二人とも、そこから降りてきてくれないかなー? わかったらさっさとしろ!!」



動揺しすぎて陛下ガチギレ。

そしてちょいちょいオヤジギャグを挟んでくるエレオノーラさん。



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