ルオの気持ち
マスターから零の魔刻の事を言われ、それをシドに伝えるために私は自分の部屋に戻った。
「はあ……やっぱり本は好きになれないなぁ。難しい事ばっかり書いてあってなにが面白いのかわかんないよ。……そろそろ起きてるかな~」
と、独り言を言いながら自分の部屋の前にたどり着いた。……否、辿り着いてしまった…。
実は私、ルオ・ハクアはシドに多少ながら好意を抱いている。勿論、友達としてもだが…それよりも恋心が上回っている。だからさっきも治癒魔法を使うために手を握ったとき、物凄く緊張した。きっと顔も真っ赤だっただろう。
シドがギルドに入ったのはつい先日。一目惚れだった。見た目も格好いいし、性格もきっちりしてると思いきや案外可愛いところもあるし、もう、シドの全部が好き!
………なんて本人にいったら、シドはどんな顔をするだろう。ドン引きされると思ったら、自分の気持ちを伝えれない。どうしようもない自分がヘタレに思えてくる。
等々思いを馳せて意を決し、ドアをノックした。
「……し、シド~、話あるから入るよ~?」
「え!?ちょっ、まって!今、上着てないから!」
え!?服着てないの!?
「………OK!着たから入っていいよ!」
「お、お邪魔しまーす…」
「いやいや、自分の部屋でしょ。それと介抱してくれて、ありがとう」
と言って、キラッキラの笑顔でお礼をいってくれた。
くあぁぁぁぁっ!!笑顔かわいすぎいぃぃぃぃ!!!
普段のクールな表情とのギャップがすごい!
なんなの!?私を落としたいの!?いいよ!ドンとこい!
……なんて口で言えるわけもなく、私の心は混乱状態です…。
「あ、全然気にしないでいいよ!そもそも、まだシドの部屋……あっ!マスターから手紙預かってきてるよ!読んでおいた方がいいって。多分、部屋の事も書いてあるよ!部屋は私の隣だから」
「……何から何まで…本当にありがたいよ。将来はいいお嫁さんになるな!」
「お嫁さんかぁ……」
自然と結婚式の風景が思い浮かぶ。
大きな湖をバックに愛を誓い合う二人…そして誓いのキス………
「ふへへぇ………」
自然と声が漏れてしまう。表情もきっとニマニマしているだろう。きっとシドもドン引いている筈……
ああ、やってしまった……という背徳感が自身を襲う。
「……可愛い笑顔浮かべんな!そして浮かれんな!」
褒められつつも、軽くバカにされ、デコピンを食らう。それは意外にも痛く、
「痛い!?」
と、声が漏れてしまった。暫く鈍痛が額にはしる。
どうやらもう既に手紙は読んだらしく、半ば呆れ気味の顔で私を見ていた。
「はぁ……んで、話ってのは?」
「あ、その事だけど実はカクカクシカジカ……」
そして私は、マスターから告げられた内容(自分が理解している範囲)をシドに伝える役目を果たした。
「フムフム、なるほどな。俺の魔法ってそんなとんでもないもんだったのな。でもなんか、『選ばれた』って感じがして…俄然やる気がわいてくる。
ありがt……」
グギュルルルル………
「……腹、減ったな…ハハハ」
「あ!じゃあさ、これから出掛けない?ご飯食べに」
「え!?良いの?ん~、よし行こっか……と言いたいところだけど、せめて着替えさせて」
「ん。先に着替え終わったら、ギルドの入り口で待ってて」
「了解!」
そう言って彼は足早に部屋を出ていった。
何故だろう…元気な彼の姿を見ると、こっちまで元気になる。怪我だらけよりは全然いいことだし。
……シドは、いつになったら私の気持ちに気付くんだろう………。