魔法の使い方
もう少しで太陽が真上に昇る。
今はルオとギルド裏の広場で魔法の勉強をしている真っ最中だ。
「それじゃあ炎魔法の順は?」
「小さい方から、『ヒート』『ファイア』『プロミネンス』……?」
「ブッブー!!正解は、『ファイア』『プロミネンス』『インフェルノ』でしたー!」
……やはり勉強はいつの時代でも嫌いだ………
「『コルド』『アイス』……『エイジ』?」
「おお!正解!良くできました~」
そう言って、ルオは俺の頭をワシャワシャ撫でてくる。正解する度にこれだ。俺には母がいるが、生憎厳しくて、頭を撫でるどころか誉めてくれた経験すらない。
だからこうして年上の女性に撫でられると、恥ずかしい気持ちになってしまう。
「うぅ…ルオ、もうやめてよぉ……」
「あ、ごめんごめん。つい、弟を思い出しちゃって…」
「ルオにも弟がいるんだ」
俺がそう言うと、ルオは少し悲しそうな表情で、
「アタシにも、弟がいたんだ、五つ下の……シドみたいにかわいい奴でさ、勉強が苦手で、減らず口ばかり叩いて……もう死んじゃったけど…」
語っている彼女の顔を見るとうっすらと目に涙を溜めていた。
「あ…なんか、ごめん…」
「いや、良いんだよ……それよりさ!早速、実践してみようよ!」
「出来るかなぁ…失敗するかもしれないし……」
「だいじょーぶ!!火傷でもしたらアタシの水魔法で冷やしてあげるから!」
あとから聞いた話だが、ルオはギルドの中でも優秀な魔導師らしく、水魔法で右に出るものは居ないという。
「じゃ、やってみるよ」
そう言って俺は立ち上がり、詠唱を開始する。
『我が右手に熱き炎を宿したまえ』
「インフェルノ!!」
「ええっ!?初心者には厳しすぎる!!危ないよ!」
シドの危険を察知してルオも急遽、 詠唱をした。
『わ、我が左手に大いなる激流を━━━━っ!?』
ゴオオオォォアアアッ
「熱っ!!」
掌が燃える感覚に襲われる。こんな痛み、今まで感じたことがないっ!
「えええっ!?!?なんで出来ちゃうの!?」
俺がインフェルノを発動させた光景に驚きの声をあげるルオ。
自分でも驚いてるよ……。あと手がクソ熱いです。
自分の手を見てみると、所々火傷や、早くも水ぶくれが出来ていてヒリヒリする。皮膚が裂けているところもある。
「うわっグロいな~…めっちゃ痛え……」
なんて唸っていると、ルオが駆け寄ってきて火傷がひどい手を握り詠唱した。
『我が手に治癒の力を与えたまえ。そしてこの者の傷を癒したまえ』
「リペア」
ルオが唱え終わると、みるみるうちに火傷が治まり、水ぶくれが消えていった。
いやそれより・・・
(ルオの手めっちゃ柔らけえええええええ!!!)
ヤバイ!ヤバイって!!なんかもう温かくて、柔らかくて、なんかもう(2回目)ヤバイ!!
(あれ?なんか…急に、眠気と……疲労感…が………)
「え!?シド!?おきて!?シド!」
この日、魔力切れで軽く10時間は寝たという。