宴
俺は、マスターに自己紹介をしてくれと言われ、ギルドのメンバー全員を宴会場に集め、ステージの上にたたされた。
「では、自己紹介を」
うわぁ、緊張するな……学校以来かなこんな緊張感
「え、えっと、シドって言います。姓はユキシロ。歳は、18です。こ、これから宜しくお願いしましゅ」
あ、噛んだ。めっちゃ恥ずかしい!なんて思っていると、客席の方からは拍手と声援が飛んできた。
「おい、噛んだぞwクソダセエww」「めっちゃイケメンじゃん!」等々
噛んだこと弄った奴誰だよ!!
でも、人生初のイケメン発言が思ってたより嬉しくて、そんな事どうでもよくなった。
「頑張ったのぅ、シド!」とマスターは肩をポンと叩き励ましてくれた。本当に親しみやすい、祖父みたいな人だ。
そして次はマスターがステージに立ち、マイクを手に取り、
「さて、いきなりじゃがこれからシドの歓迎パーティーをしようじゃあないか!!」
『イェェェイ!!』
(みんな…俺のために…)そう思っているうちに、目が熱くなってきた。
俺は宴会場のテーブルに座り、ジュースを手に取り掲げ、マスターがステージからマイクなしで叫ぶ。
「それでは皆の者ぉ!!シドのギルド加入を祝して、かんぱあぁい!!!」
『かんぱあぁい!!!』
シドのためにギルド内ではあるが、盛大な宴が始まった。
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俺が、ジュースを飲んでいると横からマスターが歩み寄ってきた。
「どうじゃ?シド、楽しんでいるか?お前の為に開いた宴じゃ。もっと楽しまんかい!ヒック」
マスターの目はうつろで、顔を真っ赤にしている。もう酒が回ったのだろう。どんだけ呑んでるんだよこの人悪酔いにも程があんだろ。
「た、楽しんでますよ!ありがとうございます、わざわざ俺なんかのために……」
「ヒック、なぁに、儂が好きで始めたんじゃ。それに仲間が増えることがマスターである儂の何よりの喜びなんじゃよ」
(マスター・・・酔ってるのに良いこと言いやがるな)
「女の子が来るのもいいけどのぅ!」
「あ、そっすね…」
(これは、前言撤回かな……)
「マスター、子供に悪い影響与えないでください!」
と、紅色の髪の女性がマスターの頭をぺしんと叩いた。
「痛い!痛いぞ、クレア!」
「申し訳ありません(笑)」
マスター、っていうか組織の中で一番偉い人を平気で叩く人初めて見た。
「なにか悪いことわ吹き込まれてはいないか?少年。いや、今はシド君か」
「あ、昼間の・・・あの時は助けてくれて、ありがとうございました!」
「いや、いいんだよ。私たち騎士団の役目はギルド周辺の見回りとギルドの防衛だからな」
「へぇ、何か格好いいですね!何て言うか、守護神みたいですね!」
「し、守護神か・・・なんか、照れるなぁ」
クレアは頬を赤く染めた。そして時計を見て
「そろそろ騎士団の集会の時間だから、私はこれで失礼する。マスター!」
「は、はい!」
「シド君にお酒を飲ませたりしませんように!」
「は、はい……」
こんな縮こまった老人、初めて見た。
そう言ってクレアは会場を後にした。
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マスターもテーブルで寝てしまい、宴は終わりを迎えた。俺もそろそろ眠くなってきたなとウトウトしていると俺の前に、
「えっと、シド君?」
水色の髪の女性上は水色の薄手のパーカーを着て、下は白のミニスカートを穿いている。
顔立ちは整っており、スタイルも良いし正直可愛い。
って、僕は何を思ってるんだ!!
そんな葛藤が頭のなかで起きている。
「アタシはルオ・ハクア。歳は17。気軽にルオって呼んでね。ヨロシクねっ」
と言って、握手の手を出してきた。それに応えるべく、僕も手を差し出した。
「あ、えっと、宜しくお願いしますっ…!」
と、強く握手を交わした。
……が、中々放してくれない。男女とはいえ流石に18とじゃ力に差があるのか振りほどけない。
(身長は俺の方が高いのか…)
と思っていると、不意にルオの胸元に視線がいった。
(けっ…結構デカいな……)
ルオは尚も握られた手を上下にブンブン振っているせいで、谷間が見えているからどうしてもそこに目が行ってしまう。
「…あ、えっと、もうやめない?握手…」
「ん~?なんで~?」
などと言って、小悪魔的な笑みを浮かべている。
「も、もう良いじゃんか!」
「ちぇ~、もっと遊びたかったのにな~」
と言った直後、ルオは俺の耳元で呟いた。
「アタシの部屋で、もっとイイコト…する?」
「いやいいよ!」
俺は拒否し、テーブルに置いてあったジュースを一気に飲み干した。
「それじゃあお休……み…」
あれ?なんだこれ?視界が、歪んで…頭がボーッとして……
「あれ?…シド?シド!?」
シドはその場に倒れてしまった。
翌朝、このとき飲んだものが酒でなければ、あんな思いはしなかっただろうと、後々後悔するシドなのだった。